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秦汰編終「そして、愛が交わる場所へ」


記事No.125  -  投稿者 : Telecastic  -  2009/09/23(水)00:14  -  [編集]
 時刻は夕方にさしかかって、空に浮かぶ太陽が真っ赤に燃え盛り辺りを照らしていた。ぼんやりと暗くなっていく空が闇に支配される前に一際輝く瞬間。秦汰は胸の鼓動を抑えられない調子でそれを見ていた。
 こんなやり方は、あまり好むものじゃない。でも…。
 頭の中で何度も何度も自問自答を繰り返す。本当にこれでいいのだろうか?だが、答えはでない。当然だ、今まで何度もそういった問いを自分にしてきたが、答えが出たことは一度もない。人は所詮、一人では生きていけない。
 自分の信じる道を行くしかないのだ。秦汰は、それをゆっくりと自分に言い聞かせる。不思議と胸の中は揺らぐことがなかった。ズボンの右ポケットに入っている携帯が震えだす。秦汰は静かに深呼吸をして、携帯を開いた。

「えー、という訳で。まず、杉本校長からスピーチをしてもらいます!」
 竜二がいつかのようにフライドチキンをマイク代わりにして話す。武は苦笑して首を振った。
「おいおい、俺はそういうキャラじゃないんだけどな」
「いいじゃん!みんなでこうやってご飯食べるの、なんだか久しぶりだし」
 皆で食事会をしよう、と誘ったのは晴樹だった。ここ最近、ギクシャクしていた空気をなんとかしたいという皆の考えも手伝ってその計画はスムーズにすすんだ。そして、それに一番乗り気だったのが、今はしゃいでいる倫子だ。
「えーっと、さ。実はもう一人、誘ったんだよね」
 無理やり武にスピーチをさせようとする二人を止めて、晴樹が言う。秦汰は自分の体が強張るのを感じた。
「多分、もうすぐ来ると思うんだけど…あ、きた」
 丁度いいタイミングでインターホンが鳴り、晴樹は玄関から意外な人物を連れてくる。昨日、打ち合わせ通りに誘った女性だ。
「ゆ、由美香ちゃん!きてくれたんだ〜」
 竜二は少し強張った顔を見せながらも、気さくに話しかけた。由希子の尖った視線が痛い。
「あ、皆さん、お邪魔します〜。なんか、晴樹さんに誘われて来てみました!」
 由美香はそんな微妙な空気をまったく気にする事なく元気に挨拶をした。その後ろで、晴樹は秦汰に目配せする。秦汰は緊張であらぶる鼓動を抑えるために、軽く深呼吸をする。
「あ、あの。それでさ、ちょっと皆に報告したいことがあって…」
 全員が秦汰の方を見る。秦汰は思わず俯いてしまうが、隣に晴樹が立ち、秦汰の肩を強くつかんでくれたので、なんとか声は出せた。
「俺、晴樹と正式に付き合う事にしました」
 その場にいた全員が、各々の反応を見せた。竜二はちょっと複雑そうな表情で、でもできるだけ喜ぼうとしていた。由希子は特に興味なさそうに(見える)反応しない。武も同じく無反応だったが、少しだけ眉を潜めているように見えた。倫子は、穏やかに微笑んでいる。少しだけ、悲しそうにも見えた。そして由美香は…
「……え、二人って、そういう関係?だったんですか?ホモ……ってやつ?」
「ゆーみかちゃん。ホモじゃなくて、ゲイって言った方がいいんだってさ。まぁ、俺達は一応知ってたんだけど。つーか、そうなんだ。正式に付き合う事にしたんだな。おめでと!」
 竜二はこのピリピリした空気に耐え切れなくなったのか、わざと明るい調子で場の雰囲気を和らげようとする。だが、誰もそれに乗らなかった。
「うん。まぁ色々あって、皆にも迷惑かけたけど。これからは二人でがんばっていくから…よろしく」
 秦汰はそう言って頭を下げる。心臓の鼓動は早馬の様に激しかったが、晴樹を信じてこうした。だが。それは思わぬ事態を招いてしまった。
