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小説の様な実話4


記事No.218  -  投稿者 : 憲太郎  -  2015/04/18(土)08:05  -  [編集]
大変だったのが陵介の学費。
卒業するのに百万円近い金が必要だった。
ほっとけ無いとはいえ、次から次へと出て来る金の問題。
信じてやりたいが、どうしても疑ってもしまう。
親は出さないのか?可愛いはずの孫、祖母は金を出そうとしないのか?。
結局はもう支払いをしないと卒業証書は出さないと言う所まで来た。
仕方なく、陵介の叔父として学校へ直接支払いに行った。
詐称の多い売り専の世界だが、全く陵介は詐称が無い。
騙されてる、騙されてても捨て金と言う気持ちで居たが、祖母の居る実家の連絡先も教えられ、気のみ気のまま転がり込んだから、一緒に実家まで荷物を取りに行った。
祖母に会う事は出来なかったが、陵介は嘘をついては無いことはわかった。
金目当てで付き合いを求めるボーイも居るが、どうも陵介はそうでは無い様に思える。
金を学校へ支払いに行った時も、担任の先生と話もし、陵介の事を誉めて居た。他者がやりたがらない事を率先してやってくれてたと言った。
俺は陵介に内緒で祖母に手紙を書いた。気になる、可愛い孫のはずなのに、学校から祖母に、父親に金の事は伝えられてたのに。
「陵介君と縁あって食事をしたり相談を受けたりする様になりました。」
陵介との出会いはごまかした。
幸い俺の職業柄、あまり疑いは持たれない。
金を支払った事や、住まわせてる事を書いた。
とても可愛いお孫さんのはずなのにその思いも。
しばらくして祖母から手紙が届いた。
そこには可愛い孫とは書かれては居るが、息子、陵介の父親と、陵介は大富豪か破産かのどちらかだと思うと話をしたと書かれてた。どうも違う。他人に世話になってるのに、父親を咎める事すらしてない、返して欲しいとは思って無いが、陵介の学費の事のお礼すら無い。父親に払わせることもしてない。
なんだ、陵介の家族は家族と言えるのか?。
手紙を見て愕然とした。あり得ない。俺も愛情不足で育って来たが、ここまで酷くは無かった。
とりあえず両親は離婚はしてない。しかし、陵介は両親の離婚、母親に捨てられ、父方の祖母に押し付けられ、二十歳になったからさよならと祖母に捨てられた。
父親の姿は一切無い。
家族全員がバラバラに暮らしてる。
陵介は卒業し就職をした。国家試験も合格して見習い美容師として新たな人生をスタートさせた。
その直後だ、父親から保険証を返せと連絡だ。
見習いで正社員でも無い。給与も10万あるか無いか、まだ扶養家族として通るのに、陵介はこれで本当に捨てられた。
陵介には厳しい現実が待ってた。朝9時には店に行き、帰るのは深夜だ。昼食も食べれない状況だった。
俺はそんな陵介にちょっと休憩出来る時に食べられる様に、おにぎりやサンドイッチを毎朝作り、陵介に持たせる様になった。
陵介「今日は何?」
俺「ツナとハムのおにぎりサンドだ。」
陵介「ありがとー、じゃあ行って来る!」
陵介はうれしそうに出かけ、俺も仕事に行った。
夜は夜で陵介の帰りを待ってやる。先に食べてるが、陵介の夕飯を置いておく。
疲れて帰って来るのに、俺が起きてると嬉しそうに色んな事を話してくれた。
朝早く夜遅くまで、週1回の休みで全く昔のやり方の美容室だが、本当に陵介は大丈夫なのかと心配をした。
ある日、陵介は沈んだ顔をして帰って来た。
俺「どうした?」
陵介「1人辞めた。」
俺「どうして?」
陵介「酷いよ、女の子なのに、いきなり先輩らモデルにしてさ、その子を坊主にした。」
俺「えっ、そんなのありか?」
陵介「おかしい、おかしいよ」
俺「陵介は何かされた?」
陵介「いつかモデルしろとは言われてるけど、イケメンは嫌いだって言われて、店でわざとイケメン、おいイケメン、さっさとやれよって言われてる。」
陵介は確かに目立つ。パッと見、芸能人やモデルにも見える。
俺「本当に大丈夫か?」
陵介「うん、がんばる!」
1ヶ月が過ぎる頃には、陵介ともう1人だけ、10人採用されて結局は2人になったと聞いた。
3ヶ月が過ぎる頃だ。
陵介「寒い、寒いよー」
そう言いながら帰って来ると倒れた。
夜通し寒いよ、寒いよと言う。
厚手の布団を掛け、コンビニに走り熱冷ましのシートを買って来た。
ずっと気を張って来てたのだ。
翌朝、また出かけ様とする陵介を押さえつけ、今日は休め、そんな身体じゃあダメだと無理矢理休ませた。
陵介「でも、俺が行かなきゃあの子が…」
しかし、陵介の精神もガタガタになってる事にも気付いた。
俺「頑張るなよ、頑張り過ぎるなよ。」
陵介「でも…」
俺「別の店もあるんだろ、少し休んで次を探せば良い。」
陵介「憲さんに迷惑掛ける。俺は1人何だし、早く自立して返さなきゃいけないんだ。」
俺「返してもらおう何て思って無い。自立はしてもらいたいが、そんなに焦ってどうする?無理しても結局は身体傷めてしまうだけだろ。」
陵介「でも、俺は1人で生きて行かなきゃ。憲さんもいつかは俺を捨てるだろ。俺は捨てられながら生きて来た。」
俺「誰が捨てるか!捨てる理由が何処にある?」
陵介「だって、俺、憲さんに何もして上げて無い。仕事では出来てたのに、憲さんとセックス出来ない。憲さんを愛せる様に努力するって約束したのに、俺は何もしてないし捨てられても当然だから。」
俺「お前の身体目当てならこんなにまでしてない。」
俺の中に、陵介に対する父親的な気持ちが芽生えてた。
陵介「でも…」
陵介は泣き出した。
俺は陵介を抱きしめていた。
俺「不思議なんだ。お前は俺の生き写しみたいで、血の繋がった息子の様に思える。」
陵介「憲さんに何も出来てなくて良いの?」
俺「良いさ、お前が側に居てくれたらそれで良い。」
陵介「彼氏で無くて良いの?」
俺「俺の事嫌いか?」
陵介「嫌いじゃない、好きだよ、でも仕事では出来てたのに、出来ないから。」
俺「陵介の親になった気持ちで居る。お前は?」
陵介「うん、そうだよ。俺もそう。絶対にずっと一緒に居たい人。」

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