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電車でA


記事No.203  -  投稿者 : ゆういち  -  2013/05/06(月)15:16  -  [編集]

そいつは何も言わずに俺を見ていた。
俺は視線に耐えきれずに、窓の外に視線を外した。
電車の音よりも大きな音で心臓がバクバクと拍動する。

「何か付いてますよ」
イケメンは突然、そう言いながら自分が座っている横のモノを指差した。


「え・・・?」
俺の視線はそいつの指先を見る。
そこには俺が席を陣取った際に置いた、黒いキャリーケースがある。
そして、その黒い背景を存分に活用して、俺から飛び出した白い液体が付着していた。

不幸にも、さっき俺が噴出した精子は、大量でドロッドロの濃いものだった。
黒に際立たされた白。
俺の精子は、要らぬところで自己主張が激しかった。

「あ・・・、それ・・・」

その青年は俺の様子を観察していた。
俺はまともに顔を見ることができず、俯くばかりだった。

「これ、ネバネバしてますよ?」
俺が見上げると、先輩は俺の精子を指に絡めとり、人差し指と親指で弄んでいた。

多分、この時に気付くことはできたと思う。
こいつも俺と同類なんだと。
だって、赤の他人の精子を平気で触っているのだから。
まあ、この時の俺にはそんなことに頭が回るような余裕は無かったのだが。

青年は言った。
「俺、さっき、面白いモノ、見ちゃったんスよね」
声が低いトーンになっていた。
何か企んでいるヤツの声だ。

「・・・」
俺は押し黙るしかなかった。

すると青年は立ち上がり、俺に顔を近づけてきた。
俺は座席に背中をビッタリくっつけた状態になった。
そして、そいつは俺の耳元に囁いた。

「俺、
電車の中で、
シコシコして、
精子、
飛ばす変態、
初めて見た」

一語一語を区切り、はっきり耳元で囁かれ、暴かれる俺の痴態。

俺は真っ赤になり、窓の外を見るしかできなかった。
初めての露出オナを人に見られ、脅迫されるかもしれない。
ああ、俺の人生は終わるのか。

「なあ、変態。お前、見られるのが好きなんだろ?」
青年の手が、俺の顎を掴み、顔を上げさせた。

「誰かに見られたかったんだろ?」
そして無理矢理、俺の首を縦に振らせた。

「ああ、こんな変態、見たことねぇよ。マジやべぇ。」
青年は俺を軽く突き放すように自分の席に座った。

俺はガチガチに緊張して、微動だにできなかった。

「兄さん、歳、いくつ?」

「・・・27」

「マジ?三十路近いのに、マジありえねぇ。変態。露出狂。」

ヤツは嘲いながら、俺を言葉で捲し立てるように責め続けた。
侮蔑の言葉を矢継ぎ早に振り掛けられ、俺は足元から地面が崩れていくような感覚に陥った。
目眩がする。
屈辱と恥じらいから黙りこむしかなくなった俺に、質問が飛んできた。

「ねぇ、彼女とか居るの?」
一瞬、また暴言を投げられたのかと思った。

「居ない・・・です。」

「マジ?もしかして童貞?オナニー大好き童貞27歳?しかも露出好きです、みたいな?マジやべぇ。」

まさにその通りで、俺は童貞。
女なんか興味はない。オナニー三昧の日々。
露出は初めてだが、興奮したのは事実。
俺は真性の変態ということになる。

「・・・」
俺は返す言葉も無く、ただただ俯いていた。
俺がなす術もなくだまり込んでいると、青年は驚くべき提案をした。

「なあ、お前、もう一回オナニーしろよ。」


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