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旅先での辱め(2)


記事No.176  -  投稿者 : アロエ  -  2012/06/29(金)11:27  -  [編集]
 ガチャッ
 背後から、ドアの鍵を締める音が響いた。
 もう引き返す事は出来ない。緊張と恐怖が増していく。
 部屋の主人に中へと誘われながらも、俺は玄関前から動く事も出来ずに立ち尽くす。
 密室を完成させた男が、そんな俺の背後から身体を抱き締めてきた。
 男の腕の中で、俺は微動だに出来ぬまま硬直してしまう。
「まさか、本当にここへやって来るたぁビックリだ」
 俺の耳元で男が囁く。
 何も答えられず、俺は深く俯いたまま黙り込む。なぜこんな所へ来てしまったのか、自問自答だけが虚しく心の中で繰り返される。
「連れとは楽しんできたのか?」
「あ、あんたには……関係ないだろ……」
 声を引き絞り、俺は必死になって言い返す。
「そう緊張するな、夜はまだ長いんだ」
 男は静かに言ってきた。そして背後から、俺へと添えていた腕をゆっくりと動かし始める。
 グッと、俺はさらに全身を力ませた。男の手が、俺の身体を好き勝手に弄っていく。震えそうになる感覚が、俺の中を駆け巡る。しかし俺は、男に抗えぬまま身を委ねる結果となっていた。男への激しい嫌悪を抱きながらも、なぜか心臓の鼓動が苦しいまでに高鳴ってきてしまう。
 やがて男の右手が、俺の着ていた浴衣の裾から中へと強引に差し込まれてくる。
「っ……!」
 思わず発してしまいそうになる声を、俺は寸前のところで押し殺す。
 穿いている下着の上から、男は俺の股間を乱暴に掴んでくる。
 俺のモノを確認するや、男は野卑な笑みを浮かべてきた。そしてそのまま、揉み解す様に股間に食い込ませた指を動かしていく。
 その間、俺はただひたすらにこの屈辱の時間に甘んじていたのだった。
「ひょっとしてお前、連れに手も出さずにほったらかしてここへ来たのか?」
 予期せぬ男の言葉に、俺は動揺を露にさせてしまう。
「何で……」
「一発仕込んでたにしちゃ、女の香りが少しもお前から感じられねぇ。かといって髪とかも全然濡れてねぇし、その後に身体洗った様子でもなさそうだからな」
「………」
 男の洞察力に、俺は沈黙する以外に術がなかった。
「図星か?」
「うるさい!」
 俺の中で焦燥が募る。
 そんな俺を眺めながら、男がフフンと鼻で笑う。
「その威勢のよさ、俺は嫌いじゃないぜ」
 男の手は、さらに大胆な手付きとなって俺の股間を弄っていく。
「んぅっ……」
 加えられる刺激は、紛れもない性感となって俺の下半身を熱くさせてしまう。露天風呂でのたった一度の体験が、俺の身体に歪んだ悦楽の記憶を植え付けていた。一度拍車が掛かると、下着の中で俺のペニスが急速に豹変していく。
 男は肩越しに、そんな俺の股間を見下ろしてきた。
「なるほど、わざわざ自分からここへ来ただけの事はあるな」
「………」
 堪らない悔しさに、俺は強く下唇を噛み締める。
(何してんだよ……こんな奴に、俺は……)
 夕方の悪夢は、俺にとって決して忘れられぬトラウマとなっていた。しかしそれでもなお、その張本人である男の部屋へと深夜に尋ねて来てしまった自分。単なる気の迷いで済むはずがない。男に何をされようが、もはや全てが己の責任であった。
