新規投稿 一覧表示 評価順表示 過去ログ

昼下がりの訪問者


記事No.167  -  投稿者 : アロエ  -  2011/05/31(火)20:42  -  [編集]

 リビングへと招き上げたスーツ姿の青年は、私の傍らですっかり緊張しきった様子でソファーに座っていた。これから始まるであろう事は、やはり相当なプレッシャーと不安を抱かせているらしい。訪問時の爽やかで溌剌とした好青年といった印象の面影はもはやなく、すっかり蒼白となった顔を俯け、萎縮しきって黙り込んでいる。
 私はそんな傍らの青年へと左腕を伸ばし、彼の身体を優しく抱き寄せた。
 一瞬、青年の身体がビクッと震える。私の腕の中で、青年はいっそうガチガチに固まってしまう。しかしそれでもなお、私の行為に青年が抗ってくる気配はなかった。
「ほら、もっとリラックスしなさい」
 私はそう、青年の耳元で静かに囁く。
 すると青年は、そんな私にぎこちなく頷いた。
「……はい」
 必死に引き絞って発したのであろう上擦ったか細い声。
 そんな青年の従順な態度が、より大いに私を満足させるのだった。青年の涼やかで端正なルックスだけではなく、その強い覚悟と健気さにも私は魅了されていく。
 本来、彼がこんな私の相手をする義務などどこにもないはずであった。最新の浄水器の営業と販売のために自宅を訪れた青年。そんな彼に対し、契約と引き換えに私が課した理不尽極まりない条件。私としても、半ば戯言のつもりであった。
「本当にいいんだね?」
「これで……契約のために……お客様が満足をしてくださるなら……」
 おそらく今すぐにでも逃げ出してしまいたいであろう衝動を懸命に押し殺し、私へと答えている様子であった。
 あどけなさを残す愛らしい風貌もあり、顔を赤らめて唇を小刻みに震わせる青年の様子は、まさに初心な生娘を私が非道なる手段で手篭めにしているかの様な感覚すら覚える。
「それじゃあ、しばらく私に身を委ねてもらうよ?」
 そんな私の言葉に青年の表情はいよいよ強張り、怯えを濃厚にさせていく。それでも彼は、私に対して無言で頷いてきた。
 私はそのまま、抱き寄せた青年の首元へと顔を埋めていく。
 甘いコロンの香りと混じって、汗に蒸れた男臭さが肌から漂う。おそらく私の家に来るまで、営業マンとしてかなり歩き回っていたのであろう。しかしそれ故に、この青年の活き活きとした若さを私は五感で感じ取るのであった。
「っ……!」
 私が愛撫を開始すると、いよいよ青年の身体が過剰なまでに力んでいくのが分かった。
 それでも私は素知らぬ風を装い、この青年の身体をワイシャツやズボンの上からではあるが思う存分に弄り、そして愛撫を繰り広げていく。
「んっ……あぁ……」
 身悶える様な低い声が、青年から洩れてくる。おそらく私からのおぞましい行為に必死で耐え続けている事であろう。
 しばしそのまま、会社の営業のため哀れな生贄と化した青年へ思う存分に私は戯れた。しかし案の定、私はそれだけで満足を得る事が出来ず、込み上がる衝動はいよいよ増していくばかりとなってしまう。
「跪きなさい」
 やがて私は、自分が座っている足元を指し示しながら、そう青年へと命じた。
 従順に、青年は床へと膝を着く。
 私はそんな真正面の彼へ向け、己のすっかり火照った欲望を曝け出す。
 眼前に突き出されたその存在に、青年は狼狽しながら視線を背けてしまう。しかしもう、私は容赦しなかった。
「何をすればいいか、分かるね?」
「………」
 しばし無言の重い空気が、室内を支配していく。
 だが私は、青年の行動をそのまま待ち続けるのだった。
 青年もまた、私が妥協する気がない事を察したらしい。泣きそうになって肩をブルブルと震わせながらも、やがて意を決したとばかり、上半身を傾けながらそんな私の股間へ顔を埋めていく。
 ギュッと強く瞼を閉じ、青年はそのまま私の一物を咥え込む。そして青年は私の欲望へ、嫌悪と恥辱に満ちた奉仕を開始するのだった。
(………)
 やはりこういう行為は初めての様で、青年のテクニックには拙劣さを否めない。しかしそれでも一心不乱に私のを口や舌で慰める青年の必死さと誠意は、私へと十分に伝わるものがあった。
「……これが済んだら、さっきの件をもう一度詳しく聞かせてもらうよ」
 自然と、私はそう呟いていた。
 私のを咥えながら、青年が上目遣いに視線を向けてくる。契約に成功したという喜びであろう、絶望に死んだ様だった青年の瞳は再び輝きを取り戻していた。
 そんな青年の頭を、私は優しく撫で上げる。
(最近の若者も、捨てたもんじゃない)
 営業マンたるものやはりこのくらいの熱意と気概がなくてはと、なおも奉仕を続ける目の前の青年に私は若き日の自分を重ね合わせるのだった。


COPYRIGHT © 2011-2024 アロエ. ALL RIGHTS RESERVED.

作者  アロエ  さんのコメント
前作のコメントありがとうございます。
基本、投稿するのはショートストーリーです。続きの希望がありましたが、残念ながらあれはあれで私としては完結したストーリーのつもりなので・・・