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水色の太陽 第1章『暗黒に射す採光』 三
記事No.62 - 投稿者 : one - 2009/04/12(日)20:48 - [編集]
休憩時間に入り、ほてったタータンに座り込んでで夕はぼ〜っと空を見つめていた。正体の分からないもやもやが、夕の心にベールをかける。すでに半分飲んでしまったポカリを、また大きく口に含む。 その時だった。 「『競技場のプリンス』。」 あまり反応したくない呼び名で、背後から聞き慣れない声がそう言った。 あいつだった。いつの間にかすごい至近距離まで近づかれていたようで、背中に触れるかというくらいの距離に奴も座り込んでいた。目が合うと、奴は子供みたいに笑った。 夕は鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな顔で数秒間黙ってしまったが、とりあえずさっき口に含んだポカリを飲み下して、やっとの事で「…え、何…?」とだけ声を発した。続けて「それからその呼び方やめて」とも。 「新藤先輩!本物っすよね〜!俺一年の頃から先輩のファンなんっすよ!つか、やっぱり近くで見るとますますかっくいーっすねー!」 ホントに鼻先10p。近くってどんだけ近くだよなんて思いながら、夕はとりあえず呆気に取られるしかなかった。 奴は朝日 武人(たけと)と言った。なんでも夕の一つ後輩で、去年から夕のファンだと言うのは本当らしい、夕の去年の記録まで大体覚えている。 「様はストーカーだろ?」 というとそれは違うらしい。れっきとしたファンだと言う。 「先輩って走るの速くてかっくいいだけじゃなく、リーダーシップもあるんすね!いや〜、俺感心しちゃったな〜。ちょっと分けて下さいよ!」 「何をだよ」と言葉で小さなツッコミを入れて、夕は立ち上がった。 「あ、何処行くんすか?」釣られて武人も立ち上がる。 「そろそろ休憩終わりだから、先生にメニュー聞きに行くんだよ。」 そう言いながら、夕は思った。「こいつ、背高いな…」と。 171pの夕はあまり大きいとは言えないが、武人は夕より頭半分大きかった。体型はいかにもスポーツマンといった感じで無駄な脂肪もなく、細いのに手足にはしっかりした筋肉が付いている。目鼻立ちははっきりしていて、正直夕の目にも格好よく映った。短い黒髪をワックスでつんつんに立ち上げている。 スポーツマンにしては長髪を携える夕とは、なんとなくタイプに差があった。 「分けて欲しいのは俺だっつーの。その身長くれよ!」 と言って小さく蹴りを入れる。武人は「へへっ」と小さく笑った。 久しぶりの感覚だった。「楽しい」という感覚。まるで今までモノクロにしか見えなかったものが、鮮やかに色付いて見えるように、夕の心は暖かかった。 COPYRIGHT © 2009-2024 one. ALL RIGHTS RESERVED.
作者 one さんのコメント パソコンで打ちたいっす…。 |