 宿泊している部屋では、俺がこっそりと抜け出した事も知らずに恋人が深い眠りの中にいる事だろう。男の言う通り、今夜の俺は彼女に指一本触れていない。あの一軒で、俺はとてもそんな気分にはなれなかった。旅行なんだから少しは羽目を外せと、強引に酒を飲ませて酔い潰れさせたのだ。
 だが結局、それはこの男の部屋を訪ねるアリバイ作りでしかなかった。俺は誰よりも愛していたはずの彼女を裏切ったのだ。それも彼女には想像だに出来ない形で。
「んっ……あっ……」
 男の手の下で、いよいよ俺のペニスは露骨な姿となっていく。
 しだいに荒くなっていく吐息と喘ぎ。止めどなく肥大化するばかりの欲望が、俺の中で完全に理性と乖離し暴走していく。
「誰の目も気にしなくていいんだ、じっくりと楽しもうぜ」
 そんな俺へと、男が静かに言ってくる。
「突っ立ったままも疲れるだろ?こっち来いよ」
 男の視線は、座敷に敷かれていた布団へと向けられた。そして俺の片腕を掴んでくるや、男は部屋の奥へと強引に誘おうとしてくる。
 だが俺はその場で足を踏ん張らせ、男の行動に抗う。
「どうした?」
「………」
「今さら、何を迷ってやがる?」
「お、俺は……」
「何しにここへ来たのか、お前が一番よく分かってんだろ?」
「………」
 俺の抵抗はそこまでだった。途方に暮れ、泣きそうになりながら俺は立ち竦んでしまう。
 進退に窮しきった俺の姿を眺めながら、男はどこか呆れた様に溜息を吐く。
「しゃーねぇ奴だな、そんなら俺が最後まで悪者になってやるよ」
 次の瞬間、俺の腕を男はグイッと乱暴に引っ張り寄せてきた。
「あっ……!」
 結局、俺は何も出来ないまま布団の上へとうつ伏せに身体を押し付けられてしまう。
 男はそんな俺の身体を拘束しながら、馬乗りに覆い被さってくる。
 布団の上で俺は怯えきっていた。誰の助けも期待出来ない俺と男だけの空間。恐怖がいよいよ俺の心を萎縮させていく。
「自分で選んだ道だ、後悔ないだろ?」
「やめてください……」
 か細い声で、俺はそう言うのがやっとだった。
 だが男は完全に無視し、俺の腰を一気に掴み上げてくる。
「もっと脚広げて、ケツをこっちへ突き出せ」
 浴衣の裾が、男の手で大胆に捲り上げられてしまう。そしてさらに、穿いていた下着までもが容赦なく引き下ろされる。
 纏っていたものを失い、俺の下半身は呆気なく露にされてしまう。すでに弾けんばかりに勃起したペニスと肛門が、ありありと男の視線に晒される。
 電気で明々とした部屋の中、俺は布団へと顔を強く埋めその恥辱に耐えねばならなかった。
 無防備な肛門へ、男は容赦なく視線を浴びせてくる。
 まさに見世物のごとく、俺は無言の中で精神的にいたぶられ、惨めさにプライドを徹底的に踏み躙られていく。いっそこのまま舌を噛んでしまいたいと、俺は本気でそんな衝動すら覚えてしまう。
 だがそれでも、男は何もしないままひたすら俺の痴態に満ちた姿を眺め続ける。
「抵抗しないのか?」
 男の問いに、俺は答える事が出来なかった。
「こんな惚れ惚れするケツの穴をじっくりと拝ませられちゃ、俺だってもう容赦しないぜ?」
「俺が何言ったところで……あんたは自分のしたいようにするだけだろが……」
