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ただ、好きで…。
記事No.111 - 投稿者 : K・D - 2011/04/10(日)16:32 - [編集]
俺は、学生のころから男子が好きだった。
もちろんそんなコト、誰にも秘密にしていたし、言うつもりもなかった。 ある日、夢中になっていたバスケ部の友達が家に来ることになった。とても嬉しくて、一生懸命に部屋をキレイにした。そういう人間と悟られないように、ありとあらゆる証拠を消した。 友達(以後、成樹)が来た。 家には二人だけしかいないせいか、心臓が高鳴る。でも、表向きではいつものように、明るくふるまい時折冗談も混じらせたり…。不意に成樹がパソコンで面白いゲームがあると言った。電源を入れ、ネットに接続した。検索欄をクリックした時、俺は重大なミスに気づいてしまった。検索履歴にははっきりと「ゲイ動画」と記されていた。 「しまった!」 俺は心でそう叫んだ。このままでは、嫌われるんじゃないか…。必死に言い訳をした。 「あっ、これ!この前来た奴とふざけて調べたやつやん。受けるやろ?」 そうやって、笑って流そうとした時だった。 「いいよ。無理せんで…」 もう、終わった。二人の交友関係も崩れてしまうんだ。俺は、悲しすぎて成樹の顔を見る事が出来なかった。 「俺、前からお前そういう感じじゃないかな?って、思っとったちゃん」 俺は驚いて訊き返した。 「それやったら、なんで俺となんかと遊ぼうとしたと?」 成樹は何も言わず、俺を抱きしめてくれた。二人の心臓の音が、互いに確認できる。俺は、他に何もいらなかった。嬉しかった。 しばらくして俺が「ありがとう」というと、成樹は「何が?」と笑って言ってくれた。 そうやって二人は楽しい時間を共に共有していった。 二十歳になった俺たちは、何の発展もなく生活していた。二人の間には、あの時のハグ以外、何もなかった。 「泊りにこん?」 成樹が言った。前に成樹を泊めたことがあるが、その時も話にふけるばかりで終わった。無論、断る理由もない。俺は、すんなりと了解した。 バイトが終わった夕方、バイト先まで迎えに来てくれた。俺は比較的、軽量型なので自転車の後ろに乗せられて、成樹の一人暮らしをしているマンションに向かった。 部屋に着くと、成樹は電気をつけた。机上には法学関係の資料がたくさんあり、キッチン・洗面所・リビング・その全てが、白と黒のシンプルのものだった。 夜はトーク番組を見たりして笑いながら過ごした。 風呂上がりの後、成樹はすでにベットにもぐっていた。俺も隣に敷いてくれた布団にもぐった。眠れるわけない。布団越しで、成樹をずっと眺めていた。 「ねぇ、起きとる?」 急に成樹が声をかけてきた。「うん」と返事をした。成樹は自分の掛け布団を半分まで捲ると、空いたスペースを左手で軽くたたいた。キョトンとしている俺に、成樹は半ば呆れたように言った 「こっちに、来ぃ」 俺は言われるがまま、隣にもぐった。 沈黙。 「手!」 成樹が言った。俺は手を布団の上に出した。 「そうじゃなくて…(汗」 成樹は、俺の手を握ると布団の中に戻し両手で握ってくれた。温かい成樹の手は、どこか震えていた。 「ちょっと後ろ向いて」 成樹が言った。俺は、何がしたいのか分からなかった。さっきから、成樹は何を求めているんだろう?布団の中でくるっとまわった。 成樹の顔が見えない。顔が近いから嫌だったのだろうか…。少しの不安を抱え、眠りにつこうとした。 「好きやけん」 成樹が言うと、俺を後ろから抱き締めた。体が硬直する。 「遊びでしようわけじゃないけん」 成樹は布団の中で、俺の服を脱がせた。俺が裸になるころは、成樹も脱ぎきっていた。裸のまま、成樹は俺に抱きついてくる。汗が滲みでる。 「ゴム、あるけん。いれて…」 その後は、早かった。 俺は必死で身体を動かしたし、成樹も必死で受け止めてくれた。 快感・性欲。そんなもの、心の中になかった。 ただ、成樹に喜んでほしい。どっちの唾液か分からないほどキスもした。 あれから5年。運命は残酷で、成樹は結婚した。ただ俺にも彼女ができたのは、ある意味いいことだった。たまに、成樹とは会っているし、今も好きなままだ。 だからこそ、あの日の夜のことは二人の胸にしまってある。 絶対に、忘れることはない。大切な思い出―。 COPYRIGHT © 2011-2024 K・D. ALL RIGHTS RESERVED.
作者 K・D さんのコメント 生きてて辛い時期もあったけれど…。だからこそ今、彼とも社会とも上手く接して行けてるんだなと思います。 |