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ノンケのガテン系


記事No.189  -  投稿者 : 一也  -  2012/11/24(土)13:59  -  [編集]

ある1月の夜、
仕事の帰りに
自宅の最寄り駅に着くと
エスカレーターの近くで酷く酔っぱらっている男性を見つけた。

フラフラになりながら
ついには改札のまえで倒れ
駅員に起こされても動じず。

起きあがったと思えば
堂々と立ちションまでする始末。

僕の自宅は駅前。
この酔い方なら
ノンケであっても持ち帰れる…

そんな考えが過ぎったが
時間は終電まで2時間程あり
また、ターミナル駅ということもあって
人目に付きすぎる。

一度自宅に帰り
シャワーを浴びた。

終電が過ぎたのを確認すると
再び駅に向かった。

すると先程の彼が
わずかに酔いの冷めた様子で
広場のベンチに座っていた。

終電も終わり人気も少ない。
チャンスだった。

僕は自販機で買った水を彼に渡す。
すると彼は
「さみーな。」と一言。
話し相手を待っていたような口調。
間近で見る彼はとても綺麗な容姿をしていた。
三代目JSBの今市隆二に似ていた。
彼も「兄ちゃん、きれーな顔してんだな」と言ってくれたのは嬉しかった。

行き場が無いのなら
うちで休まないかと声をかけた。

思いの外、話に乗った彼は
僕のマンションに着き
まずは簡単な自己紹介をし合った。

27歳。年上の嫁が居る。子どもは居ない。
ガテン系。
この日は後輩と飲んでいたらしい。
電車に乗り友人の元へ行こうとしたが力尽き
市内在住だが歩いて帰れる気力も残っていなかったとのこと。

しばらくすると
まだ酔いの冷めない彼が寝たいと言った。

僕のベッドを提供すると
突如洋服を脱ぎだした!

モデルのような綺麗な身体だった。

本人曰く就床時はパンツ一枚が基本らしい。

布団が一枚しかないので
僕も彼の隣に入り
ただ背中を見ていた。

ノンケを装った自分でも
こんな状況を我慢出来ず
まず彼の手を握った。

すると、意外に思ったが   
彼も握り返してきた。

ゆっくり彼の股間に手を伸ばし
パンツの中に手を入れた。

しばらくモノを握ると
彼は眠そうな声で「なんで触んの?」と一言。
数分経ってから切り出された。

思わず僕が謝ると
「あやまちゃったよっ」と突っ込まれ
だが抵抗する様子はなかった。

「兄ちゃん心も女なのか?」と尋ねられた。
このひとは本当にノンケなんだなと思わされた。

行為の最中
彼は自らキスをしてくれた。
だが僕のモノに触れることは拒んだ。

彼から眠ってしまい
射精することはなかった。
寝ぼけていただけかもしれないが
僕を強く抱きしめてくれた。

朝になり
起き上がった彼は
キッチンに立ち
裸のまま煙草を吸った。

このときの姿が忘れられない。

「男としたの初めてだよ」と言う彼に
「気持ち悪かった?」と聞くと
「同じ人間だろ?問題なくね?」と笑ってくれた。

連絡先の交換も許してくれた。
メールはほぼしないので電話で良いと。

「また会える?」との問いに
「会えんじゃね?」との返事。

着替え始めた彼に抱きつくと
「落ち着けっ!」と困ったように笑う。

別にもう会えないのはこのときから分かっていた。

マンションの外まで付き添うと
まだ足元が覚束無い彼は
僕の送りを断り
「俺送ってもらうのとか嫌いだから」と言うと
最後に僕の両手を握り帰って行った。


それから数週間して
彼に電話を掛けた。

仕事中だったようで
受話器ごしに工事音が響いていた。
「また会いたい」と
無理を分かって告げたが
「また…いいや、取り敢えず。」と男臭い割に優しい口調で言われる。
僕からすぐ電話を切ってしまった。

夏になって
酔った勢いで電話を掛けた。
別に会う約束をするのでなく
ただ、久しぶり。が言いたくて。

するととても低い声が聞こえた。

タイミングが悪かったのかを尋ねると
「別に大丈夫だけどさぁ、あんま電話とかして欲しく無いんだよね。」

自分の行動に今更
気づかされたようだった。

このときも僕から電話を切った。

次に電話を掛けたときは
出会いから一年程過ぎていたが
着信拒否をされていたようだった。

彼を忘れるのには時間が掛かり
いまでも“いつかどこかで、偶然に”なんて望んでいたりする。

彼と言う幻は
いまも僕の心の中で。











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