「ゆ、由美香ちゃん!?」
 おもむろにテーブルのグラスをつかんだ由美香は、中に入っていたジュースを思い切り秦汰にぶちまけた。場の空気が、一気に温度を下げたように感じた。
「ふざけないでよ。私を呼んだのは、これをあてつけたかったから?私と晴樹さんがデートしたからって、こんな馬鹿な事仕組んだってわけ。馬鹿にしないでよ!」
 由美香はそう叫んでグラスを投げつけた。それは放物線を描いて秦汰の顔面へと向かうが、晴樹が秦汰の体を引っ張ったおかげで後方の壁にぶつかり、割れたのみで済んだ。
「ゆ、由美香ちゃん、落ち着けって」
 竜二が慌てて由美香の肩を触る。倫子や武、由希子も止めようとするが由美香の暴言は止まることを知らなかった。
「ふざけないでよ!気持ち悪い!晴樹さんがあんたなんかと付き合う訳ないわよ!晴樹さん、あんたみたいなのに告白されて嫌がってたもん。当然よ、ホモなんかに求愛されたってうれしい訳ないわ。だから私がドタキャンさせてデートしたっていうのに、まだ気づかないの。あんたみたいなのは居るだけで迷惑なのよ。晴樹さんをあんたの妄想に付き合わせるのはやめてよ!」
 由美香はその姉譲りの尖った鋭い視線を秦汰の瞳に突き刺して、数々の暴言を繰り出した。秦汰はただそれをひたと受け止める。やはり、あれは彼女の作戦だったようだ。秦汰はこうやって人から攻撃を受けた時、怯んで何も言い返せない。それどころか、逃げてしまう事も多かった。だが今回は、言い返せはしないものの、彼女の視線を受け流すこともしなかった。ただ彼女の目を見て、暴言をすべて受け止めた。やがて晴樹が静かに秦汰の前に出て、由美香を諭す。
「…由美香ちゃん。確かに俺は、男同士で付き合うとかそういうの、考えた事もなかったよ。そりゃ、高校とか大学とかでそういう話をしなかった事はないけど、結局自分とは別世界っていうか、ほんとにあるのかどうかすらもわからなかったし。…でも、秦汰に告白されて、『気持ち悪い』って、あんまり感じなかったんだ。すごく、自然だったし。…うまくいえないけど、こういうのって、あんまりない出会いっていうか。秦汰は本当にすばらしい人だし、俺はこいつと一緒に生きていきたいって思う。だから、これ以上秦汰を傷つけないでほしい」
「………」
 思わぬ晴樹からの言葉に、さすがに絶句したようだった。晴樹のたくましい体は秦汰の視界を遮り由美香の顔はみえなかったが、少しだけ空気が和らいだように見えた。だが、由美香から発せられた言葉で和らいだ空気はすぐに消えてしまった。
「…なによ。どいつもこいつも、人を馬鹿にして。もしかして、全員でグルだったの?お姉ちゃんの差し金でしょ。私のこと馬鹿にしようとして、皆に言ったんでしょ!ふざけないでよ!」
 由美香が由希子に殴りかかろうとする。それを竜二が止めた。倫子と武も慌てて由希子を庇う。
「ちょ、ちょっと、由美香ちゃん、落ち着こうよ。誰もグルになんてなってないって。晴樹と秦汰もお互い色々悩んで、こうなっただけだからさ。落ち着こう?ね?」
 竜二は由美香の肩を優しくつかんで宥める。由美香はその手を振り払って、その鋭い視線を今度は竜二へと向けた。
「何よ。一度くらい私を抱いたからって、彼氏面しないでくれない?」
 その言葉は、十分冷ややかな空気を更に凍結させ、まるで氷点下のようにキリキリとした痛みを伴った風を吹かせるものにした。由希子の顔が蒼白になる。
「………え?どういう事…由美香…」
 由希子は静かに、竜二の方を見る。竜二はバツが悪そうに目を逸らした。その場にいる誰もが、その情報に驚愕し、困惑していた。由美香はしてやったり、といった表情で竜二へと言葉を投げかけた。
