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週末の戯れ


記事No.179  -  投稿者 : アロエ  -  2013/03/11(月)18:04  -  [編集]
「何を……?」
 突然の事に、将馬は自分の身に今起きた事態を即座に把握出来なかった。
 将馬が問いを投げ掛けた友人は、そんな唖然となる自分を真上から無言のまま眺めてきている。
 アルコールのせいですっかり思考が鈍くなってはいるものの、ようやく将馬は自分がベッドの上へ不意に押し倒された事を理解する。仰向けで横たわる将馬へと覆い被さる様に、友人もまたそのベッドに身を乗り出してきていた。
「恭平?」
「俺、マジで何しようとしてんだろな」
 同じ大学に通う同期の恭平が、かすかな笑みを浮かべながら言ってくる。
「……退けよ」
 気兼ねのない仲であるはずなのに、将馬はなぜか妙な気まずさと胸騒ぎを覚えた。間近から視線を向けてくる恭平から、自然と顔を背けずにいられない。
「いやだって、言ったら?」
「どういう意味だ?」
「分かんない?」
 意味ありげに、恭平は言ってきた。
 次の瞬間、恭平はさらに将馬へと身を沈めてくる。
 ハッと、将馬は息を呑む。
 重なり合う様に、恭平の身体が密着してきた。直に感じさせられる相手の体温と吐息に、なぜか心臓の鼓動が急速に高鳴ってきてしまう。
「やめろ……ふざけんなって……」
 堪らず、そんな恭平を将馬は慌てて押し退けようとした。
 だが恭平は、将馬に対しまるで動じる気配がない。上から体重ごとのし掛かってきているだけに、組み伏せる恭平の方が圧倒的に有利であった。
「お前、最近ご無沙汰だろ?」
 その時、抗う将馬の耳元で恭平が静かに囁いてくる。
「え……」
「俺が、代わりに相手してやるよ」
「相手?}
「別れる前からかなり関係こじれてたんだろ?だったら当然、その彼女とエッチも最近はしてなかったんじゃないのか?」
「恭平……かなり酔ってるだろ……」
「誰のせいだよ」
「………」
 ベッドから、将馬は視線を横へと向ける。ミニテーブルやその周りに散乱するビールやチューハイといった空き缶の数々。それらが深夜に至る今までで二人がかなりの酒量を消費した事を明確に物語っていた。
「俺を今日呼んだのも、週末の夜を一人で過ごすのが寂しかったからだろ?」
 すかさず、恭平が言ってくる。
 事実、今夜の酒盛りは将馬が自分の住むアパートに恭平を呼んで始めたものだった。数日前、付き合っていた彼女から突然に別れを突きつけられ、酒でも飲んでその愚痴を聞いてくれる相手を求めていたというのがそもそもの本音と発端である。
「寂しいって、こんな意味じゃねぇよ……」
「俺じゃだめ?」
 何ら躊躇いなくそんな問いを投げ掛けてくる恭平に、むしろ将馬の困惑は増すばかりだった。
「だめも何も……あ、あり得ないだろが……男同士でとか……」
「男相手は、やっぱ初めて?」
「あって堪るか!」
 すると恭平は、口元に軽い笑みを浮かべてくる。
「いいじゃん、一回くらいこういうの試してみるのも」
 そう言ってくるや、将馬が着ているシャツの裾から中へ、素早く恭平の右手が差し込まれた。
「っ……!」
 将馬は、一気に身体を硬直させてしまう。
 肌へと直接、恭平の掌が這わされる。下腹から胸へ、ゆっくりとその手が移動していく。
 身震いしそうな感覚が、将馬の中を駆け巡った。男相手であるはずなのに、緊張と動揺が過剰なまでに増してきてしまう。
(俺、何を考えてんだ……相手は恭平だぞ……)
 だがそれでも、将馬は呆気ないまでに平静さを失っていく。肌から感じる恭平の生々しい感覚が、いっそう胸の鼓動を高鳴らせてしまう。
 そんな将馬を嘲笑う様に、胸肌へと添わされた恭平の手が撫でる様に動かされる。
「将馬、すげぇドキドキしてるじゃん」
「マジで……やめろ……」
「こんな事されて、俺を変に意識しちゃってる?」
「恭平!」
 焦燥に、将馬は声を荒げる。
 だが恭平は、何ら将馬に怯む様子はなかった。
「それで、強がってるつもりか?」
 不敵に言い返し、恭平は将馬の首元へと顔を埋めてくる。
「あっ……!」
 襟首から覗く肌へと恭平の唇が触れるや、反射的に将馬の身体がビクッと震えた。
 すかさず、恭平の舌先が将馬の首筋へと添わせてくる。抵抗しようとする将馬を意に介す事もなく、首や耳元といった肌の上を舌が滑っていく。
「んぅっ……や、やめっ……んぁっ……あぁっ……!」
 敏感な部分を責められ、将馬は何度も身を捩じらせた。
「なかなか、そそらせる声出してくれるじゃん」
 着ていたシャツも、その間にたくし上げられてしまう。露にされる将馬の胸肌へ、恭平による愛撫の範囲は拡大されていく。
「待て……はぁ……んっ……恭平、ホントにやめろってば……!」
 身悶えながら、将馬は必死になって訴えた。
「あんまり声大きいと、隣に聞こえちゃうかもよ?」
「てめぇ……」
「男相手でも、感じちゃうんだ?」
「ち、違う……俺は……」
 将馬はすっかり窮してしまう。酒のせいもあるのか、男からこんな行為を受けながら将馬の身体はいつしかすっかり熱く火照ってきていた。
「それとも、かなり欲求不満が溜まってるとか?」
 恭平はそう意地悪っぽく問いながら、右手を将馬の下半身へと伸ばす。
 ズボンの上からではあるものの、股間へと恭平の掌が被せられる。その触れられた感覚に、将馬の身体が敏感に反応してきてしまう。
(やばい……!)