「なるほど、覚悟は出来てるみたいだな」
「………」
 男は一旦俺から離れ、部屋の隅に置いてあったカバンへと手を伸ばす。中を探り、取り出されたのはプラスチック製の小さな細長い容器。
 四つん這いになったまま待たされる俺は、その正体を嫌でも悟らされる。
 臀部を突き出す俺の背後へ、再び男は身を置く。
「風呂場ではすまなかったな、とっさの出来心だっただけにあんな乱暴にしちまって。その分、今回は下準備を念入りにしてやっからよ」
 キャップを外し、容器を下へと傾けてきた。中から透明な粘液がドロドロと零れ出す。その液体が、真下に位置する俺の臀部へと落ちていく。
 俺は身体を硬直させたままなおも動けなかった。
 ローションで俺のヒップや肛門はそのままベトベトになってしまう。ひんやりとした液状の感覚が肌に広がっていく。
(このままじゃ、俺……)
 若気の至りなどと言い訳にもならない、本気で男に犯される状況の中に今自分がいるのである。だがそれでも、俺は男に逆らう事が出来なかった。むしろ男へと肛門を晒しながら、俺は露天風呂での記憶とあの生々しい辱めの感覚を蘇らせていく。
(何で……何でだよ……)
 強張った身体が、小刻みに震える。男の視線と辱めに、自然と身体が火照ってきてしまう。
「もう待ち遠しくて堪んねぇのか?」
 そんな俺へと、まるで見透かした様な男の言葉がすかさず投げ掛けられてくる。
「ち、違う……!」
「今さら俺に言い訳したって、しょうがないだろが」
 男が鼻で笑う。そして今やローションですっかり潤んだ俺の蕾へ、男は指先を押し当ててきた。
 ゾクッと、身震いしそうな感覚が俺の中を駆け巡る。
 俺へと向けられた瞳が残酷な輝きを増していく。収縮した蕾が、再び男の手によって押し広げられていく。
「んっ……」
 突き立てられた指が、ゆっくりと俺の中へ侵入してくる。露天風呂の時とは対照的に、極めて穏やかな形でそのおぞましい行為が刻々と進んでいく。
「へへ、まさかここまであっさり身を委ねてくるたぁ、思いもしなかったぜ」
「あっ……あぁっ……!」
 ローションの効果もあってか、男の指は瞬く間に俺の奥深くにまで達してくる。
 燻っていた疼きが、一気に掻き立てられていく。耐え難い辱めを受けながらなぜまたここへ自分はやって来てしまったのか、その意味を俺は改めて思い知らされる。
 男はそんな俺の姿を見下ろしながら、嘲笑ってきた。
「さっきのが初めてだったんだろ?それなのにもうケツで感じられるようになったのかよ。やっぱ随分素質のある身体してんじゃね−か」
「………」
「さすがに、もう何も言い返せないみたいだな」
「何とでも……言えよ……」
 吐き捨てる様に、俺は上擦った声で呟く。もはやその程度の悪態をつく事くらいしか、今の俺には出来なかった。
 その時、俺の奥にある敏感な部分へと男の指先が強く食い込んでくる。
「んんぁっ……!」
 ビクッと、強烈な感覚に俺は大きく身を仰け反らせた。
 しかしいよいよ身悶え始める俺に対し、男は少しばかりその姿を堪能するだけで急に指を引き抜いてきてしまう。
 ここから散々にいたぶられると覚悟していただけに、それはあまりに予想外な呆気なさであった。
 だがその直後、異変が俺を襲う。
(えっ……?)
