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目覚める欲望(1)


記事No.181  -  投稿者 : アロエ  -  2013/06/21(金)20:32  -  [編集]
「あっ……」
 扉が開けられた瞬間、目の前に飛び込んできた室内の光景を目の当たりにした安藤は、言葉を失い固まってしまう。
 すでに夕暮れ時というには遅く、空はすっかり暗くなった時刻。
 そこは、A高校水泳部の更衣室兼部室として紹介された部屋。すでに校舎全体が静まり返っており、自分達以外には誰も残っていないと思っていた安藤をまるで待ち構えていたかのごとく、室内の中央に一人の少年が立っていた。
 日に焼けた健康的な肌。細身のスラリとした体形ながら、日々の運動によって鍛え上げられたのであろう貧弱さを感じさせない引き締まった肉体。少年の外見的特長を何もかも、安藤は一瞬にして把握する。
 無言のまま直立不動の少年は、一切の衣服を身に纏う事なく全裸で立っていた。
「どうかしましたか?」
 この場所へと安藤を引率してきた先任の水泳部顧問、西岡がわざとらしく問い掛けてくる。
 来月の四月からこの学校へ赴任する事となった安藤と、入れ替わりに他校へと赴く西岡。今日この学校を訪れたのも、これまでのキャリアを買われて赴任早々に水泳部の顧問を請われた事で、部の引継ぎと今後の方針を前任の西岡と話し合うためであった。
 そんな西岡へ、安藤は慌てて顔を向け直す。だが、あまりの驚きと困惑によって思考とそれに伴う言葉がついてこない。
 青ざめた安藤の表情に、西岡が苦笑してくる。
「まぁ、驚かれるのも無理ありませんね」
「これは、一体……」
 声を引き絞り、何とかそう問い返すのがやっとだった。
「一度に説明するもややこしいので、まずはしばらくそのまま見学していてください」
「………」
 理解不能な状況を前に、安藤は茫然自失のまま立ち尽くす。
 そんな安藤をまるで無視するかのごとく、傍らにいた西岡が少年へと静かに足を進める。
 顔を俯けていたため、少年の表情まではよく見えない。しかしそれでも、西岡の接近によって少年は怯えているかの様であった。
「来月から新しくここの顧問になられる先生だぞ、挨拶くらいせんか」
 一転、威圧的な口調で西岡が少年へと命じる。
 西岡からの言葉に、少年は露骨に畏縮しきった反応を示す。俯けていた顔を、正面に立つ安藤へ恐る恐るといった面持ちでぎこちなく向けてくる。
「川野……順、と言います……よろしく、お願いします……」
 か細い声でそう名乗った少年の瞳は、今にも溢れそうなくらいの涙で潤んでいた。
「え……!」
 だが安藤は、少年から耳にした名によって新たなる驚愕を覚えさせられる。
 安藤の様子を察してか、西岡の口元がかすかにほころぶ。
「あなたもご存知でしたか?我が部、期待のエースですよ」
「西岡先生……」
「これからこの部を引き継ぐんです。だからこそ、安藤先生にはしっかりと彼の事も理解しておいてもらおうと、思いましてね」
「訳が分からない……先生は、何を言ってるんですか……」
 西岡は、意味ありげな笑みを浮かべた。
「とりあえず、そこのドアを閉めてもらえませんか?まぁもう誰も残ってなどいないと思いますが、もしこんな姿を他の誰かに見られたとなると、川野の立つ瀬がないんでね」
 投げ掛けられた西岡からの言葉で、出入り口の前に唖然としながら突っ立っていた安藤は反射的に更衣室のドアを中から閉じる。
 だがその直後、自分の軽率な行動を安藤は悔いた。
 外部の目から遮断された室内は自分と西岡、そして順、三人だけの空間と化してしまう。
(何なんだ、一体これは……)
 順の様子からして、明らかに西岡から強いられてあんな姿になっているとしか思えない。最初の衝撃から徐々に冷静さを取り戻すにつれ、羞恥に塗れながらも必死に耐え続ける少年の哀れさを安藤はひしひしと感じさせられてならない。
 それもそのはず、順は律儀なまでに背筋を正して局部を手で覆い隠す事もせず、垂れ下がるペニスまでもが安藤や西岡の目にありありと曝け出されていた。いくら体育会系の男子といえども、見ず知らずの相手を前にしてこの様な姿で対峙するなど、耐え難いものがあるだろう。
(川野順……)
 心の中で、安藤がその名を反芻する。この少年とは初対面ではない。
 昨年の県大会。他校の水泳部顧問として安藤もあの場所にいた。その大会の400メートル自由形で見事に三位入賞を果たした選手こそが、今自分の目の前に一糸纏わぬ姿で立つ川野順である。それまでA高校水泳部の功績はさほど大したものではなかっただけに、安藤にとっても順の存在は印象深かった。
 しだいに安藤の中で、あの日の記憶が鮮明に蘇っていく。
 プールサイドに立つ少年の姿。聡明さを感じさせる端正な顔立ちと、凛とした男らしさと爽やかさ。部を率いる顧問として新たなる強豪選手の台頭に危惧を覚えると同時に、美しさと逞しさを兼ねそろえたあの少年を、思い返せば自分は同じ男ながらもどこか惚れ惚れする気持ちで眺めていた。