「あんた、私がちょっと誘惑したらすぐ犬みたいにかぶりついてきてさ。ほんと、気持ち悪かったわ。……お姉ちゃんの想い人がいないから暇つぶしに誘惑してみただけだったのに。」
「やめて!!!!!!!!!」
 由美香が言い終わる前に、由希子の悲痛な叫びがその場に響き渡った。由希子は頭を抱えて、わなわなと震えている。竜二は申し訳なさそうにうなだれながら、由希子の方へと静かに歩く。
「由希子ちゃん。ごめん、俺……その…」
 小刻みに震えて小さく呻いている由希子の肩をゆっくりと触る。その瞬間、由希子の手が竜二の頬を叩いた。相手への敵意をむき出しにした、鋭いビンタだった。
「触らないでよ!!ケダモノ!!!!」
 由希子はそう叫んで、二階へと走り去ってしまう。それを追って武がリビングを後にした。二階へとあがる直前に、ちらりと秦汰の方を見る。その表情は、沈痛なものだった。あまりの衝撃にしりもちをついて頬を押さえる竜二は、由希子からの嫌悪の言葉にショックをうけているのだろう、半ば放心状態になっている。由美香はそれに畳み掛けるように竜二に言葉を放つ。
「ふん。ほんと、頭おかしいわよね。普通、一緒に暮らしてる女の妹なんかと寝る?しかもお姉ちゃんから聞いたけど、あんたって彼女いるらしいじゃない。最低よね、ほんと。男って、どいつもこいつも下半身でしか物事を考えてないのよ。だから、私なんかよりそんな女々しいオカマ男を選んだりするのよ」
 由美香の目が、キッと秦汰の方へ向く。秦汰はそれに拮抗するほどの憎しみのこもった目で視線を返した。由美香が少し、怯む。
「…お前、いい加減にしろよ。そうやってなんでもかんでも他人の所為にして満足かよ」
「何よ…。事実、そうじゃない。それに、あんただって昔私とキスした事あるくせに。純粋ぶってるんじゃないわよ」
「事実?お前の目には、そんな歪んだ風にしか映らないのかよ。そりゃそうか。ずっと、柊の所為にしてきたもんな。『私が可愛がられないのはお姉ちゃんの所為だ』、とかいって。」
 竜二がピクリ、と我に返ったようにこちらを見る。
「そうやってずっと他人の所為にして生きてきたんだろ。最低だな。そんなんだから、晴樹にも選ばれなかったんじゃないの?妹って身分を利用してなんでもかんでも僻むなんて、ホモより最低だよ。ちょっとは自覚しろよ、この…」
 最後の暴言は、竜二の拳によって中断させられた。いきおい立ち上がり、秦汰の方へと走り出した竜二は、晴樹や倫子が制止する間もなく秦汰を思い切り殴り飛ばした。秦汰の体はそのあまりの威力に背後の壁に打ち付けられる。由美香の前に立ち、秦汰の方を向く竜二は今までに一度も見たことがない、憤怒の表情を浮かべていた。
「てめえ、ふざけてんじゃねーよ!兄弟もいない一人っ子が、なんでそんな分析できんだよ!くだらねー事ばっか言って僻んでんのはどこのどいつだよ!クソ野郎!」
 竜二はそう喚き散らしながら、ナイフの様に鋭い視線を秦汰に突き刺し、更に殴りかかろうとする。晴樹が竜二の体を後ろから羽交い絞めにしなければ、おそらくもう一発は殴られていただろう。
「やめろよ竜二!」
「うるせー、離せよ!ぶっ殺してやる!」
「いい加減にしろよ!秦汰はお前を庇って…」
「誰が庇ってくれなんて頼んだんだよ!ふざけんじゃねーよ!殺してやる!このクソホモ野郎!気色わりーんだよ!」
 竜二の背後で、晴樹の顔も同じ様に憤怒の色を浮かべた。竜二の体を由美香の方へとバランスを崩させ、思い切り殴る。
「お前今何ていった。クソホモ野郎?結局そうやって一時の感情で、俺や秦汰が苦しんで、悩んで決めた答えを偏見で汚すのかよ。最低だな、見損なったよ。」