 男の指が引き抜かれたというのに、この上ない違和感を俺は内部から覚えずにいられなかった。ジッとしていられないもどかしさに、足腰がガクガクと震え出す。
「あっ……んんぅ……」
 蹂躙された内部から、ジワジワと熱く痺れる様な感覚が増していく。
 俺の様子を察したのか、男の口元がわずかにほころぶ。
「さっそく、効果が出てきたか」
「え……?」
「眉唾の代物だったが、高い金出した価値はあるみたいだな」
「な、何を……」
 傍らに置いていたローションの容器を、男は再び手に取って俺へと示してくる。
「こいつはな、潤滑液ってだけじゃなく媚薬効果もあるらしい。どうだ、ケツの中が堪んなくなってんだろ?」
「てめぇ……ふざけんな……!」
 焦燥に駆られ、俺は声を荒げた。
 しかしそんな俺の太股の辺りへと、男の手が這わされる。
 ゆっくりと撫でる様な男の手付きに、俺は反射的に腰を震わせた。肌から伝わる男からの感覚が、俺の中でもどかしさを煽り立てていく。
「ひっ……あっ……」
 俺を眺めながら、男がククッと低い声で笑う。
「どうせなら理性ぶっ飛ぶくらいになる方が、お前だって気が楽だろ?」
「い、いやだ……そんな、俺は……んんっ……!」
 さらに股間へと回された手が、俺のペニスを掴んでくる。
 わずかな刺激で、疼きが奥底から急速に込み上がっていく。これもあのローションのせいなのだろうか、身体が性感に対し明らかに鋭敏となっていた。男の手の中で、硬くなったペニスが激しく何度も脈打つ。
 ゆっくりと、男がペニスを扱いていく。
「へへ、やらしい汁もうこんな垂らしやがって」
 溢れ出す先走りが、もはや限界寸前である俺の欲望を明確に物語っていた。
 抑え難い衝動に俺は突き動かされる。例え媚薬という不可抗力な原因であったとしても、いよいよ歯止めが利かなくなる欲望の昂ぶりに、俺の身体は完全に男の虜となってしまう。しかしそれは同時に、悦楽に溺れていく自分自身に対するとてつもない恐怖を伴うものであった。
 わずかに残された理性が俺に警鐘を鳴らす。気が付くと、俺は男から逃げ出そうとしていた。
「おいおい、何の真似だ?」
「離せ、やめろ!」
 男に拘束されながらも、俺は必死になって抵抗する。
「今さら被害者面してんじゃねーよ。誰がこんなお前なんかに同情してくれるってんだ?」
「あんたが……あんたのせいで、俺は……」
「往生際が悪いぜ」
 男によって帯が解かれる。間髪入れずに浴衣は呆気なく引き剥がれ、ついに俺は男の前で一糸纏わぬ姿となってしまう。
 露にされた俺の素肌へ、男からの濃厚な愛撫が繰り広げられていく。
「ああっ……んぅっ……あっ……んんっ……!」
 甲高い喘ぎを発しながら、俺は男の腕の中で激しく身を捩じらせた。
 背筋を男の舌が舐め上がっていく。
 胸肌を男の手が這い回る。
 首筋へ。
 脇腹へ。
 ありとあらゆる性感帯が男によって刺激されていく。
 身体は隅々まで男に貪られ、そして穢されていく。
 指が、舌が、肌の上を滑るたびに淫らによがり狂う己の姿。
(やめろ、やめてくれ!)
 俺は心の中で何度も叫んだ。決して戻る事も忘れる事も出来ぬ領域へ、俺は引きずり込まれていく。
 やがて男の手が、再び肛門へと伸ばされる。解された蕾へと、今度は二本の指が同時に勢いよく押し込まれていく。
「あっ……ああっ……!」
 さっき以上の圧迫感に、中を弄られながら俺は悶え続けた。
「どうだ、もうこんな指なんかじゃ物足りなくなってんだろ?」
「うぅっ……んぁぁっ……!」
 前立腺を大胆に刺激され、股間のペニスが勢いよく跳ね上がる。
 俺はもう我慢出来なくなってしまう。焦らされ続ける射精への衝動に、己の破裂寸前となっていたペニスを掴んだ。
 だが即座に、俺のそんな行動を男が制してくる。
「勝手な事をするんじゃねぇ」
「お、お願いです……もう、俺っ……」
「いいからちょっと辛抱しろって。楽しみはこれからだ」