 狼狽する将馬の股間へと、恭平の指がしっかりと絡められてきた。同時に、将馬の乳首へ恭平の舌が這わされる。
「んぁぁっ……」
 駆け巡る鋭敏な刺激に、将馬の身体は何度も震えた。
 そんな将馬の股間に対し、恭平の手が大胆に動かされていく。
 恭平からの愛撫に翻弄されながら、将馬の身体は確実に疼きを活発にさせてきてしまう。そして将馬にとっては、あまりに不名誉な形で己の欲望を剥き出しにさせられるのだった。
(嘘だろ……)
 下着の中で刻々と圧迫感が増していく。将馬の焦燥が募る。
「身体は正直だな」
 満足そうに、恭平は言ってきた。
 そんな恭平を前に、将馬は何も言えないまま黙り込む。屈辱というよりも敗北感が、将馬の心の中に渦巻いていく。
「俺相手でも、ちゃんと楽しめそうじゃん」
「恭平……お前こそ、その……マジで、俺とやるつもりなのか……?」
「ただの冗談で、こんな事が出来るとでも?」
「………」
「正直、俺マジで将馬と一回してみたかったんだよな」
「お前……そんな目で俺を今まで見てたのかよ……」
 さすがに将馬も、恭平からのそんな告白に動揺を隠せずにいられない。
 だが同性をそんな対象として見るなど考えもしていなかった将馬の驚きとは裏腹に、恭平は不思議と冷静な面持ちを保っていた。
「それは誤解だって。ただそういう気持ちもちょっとはあったってだけで、何も将馬を最初から狙ってたって訳じゃないさ」
「だったら、この状況をどう説明すんだ?」
「酒に酔った勢いで、つい魔が差したとしか言い訳の仕様がないな」
「………」
 すると恭平は改めて、そんな将馬の下半身へと視線を向けてくる。
「でもまさか、将馬の身体がここまでノリがいいとは思わなかった」
 そう言いながら、将馬の股間を撫でる様に恭平の手が動かされていく。
 くすぶっていた疼きが、そのわずかな刺激だけでも敏感に掻き立てられてきてしまう。今や露骨に硬くなった将馬の熱い幹が、下着の中で力強く何度も脈打つ。
「ふざけんな……俺はそんな趣味ねぇよ……」
「だけど、こっちの方は全然俺を嫌がってはなさそうだけど?」
 股間へと絡めていた指を、恭平はさらに強く食い込ませていく。
「あぁっ……」
 か細い声を洩らしながら、強張った将馬の身体が小刻みに震える。紛れもない性感が将馬の中で激しく掻き立てられ、もどかしさをいっそう煽っていく。
「余計な事は考えずに、今は楽しもうぜ。いいじゃん、お互い酒に酔っての事なんだし」
「その……恭平って、つまりホモな訳……?」
「どうなんだろな……ただ、初体験の相手が男だったせいか、相性がよければ相手の性別とか気にならなくなったって感じかな」
「てか、何でそもそも初めての相手が男なんだよ……」
「その話、詳しく聞きたい?」
「いや……もういい……」
 知られざる恭平のディープな青春に、将馬は聞くだけでも気が滅入りそうでならなかった。
「なぁ、見せて」
 その時、唐突に恭平が言ってくる。
「え?」
「将馬のビンビンになってるの、見てみたい」
「………」
「それに、将馬だってこのままじゃ辛いだろ?」
 将馬の耳元で、恭平はそう静かに囁く。
 あまりに危険な領域へ自分が引きずり込まれようとしていると、将馬も十分過ぎるくらいに分かっていた。だがそれでも、将馬の中で欲望はいっそう昂りを増していく。
(ここには、俺と恭平しかいない……俺らが何してるかなんて、誰にもバレない……)
 自然と、そんな打算と誘惑が将馬の脳裏を過ぎる。
 将馬の中で揺らぐ心をまるで見透かしたかのごとく、恭平の手がズボンのベルトを掴んできた。
 だが、将馬はそんな恭平に抵抗する事が出来ないまま固まってしまう。
 恭平の手で、あっさりとベルトが外された。緩んだズボンが、そのまま下着もろとも恭平によって一気に引き下ろされる。
 曝け出された局部から、勢いよく将馬のペニスがそそり立つ。葛藤する理性とは裏腹に、欲望は今や弾けんばかりにその逞しい幹に漲っていた。
 恭平は無言のまま、将馬のペニスへと視線を向けてくる。
 沈黙の時間が、しばし続いた。自分の勃起したペニスをただひたすらに眺められ続ける中、さすがに将馬もしだいに羞恥を覚え始める。
「そんな、ジロジロ見るなって……」