「だったらなんだよ。俺のケツでも掘るのかよクズが。クソホモ野郎をクソホモ野郎って言って、何が悪いんだよ。兄弟もいねえくせに、『真っ当に生きてる』俺達のこと僻んで馬鹿にしてくるなんて、クソホモ野郎以外のなんだっつうんだよ。とっととくたばれ、絶滅しろ!」
「もうやめてよ!」
 倫子が涙声でそう叫び、崩れ落ちる。手で押さえても止まらない涙はぽろぽろと零れ、カーペットに染みを作った。その場にいる全員が倫子の号泣に戸惑い、憤怒に満ちた空気はやがて静まり返った。

 梅雨入りで冷やされた空気は、夏が始まる前の冬の最後の抵抗の様だ。テラスで殴られた頬を冷やしながらぼんやりと座る秦汰は、そんなことを考える。倫子の涙によって静まり返った空気はそのまま再燃することなく、竜二は自分の部屋へと荒々しく戻り、由美香も秦汰や、晴樹にさえ興味なさげに一瞥もせず帰っていった。
 晴樹はとりあえず秦汰の腫れた頬を冷やすために氷をビニール袋につめて渡し、テラスに出るように言う。その間も倫子は下を向き、子供のように泣きじゃくっていた。晴樹は窓から出る秦汰に「後で行くから」、と声をかけて倫子を部屋へ送っていった。
 これで本当によかったんだろうか。秦汰は少しばかり、この強引な手段を行った事を後悔していた。まさか、彼女が竜二と寝ているとは思わなかった。ただ「晴樹は俺のものだ」と主張するために、由希子や竜二を傷つけてしまったのだ。
 竜二…。ズキリ、と頬が痛む。なぜ、こんなにも人を傷つけてしまうのだろう。ただ、愛する人に愛されたいだけなのに…。でもこれが、「生きる」っていう事なんだ。
「秦汰」
 静かに、晴樹が声をかける。ゆっくりと秦汰の隣に座って、手にもっているフライドチキンと水が入ったコップを二つ、テーブルに置いた。
「腹、減っただろ?チンしたんだけど、ちょっと油っぽいかもしれない」
「ああ、ありがとう。これで太れる」
「ええ、太るつもりなのかよ」
「ええ?駄目?こんな非力でなよなよした体に少しでも肉付けようって思ったんだけど」
「うん、まぁ、それも悪くはないんだろうけど…でも」
 そこで晴樹が口を閉じる。あらぬ方向を見ながら、少し照れたようにして。
「俺は今のお前の体型がすきかなー。何か、守ってあげたくなる、みたいな?」
「成る程。庇護欲をそそるって訳ですか」
 秦汰は納得したようにうなずき、平常心を装うが、内心では非常に恥ずかしく、心臓からカーッと体温が上昇した。
「…大丈夫だったか?」
 晴樹は声のトーンを落として、秦汰の頬をさする。
「うん…。まぁ、理由もまだわかってないしさ。竜二が怒るとこなんて、はじめて見たから。なんか、触れられたくないような事を言っちゃったのかもね。」
「それでも、あんな発言は許せない」
「うん。そうだね。……うん」
 晴樹がすっ、と息を呑む。秦汰はなるべく声を出さずに涙を流した。晴樹は頬をさすっている少し強張らせたが、秦汰の涙を気にすることなく、またやさしく撫で始めた。
「ゆるせねーよなあ。俺だって秦汰だって、お互いに傷つけあってまで結論を出したのにさ。あんな風に罵倒されるなんて、心外だな」
 晴樹は静かに泣いている秦汰を気遣うように、竜二に対して憤怒の感情をぶつけた。秦汰は、大きく首を振る。
「違う。違うんだ。大丈夫なんだよ。ホモとか言われたって、殴られたのだって、全然平気なんだよ。中学の時なんてクラス中から無視されたし、水泳の時間になったら『俺達の着替え見んなよ』って教室追い出されたししてたしさ。こんなの、全然辛くないんだよ。晴樹とか、神田君…とかに、片思いしてたときとかの方が辛かったし。こんなのは、全然、耐えられるんだよ」
「……じゃあ」
「ただ」
 秦汰はあふれ出す涙を止める事なく、堰を切ったようにしゃべり続ける。熱くなった体は秦汰のすべてを開放した。そして、そこで秦汰はようやく、今までの自問の答えがわかった。