 男は諭す様に言いながら、覆い被さっていた俺から身を起こす。
 次に何をされるのかという不安を抱く事ももはやなく、ひたすら次なる男の行動を待ち続ける自分がそこにいた。
 そんな俺の真正面に、男が仁王立ちで位置する。
 布団の上で、呆然と俺は男を見上げた。
 するといきなり、俺の前で男は着ていた浴衣の裾を捲り上げてくる。そして自らが穿く下着も、何ら躊躇いなく脱ぎ下ろす。
「あっ……」
 露となった男の一物に、俺はハッと息を呑む。
 目の前に反り返る、男の逞しい欲望の塊。中年の外見とは裏腹に、まるで老いを感じさせない猛々しさに俺はいつしか釘付けとなってしまう。
 同性の性器など、ついさっきまでなら俺は見る気も起きなかっただろう。だが今は、己へと標的を定めた凶暴なるその精力をひしひしと感じさせられながら、俺の心は激しく躍り下半身はいよいよ熱く疼いてきてしまう。
(俺は、何を考えて……こんな男に……)
 今までの人生で作り上げられた価値観が、俺の中で完全に崩壊していく。
「何だ、そんなに俺のは見惚れるものか?」
 男の言葉で我に返り、俺は慌てて目の前の一物から顔を背けた。
 しかしそんな俺の髪の毛を、男の手が乱暴に掴んでくる。
「っ……!」
 逞しい男の幹が鼻先に触れそうな間近にまで、俺はそのまま顔面を引き寄せられた。
「自分ばっか気持ちよくなってちゃ不公平だろ?今度はてめぇが俺に奉仕する番だ」
「そんなっ……」
 容赦なく発せられた一言に、俺は男の意図を察し愕然とさせられる。
 だがそんな俺に対し、男は不敵な笑みを浮かべてきた。
「出来ねぇとは言わせないぜ?俺ともっと楽しみたいんだろが」
「でも……」
「咥えろ」
「………」
 有無を言わさず、男は要求してくる。
 俺はこの時、初めて自分からの行動を迫られた。だが眼前で反り返った男のペニスに、俺は何も出来ないまま固まってしまう。
「いつまでもダラダラ時間かけてっと、困るのはそっちだろ?」
 躊躇う俺へと、すかさず男は言ってきた。 
 もはや逆らう事など出来ないのだと、俺はこのおぞましい要求を突き付けられながら痛感させられる。理性も誇りも、今や何ら自分にとって意味をなさなかった。淫靡に火照る身体はその間もなお快楽を求め続けている。男へひたすらすがり続ける以外、際限なく募る倒錯の欲求から解放される術はなかった。
「このままじゃ、さすがに俺も白けっちまうぜ?」
 まるで最後通告とばかりの言葉に、俺は呆気なく屈してしまう。
 口を開け、目の前のペニスを俺は受け入れた。
 ムンッとする雄の臭いと共に、熱く硬い感触が口の中一杯に広がっていく。
「もっとだ、言われなくても分かるだろが」
「んっ……んぅっ……」
 喉元深く、俺は男のペニスを大胆に咥え込んだ。男の塊が舌の上で何度も跳ねる。
「こういうのは連れの彼女にさせてるのか?された事なくったて、AVで見たりはしてるだろ。テクニックってもんを考えながらやれ」
 恋人を引き合いに出され、さっきまでの自分ならば激しい怒りを覚えたであろう。だが今や、その存在ですら正気を失った俺の心には何の影響も及ぼさなかった。むしろ俺は口の中でその猛々しい欲望の息吹を感じさせられながら、いよいよ醜悪なる衝動を昂ぶらせていく。
 俺はひたすら、男のペニスをしゃぶり続けた。
「まだだ、そんなんじゃとても満足出来ねぇな」
 しばらくして俺は口から離すも、男は辛辣に言い放つ。
 惨めさに涙ぐみながらも、俺は行為を再開するしかなかった。どうすれば男は満足してくれるのか、俺はもうそれ以外考えられなくなってしまう。
「はぁ……ぁ……」
 舌を何度も繰り出し、男の竿や睾丸の隅々まで舐め回す。考えられる限りの方法を振り絞り、俺は男へと試みていた。
「いいぞ、その調子だ」
「うぅ……んっ……んんっ……!」
 男の股間は俺の唾液塗れとなっていく。それでも俺は必死に舌や口を動かしていた。
(欲しい……ああっ……このチンポでメチャクチャにされたい……!)
