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車は急に止まれない


記事No.212  -  投稿者 : こう  -  2013/07/11(木)05:24  -  [編集]
小学生の頃親の不倫現場目撃した時は本気で死にたくなった。

ある日学校から帰ると玄関によく家に遊びに来てた兄ちゃんの靴が転がってた。

その兄ちゃんは気さくで優しくてよく一緒にキャッチボールやゲームをして遊んでくれた。
お洒落でかっこよくて俺はひそかに憧れの感情を抱いていた。

大好きな兄ちゃんと今日も遊べる!

嬉しくなって勢いよくリビングのドア開けた俺は凍り付いた。

母ちゃんに馬乗りになった兄ちゃんがワサワサと腰を振り動かしていたんだ。

服はそこら中に脱ぎ捨てられていて両者ともスッポンポン。

何かの冗談かと思って半笑いになったが
俺に気付いても兄ちゃんは無言で母ちゃんを腰で打ち鳴らし続ける。

初めて見る兄ちゃんの裸は筋肉質で男らしい。当たり前だけど大人の体だった。

そんな強そうな体で乱暴な心臓マッサージをするかのように母ちゃんを揺さぶり続けている。

硬直している俺を前にリビングの空間で母ちゃんと兄ちゃんだけ早送り再生しているようだった。

そこには俺の知っている優しい兄ちゃんの姿はなかった。何かに取り付かれているよう。

無言の圧力に耐え切れなくなり外に飛び出した俺は近所の公園に行き気持ちを整理する。
大好きな兄ちゃんに嫌われちゃったのかな?はたまた喧嘩中だったのだろうか?にしてもあんな酷い事…。

悲しくなる。

すっかり日が暮れてきたので恐る恐る家に戻ってみる。

ドアを開けると出迎えた兄ちゃんが先ず謝ってきた「いや〜さっきは悪かったな!コンタクト外してててさ連れかと思ったわ」

よく解らない説明だ。

あれだけの事をしといて謝り方が軽い気もしたが、服を着た笑顔の兄ちゃんはいつもの兄ちゃんだった。

緊張の糸が切れ泣きじゃくる俺。

その出来事以来兄ちゃんが家に来る日は兄ちゃんの変なスイッチが入らない事をただただ願った。

あんな場面二度と見たくないから。

今日も兄ちゃんが遊びに来た。

あれ?携帯で誰かと話している兄ちゃんのジーパンがやけに膨らんでいるぞ?
嫌な予感がした俺は友達の家に遊びに行ってくると伝えた。

「あれ俺と遊ばないの?もしもーし、やっぱり大丈夫そうだからお前も来いよ!待ってんぞ!」

電話の相手にそう伝えると兄ちゃんはご機嫌で携帯をパシッと閉じた。

横に居た母ちゃんの腰を触りニヤつく兄ちゃんが決定的だった。

兄ちゃんはあの時から戻ってなんかいない…。

玄関で俺を見送る兄ちゃんのジーパンは更にパンパンに膨らんでいる。

発射体制の準備万端のミサイルが出来上がっていた。

これさえ打ち放ってくれれば兄ちゃんはまたいつもの優しい姿に戻るんだ。

でも当時の俺には成す術がない。

兄ちゃんの気を済ませるには母ちゃんが必要。

汚いことをする時間と場所が必要。

微笑みながら手を振る兄ちゃんの乾いた眼差しは今でも忘れられない。

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