「ただ、晴樹がここにいるから。晴樹がここにこうして、隣に居てくれるから…」
 人は一人では生きられない事はない。でも、隣に誰かがいるだけで救われる時がある。胸がこんなにも熱くなる。「生きている」と、強く実感する。目的なんてないんだ。「生きる理由」なんてものもない。ただ強く、生きていく。それが人だ。秦汰はそんな事を、確信をもって感じた。
「晴樹……」
 晴樹の胸に頭をうずめる。そして背中に手を伸ばして、強く抱きつく。晴樹は左手で秦汰の頭をなでながら、右手できつく背中を抱きしめた。
「ありがとう」
 この考えに、証拠なんてない。ただ、感覚的にそう感じただけだ。でも、きっとこれが一番、納得できる答えだ。間違いない。だって、晴樹の胸はこんなにも熱いから…。
「ここにいてくれて、ありがとう」
 涼やかな風が足元を通って漆黒の空へと舞い上がる。どこかで威嚇する犬の鳴き声が響く。すぐ傍で、自分を抱きしめてくれている人が優しい吐息を髪にかける。
 皆、生きている。いままでも、これからも。時に争い、傷つけあい、それでもまた生きていく。そこから逃げてはいけない。孤独は何も生まないから。「生きる」事を放棄するのと同義だから。
 彼となら。彼となら、生きていける。これから先もずっと、きっと一緒にいれる。そりゃあこれからも同性愛という壁は消えないだろうし、問題は山積みになっていることだろう。でも大丈夫だ。秦汰はまた、根拠のない確信をもっていた。
 なぜなら、晴樹の胸がこんなに暖かいから。冷たい涙も、言葉にできない孤独も、終わらない悲しみも、漠然とした不安も、すべて溶かしてくれるから。秦汰は子供の様に泣きじゃくりながら、ただそれを、感じていた。

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作者  Telecastic  さんのコメント
言葉にならない夜は 貴方が上手に伝えて 絡み付いた 生温いだけの蔦を 幻想(まぼろし)だと伝えて 心を与えて 貴方の手作りでいい 泣く場所が在るのなら 星など見えなくていい
呼ぶ声はいつだって 悲しみに変わるだけ こんなにも醜い私を こんなにも証明するだけ でも必要として 貴方が触れない私なら 無いのと同じだから
曖昧なだけの日々も 何処まで私を孤独(ひとり)に 褪せる時は これ以上望むものなど 無い位に繋いで 想いを称えて 微かな振動でさえ 私には目の前で 溢れるものへと響く
奇跡など一瞬で この肌を見捨てるだけ こんなにも無力な私を こんなにも覚えて行くだけ でも必要として 貴方に触れない私なら 無いのと同じだから
数えきれない意味を遮っているけれど 美しいかどうかも分からない この場所で 今でも
呼ぶ声はいつだって 悲しみに変わるだけ こんなにも醜い私を こんなにも証明するだけ でも必要として 貴方が触れない私なら 無いのと同じだから
                    鬼束 ちひろ/流星群
コメントで仰っていたように人は傷つくことで人の痛みを知ることができます。
世の中に完全な悪人、完全な善人はいません。大事なのは、自分の短所、自分の中にある残虐な人格やモラルをなくした行動と向き合う事だと思います。秦汰の不器用で繊細な生き様を通してそんな事を伝えたかったのですが、心残りばかりが…。
次はまた、残りの五人の内誰かが主人公の編が始まります。またまた長ったらしく読みにくい小説になるでしょうが、お付き合いいただければと思うのでした。コメントしてくれた人、本当に有難う。telecastic

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