 沸き起こる夢想と共に、俺はもどかしさで何度も腰をくねらせる。
 この男に犯されたい、いつしか俺の求める帰結は明確なものとなっていた。露天風呂での出来事以降、心の深層に芽生え俺をこの破滅的な選択へと導いた正体が、ついに剥き出しとなって表面化していく。
「よし、そろそろいいだろ」
 やがて静かに、俺が切実に待ち望み続けていた一言を男は口にする。
 俺はもう完全なる一匹の雄と化していた。潤んだ瞳で男を見上げ、俺は泣き叫ぶ様な声で己の欲情を吐き出す。
「お願いです、俺のケツにそのチンポをぶち込んでください!」



 全てが順調であった。あまりにも出来過ぎなくらいに。
 長年の悲願を神が叶えてくれたのか、もしくは救いようのない憎悪を悪魔が後押ししてくれたのか。だがそんな事はもうどうでもいい。俺の復讐とそのための計画は、今や最も重要だった第一段階を成功の中で終えようとしているのだ。
「うぁぁっ……ああっ……!」
 歓呼にも似た声と共に、青年の逞しくいきり立ったペニスからついに大量の白濁が噴き上がる。
 布団の上で仰向けになり大きく開脚させた青年のあられもない姿。ありありと晒されたその肛門が、俺の欲望で残酷に蹂躙され続ける。
 己の精液を身体に浴びながら、なおも青年は恍惚に耽り俺の動きに合わせて積極的に腰を振り続けていた。
「へへ、ケツだけでイッちまったのかよ」
「もっと、もっと……チンポで犯して……気持ちよくしてください……!」
 青年は無我夢中で訴えてくる。世間体も、愛してたであろう恋人も、そして己の品位や誇りも、何もかもを若者は忘れ去り悦楽を求め続けていた。
「おいおい、ちょっとの間にすっかり淫乱になってんじゃねぇか」
 内部を抉る様に、俺はさらに青年に対し腰を力強く突き上げた。
「ひっ……んぐぅぅ……!」
 苦悶に顔を歪めながらも、青年は精液に塗れたペニスを自らの手で激しく扱き立て始める。射精を終えた直後というのに、若さ溢れるその肉体は未だ足るを知る様子がない。
「にいちゃん、こいつを一晩のいい思い出だけで終わらせていいのか?もう女とイチャイチュしてるだけじゃ満足出来ねぇだろ?」
「お願いです……これからも……俺、何でもあなたの言う事聞きます、だから……だから……」
「本当にそれでいいのかい?こんなの知ったら、てめぇの恋人はさぞやショックを受けるぜ?」
「構いません、だったらもうあいつとは別れます、未練なんかありません!」
 何ら躊躇いなく、青年は叫んだ。男に犯される悦びを知ってしまった身体が、ついにはその心までもを支配していく。
(そうだ、もっと堕ちろ、徹底的に堕ち続けろ)
 俺は心の中で青年への呪詛を呟き続ける。
 かつて息子を死へと追い詰めたこの男の報いはこれからだった。息子の無念と何の反省もなく今まで平然と暮らしていられたツケをこの俺がこれからじっくりと清算してやる。息子が受けた虐めの時とはまた違う質の苦しみと破滅を、この快楽と引き換えに俺がこの男へ与えるのだ。
「ならこれからもよろしく頼むぜ、もっともっと可愛がってやっからよ」
 やがて己の欲望はついに限界へと達し、青年の中で勢いよく爆発する。
「あぁっ……!」
 吐き出される熱い液体で、彼の直腸は瞬く間に充満していく。
 俺の真意を何も知らない哀れな青年は、幸福に満ちた様子でなおも淫らに身を震わせ続けるのだった。

COPYRIGHT © 2012-2024 アロエ. ALL RIGHTS RESERVED.

作者  アロエ  さんのコメント
どうも、続編を投稿してみました。
最後のオチは最初から考えてたものじゃなかったんですが、書いてる内に主人公よりもおっちゃんに愛着持ち出したんで、ただの悪者で終わらせたくないなぁってな感じでこういう締め方をしました。
続編を期待された方の希望に適うものかは不安ですが、これからも応援よろしくお願いします。