「先生、やはりこの状況は訳が分かりませんか?」
 西岡からの声に、安藤はハッと現実に引き戻される。
「あなたは……何を考えているんですか……」
 ただただ状況に圧倒されるばかりの安藤であったが、明らかにこれが部の顧問と生徒という関係を逸脱しているという事を理解するにつれ、西岡に対する抑え難い怒りが沸々と込み上がっていく。
「おや、どうしました?」
「こんな事が、許されるとでも?」
「落ち着いてくださいよ。これは川野も合意の上なんですから」
 そんな西岡の言葉に、順は俯きながら下唇をギュッと強く噛み締める。
「西岡先生、確かにそれぞれの学校や部には独特の文化や気風というものがある、それは認めます。ですが、世間には常識というものがあるでしょ」
「それで?」
「これが川野にとって、苦しみ以外に何の意味があるというんです!」
「ほぅ、先生は随分と真面目なんですね」
「ふざけるな!」
 まるで悪びれる事のない西岡に、安藤は声を荒げた。
 もはや正論など通用しないと、安藤は諦めるしかない。ならば自分が今とるべき手段は一つしかなかった。
 踵を返し、更衣室のドアノブに安藤は手を掛ける。
「どこへ行くんです?」
「他の先生方にこの事を報告します!あなたが部員に行っているこの非道な行為、見過ごす事など出来ません」
 毅然と、安藤は言い放った。
 だがそれでも、西岡は何ら怯む気配はない。安藤の行動を特に制止するといった事もせず、余裕に満ちた表情で傍らの順へと顔を向ける。
「どうするよ、川野?このままじゃ、俺達の今までが全部バレちまうなぁ」
 それはまさに、この部屋から出ようと安藤がドアを開ける瞬間だった。
「安藤先生、やめてください!」
 懇願する様に、順が叫ぶ。
 その悲痛な声が、安藤の動きをピタリと止めてしまう。
「え……」
 戸惑いながら、安藤は順へと振り返る。
「お願いです……俺なら、平気ですから……」
「な、何を……」
「先生、軽率な真似は川野のためになりませんよ?確かに私は罰せられるべき人間かもしれない。ですがそれは同時に、せっかく才能ある彼の選手生命すらも潰す事になる」
「どういう事ですか……?」
 順の表情は、苦渋に満ちていた。
 明らかに西岡によって羞恥を強いられているはずの順が、自ら救いの手を断ち切ろうとしているのである。安藤にはとてもそれが理解出来ない。
 そんな安藤を、西岡が勝ち誇る様に眺めていた。
「まぁ、そう焦らずに。今日こうして川野を呼んだのは、赴任してこられる安藤先生をもてなすためなんですから」
「え?」
「すぐに、意味は分かりますよ」
 次の瞬間、西岡は横から順へと寄り添う様に身体を迫らせるや、素早く右手を少年の下半身へと伸ばす。
「っ……!」
 安藤はその光景に表情を強張らせた。
 無防備な順のペニスが、安藤の手によってしっかりと掴まれる。その行為に、順の身体がビクッと震えた。
 慣れた手付きで、西岡はそんな順のペニスを扱いていく。
「んっ……あぁっ……」
 どこか切なげな声を、順は洩らす。
「安藤先生に、お前の本当の姿をちゃんと見てもらえ」
 耳元で、西岡が囁く様に言ってきた。そして順のペニスに対して、西岡の手はいっそう大胆に動かされていく。
「はぁっ……んぅぅっ……」
 悶える様に、順は何度も腰を捩じらせる。
 だが順に抗う様子はなかった。それどころか西岡に股間を弄られながら、順の洩らす喘ぎはしだいに生々しいまでの淫靡さを帯びていく。
 そんな西岡と順の行為を、狼狽しながら安藤はただ見ている事しか出来なかった。
 順の荒い吐息と声が、室内に響き渡る。
「どうです、先生。なかなか彼のモノは立派でしょ?」
 頃合を見計らう様に、西岡は順のペニスから手を離した。
 安藤は唖然となりながら、そんな順の姿を目の当たりにさせられる。
(嘘だろ……)
 さっきまで力なく垂れていた少年のペニスは、西岡からの辱しめによってわずかな間に逞しい男の象徴と化していた。
 あまりの劇的な変化に、安藤は息を呑む。
 弾けんばかりに怒張して、勢いよく反り返った幹。完全に剥けた包皮から露となる赤黒い亀頭。加えられた刺激の余韻が未だ燻っているのか、その猛々しいまでに勃起した順のペニスが力強く脈打つ。
 安藤は、すっかりそんな順の股間に釘付けとなってしまう。
 そんな安藤の視線から逃げる様に、順は顔を横へと背けていた。だがそれでも、涙を必死に堪えて今まで以上の恥辱に耐えねばならない少年の苦痛が痛々しいまでに伝わってくる。
 だがそんな順の哀れな表情とは裏腹に、溢れんばかりの精力を股間は漲らせていた。
 いつしか安藤は、その猛々しく獰猛な雄の本能を曝け出す少年の若き肉体に、すっかり魅入ってしまう。


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作者  アロエ  さんのコメント
前回の作品で指摘されたため、今回は少し鬼畜気味に書いていきます。
続きはいつになるか分かりませんが、近いうちに投稿します。