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記事No.50  -  投稿者 : 夏  -  2009/02/14(土)09:28  -  [編集]
――ッ
・・・?なんだ・・・?
――ぁぁ〜〜
誰かの声が・・・
――ら!
この声は・・・そうだ。
――ぃらぁ
愛するアノ人の・・・
――あきらーー
俺の大好きなアノ人の声だ
起きないと。目覚めないと。

「・・・ん、ん」
ゆっくりと目を開けると、そこには予想通りの顔があった。
「彰ぁあ〜?」
つまらなそうに眉尻をたれ下げる男の顔。
「あ、起きた?!」
男は一瞬にしてパッと笑顔になる。白い歯が特徴的だ。
「・・・俊弥」
男に視線を向けられた少年が、男の名をつぶやく。
「おーい、彰ぁ。なんで寝てンだよ?」
「え?・・・あー、あーぁ」

そして少年は、自分が眠りにつくまでの経緯を思い出すのである。
高校2年生の少年、逢坂彰は、1ヶ月前に付き合い始めた前園俊弥の家を訪問した。
俊弥は27歳、彰は17歳という、年の差10歳のアンバランスカップルだったが、初めての彼氏を持った彰は、それなりに幸せをかみ締めていた。
そして付き合い始めて1ヶ月。
俊弥の家に招待された彰は、昼ごはんを2人で食べて、食器を洗う俊弥の後姿をボーッと眺める。
逞しい腕・・・長い足・・・不器用そうに動く指・・・時々音が外れる鼻歌・・・
そんな10歳違いの自慢の彼氏に改めて惚れていたのだが・・・
彰は無意識のうちに俊弥のベッドに横たわり、大人の男の匂いに包まれながら眠りについていたのだった。

「・・・俊弥がカッコよすぎてー・・・」
「意味分かんねぇよ」
彰はゆっくりと体を起こした。
そして俊弥の生活している部屋を見渡す。
アパートの一室であるこの部屋は、少しだけ殺風景だ。
部屋の中にある生活用品は2人用程のテーブル、ベッド、テレビ、タンス、本棚など・・・。
必要最低限の家具しか置いていないようだ。
タンスの中からベロリ、と服が垂れていることから、彰が来る前に急いで片付けたのだろう。
「・・・ぁ」
彰は、ふと本棚に目を留める。
『怪奇現象FILEシリーズ』、『世界の妖怪ミステリーシリーズ』・・・そんな類の本が何冊も並べられている。少しだけ埃かぶっているので、しばらく触れていないものと見える。
意外な趣味を知れたことに、少しだけニヤリとしてしまった。
「・・・何ニヤけてんだよ」
俊弥はそんな彰の表情に気付き、チラリと彰の視線の先に目を移す。
「ん?」
「俊弥、そーゆーのスキなの?・・・怪奇現象系のヤツとか」
「・・・ッん・・・え?あ、ああ・・・まぁな」
少しだけ歯切れの悪い返事が返ってくる。
「?」
その真相を確かめようと言葉を発そうとしたのだが・・・俊弥の声によってそれは阻止されてしまった。
「・・・なんか怖い話してやろうか?」
「お断りします!!」

意地悪そうに笑う俊弥の目に、少しだけ寂しそうな色が見えた気がした。

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