 まるで視姦じみた辱めに晒されているかの様で、将馬は耐え切れずそう恭平へと訴えずにいられなかった。
 その言葉に反応して、ようやく将馬の股間か恭平は顔を上げてくる。
「男同士なんだし、恥ずかしがる事ないだろ?」
「そっちこそ……こんなの見て何が面白いんだ……」
「将馬のなら、いくら見てても飽きないんだけど」
「見たいなら自分の見てろよ……同じのがあんだろが……」
「恥ずかしいなら、もうここでやめる?」
「………」
「それとも、完全にこのまま俺に身を委ねるか?」
 恭平からの問いに、将馬の表情はより複雑な色を濃厚にさせていく。
「委ねるって……お前は、俺にどこまでする気なんだ……?」
「将馬がいいなら、どこまでだってするけど?」
「………」
 恭平によって既成事実を次々に積み上げられていくかの様で、返答を迫られる将馬は躊躇いを覚えずにいられない。
「怖いか?」
 そんな将馬の心境を察する様に、恭平が問い掛けてくる。
「その……男同士での本番って、ケツでするんだろ……?」
「別に、何が何でもケツで締め括るって訳でもないさ。ただ、アナルの快感ってハマる奴はハマるぜ?」
「そ、そうなんだ……」
「試してみる?」
「さすがにそれは……やっぱ、こういうの初めてだからさ……いきなりケツはハードル高過ぎるっていうか……」
「まぁ、嫌がる将馬を無理矢理に犯すみたいな真似はしないからさ、安心しろよ」
 恭平はそう言うと、再び将馬へ右手を伸ばしてきた。
 そそり立つ将馬のペニスが、直接に恭平の手によってしっかりと握られる。
「んんっ……」
 恭平は将馬の様子を伺いつつ、腕を上下に動かしながらその硬いペニスを扱いていく。
 加えられる本格的な刺激に、将馬の欲望は一気にその勢いを加速させる。高まる熱い疼きが、絶頂のその時へ向けて刻一刻と迫っていく。
(男にシコられて気持ちいいとか、俺マジ最悪じゃねぇか……)
 心の中で、自嘲にも似た気持ちで将馬は呟く。
 同性との性行為など考えもしていなかった将馬にとって、その快楽は極めて複雑なものであった。だがそれでも、恭平のされるがまま今や無抵抗に身を委ねてしまう自分がそこにいる。止めなく肥大化していく欲望を前に、抗う気力すらも将馬から奪っていく。
「恭平……や、やばい……」
「イキそう?」
 無言のまま、将馬は頷いた。
「このまま、最後まで続けて欲しい?」
「いちいち……俺を試すみたいな質問やめろ……」
「じゃあさ、俺からも頼みがあるんだけど」
「え?」
「俺も、気持ちよくなりたい」
 そう言って、恭平は自らが穿くズボンへと手を掛ける。
「恭平……」
 あっさりとズボンと下着が脱ぎ下ろされ、将馬は唖然としたままその露わとなる恭平の下半身に釘付けとなってしまう。
「興奮して堪んなくなってるの、将馬だけじゃないんだぜ?」
 やや顔を紅潮させ、恭平は静かに言ってきた。
 将馬はすっかり言葉を失ってしまう。眼前には自分のに勝るとも劣らない勢いで、恭平のペニスが逞しく幹を反り返らせていた。
 そんな将馬へと、やがて恭平は身体を覆い被せてくる。
「大丈夫、酷い事はしないから」
 将馬と恭平、互いの熱くなったペニスが触れ合う。
「あっ……」
 硬く、その精力漲る脈動が、将馬へと鮮明に伝えられてくる。それだけで、将馬のペニスもまた激しく跳ねた。
 さらに将馬へと、恭平はペニスを強く押し付けてくる。
「今夜は、かなり楽しめそう」
「恭平……」
 いつしか、将馬は恭平の背中へと両腕を回していた。抑え難い欲求と衝動に突き動かされるがまま、その身体をしっかりと抱き締める。
「……俺、マジで将馬に夢中になっちゃうかも」
 そう、恭平は囁いてきた。
「男に惚れられたって、嬉かねぇよ……」
「やっぱ、俺じゃだめ?」
「………」
 なぜか将馬は、そんな恭平に今は妙な照れ臭さを覚えてならない。互いの熱い欲望をその身で感じ合いながら、将馬の心は激しく踊るのだった。

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作者  アロエ  さんのコメント
お久しぶりです。
今回は大学生二人のお話でした。中途半端な終わり方ですが許してください。頭に浮かぶ事をなかなか文章として表現出来ないもどかしさを、小説書いてると実感します><