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アルバイト(7)
記事No.261 - 投稿者 : アロエ - 2015/10/21(水)16:48 - [編集]
撮影が始まった。
田辺という名前らしい男が照明を、そしてもう一人の男がビデオカメラを担当する。山岡はそんな二人の背後に位置し、特に何をするという訳でもなく、まるで撮影監督がごとくパイプ椅子に座っていた。 「二人とも、まずはベッドに座って」 山岡が、最初にそう指示を出す。 渉と秀平は、言われるがままにベッドの端へと並んで腰を下ろす。 カメラが、そんなサッカー部のユニホームを着た二人の少年へと向けられる。 今まで経験してきたどんな撮影よりも、渉にとって過酷で残酷な試練であった。男達の金儲けのために、己の尊厳を、そして親友との友情までもが踏み躙られようとしている。 「ほら、お互いもっと密着して」 二人へと、山岡が言ってきた。 座ったまま、渉と秀平はにじり寄る。 距離が詰まり、互いの肩がかすかに触れ合う。なぜか今は、そんな秀平の存在と感覚を、渉は過剰なまでに意識させられてならない。この諦めと絶望の中で、今は横にいる秀平だけが唯一心の支えであった。 わずかに、渉は秀平へと顔を向ける。 俯いたまま、秀平は緊張に表情を強張らせていた。膝の上に置いた手を、強く握り締めている。拳が、小刻みに震えていた。押し潰されそうになるこの状況の中で、懸命に自らを保とうとしている秀平の健気さが、渉にもひしひしと伝わってくる。 (秀平……) 親友の名を、渉は心の中で呟く。 この狂気の世界へと巻き込んだ張本人が、今自分の傍にいる。だが渉は、不思議と秀平への怒りや憎しみは湧いてこない。山岡の卑劣さを思い知らされ、むしろ裏切りを強いられた秀平が哀れでならなかった。 「じゃあそのまま、二人で身体を撫で回し合おうか」 山岡から、指示が出される。 いよいよかと、渉は覚悟を決めるしかなかった。喜びも苦しみも分かち合ってきた親友と、これからカメラの前で痴態を演じなければならない。 渉へと、秀平が顔を向けてきた。 出された指示に対し、こちらの反応を窺う様な眼差し。今さら、山岡の命令に逆らう事など出来ない。だがそれでも、いざ渉を前にして秀平は行動を躊躇っている。 (やるしかないんだ……そうじゃなきゃ、何も終わらない……) 迷っている余地などなかった。この試練を果たしさえすれば、自分達は解放されるのだ。山岡達の満足がいく映像が撮れれば、また明日から普通の生活に戻れる。そのためにも、今は彼らの惨めな見世物に徹するしかない。 渉は、自分が秀平をリードする事を決意する。 秀平へと、渉は腕を伸ばした。 右手が、秀平の胸の辺りへと触れる。シャツの上からだが、熱い体温と激しい心臓の鼓動が鮮明に感じられる。 渉の行為に、秀平は狼狽の色を浮かべはしたものの、身体を避けたりはしなかった。むしろ渉が最初の行動に踏み切った事で、秀平もまた覚悟を決めたとばかり、こちらへと手を伸ばしてくる。 秀平の掌が、渉の胸に置かれた。 (俺の、する通りにして) 渉は視線で、秀平へとそう訴えた。 胸から下腹部にかけ、渉はゆっくりと手を動かしていく。 それに応えて、秀平も手を動かし始める。 緊張でぎこちない動作ながらも、山岡の指示通り、渉と秀平は無言のまま互いの身体を撫で回していく。 そんな少年達の行為へと、終始ビデオカメラが向けられる。照明のライトが、ベッドに座る彼らを照らす。 「二人とも、大事なとこを忘れてないかい?」 やがて、山岡が意味ありげに言ってくる。 何を求められているのか、今さら分からない渉と秀平ではなかった。一度覚悟を決めた以上、躊躇ったところで何の意味もない。 ゴクリと、渉は生唾を飲み込んだ。 秀平もまた、視線を渉の下半身へと向けてくる。 互いの腕が交差し、それぞれの股間へと掌が覆い被さった。 ハーフパンツの上から、その部分を揉み解す様に二人の指が動かされていく。 加えられる圧力と刺激に、ゾクッと震えそうになる感覚が、渉の中を駆け巡る。だが、かといって感情が昂ぶるという訳ではなかった。気心の知れた相手と互いの恥部を弄り合いながら、何ともいえない羞恥と居た堪れなさを感じてならない。 秀平とて、その気持ちは同じであろう。渉に対して顔を伏せながら、戸惑った様子で行為をただ機械的に続けている。 渉も秀平も、気まずい雰囲気の中で行為を続けるしかなかった。 「触りっこしながら、キスをして」 そんな味気ない光景を眺めていた山岡が、すかさず命じてくる。 キスという言葉に、渉と秀平は固まってしまう。行為の単純さとは裏腹に、精神的な苦悩が重く圧し掛かる。 戸惑う二人の姿に、山岡は軽く笑みを浮かべた。 「ほら、早く。男同士で、何をそんな恥じらっているんだい?」 渉達へと、山岡はしだいにその加虐性を露骨にさせていく。 やるしかないのだと、渉は自らへと言い聞かせた。だが親友との同性愛的な行為を強いられる事に、今まで山岡と体験してきた撮影とはまるで違った屈辱と辛さが、渉の心を激しく苛ませる。秀平との純粋な友情が、ことごとく穢されていく。 するとその時、秀平の左腕が渉の後頭部へと回されてきた。 秀平が、優しく渉を抱き寄せる。 そんな秀平の行動に、渉は息を呑んだ。 「秀平……」 「いいか?」 「………」 今まで萎縮しきっていた秀平が、真剣な眼差しを向けてくる。躊躇っている渉に対し、今度は自分がリードするからと、秀平の強い意志が伝わってきた。 秀平へと、渉は無言で頷く。 そんな渉へと、秀平が静かに顔を接近させてくる。 震えそうになる身体を、渉は懸命に堪えた。感情を押し殺し、渉はそのまま秀平に身を委ねる。瞼を閉じた。 真っ暗な視界に、恋人の顔が浮かぶ。 (沙希……ごめん……) 恋人の名を、渉は呟いた。閉じた瞳が、涙で熱くなっていく。 秀平も瞼を閉じ、顔を傾けて一気に最後の距離を詰める。 二人の唇が重なり合った。 押し当てられた秀平の唇が、ブルブルと震えている。瞼を閉じたまま、その柔らかな感触で互いの存在を感じ合う。 (俺……秀平と、キスしてるんだ……) 自分達はついに、越えてはならない一線を越えてしまったのだ。嫌悪というより、そんな背徳感が渉の中で渦巻いていく。 秀平が、唇を離す。 わずかに、渉は瞼を開ける。 そんな渉を、秀平が泣きそうな顔で見ていた。 渉も、涙が溢れそうになってしまう。 「もっと、続けて」 だがそんな二人へと、山岡から容赦ない命令が続く。 秀平へと、渉はまた無言で頷いた。もう後戻りは出来ない。秀平と堕ちるところまで堕ちよう。渉の中で、何かが吹っ切れた。 二人の心が共鳴しているかのごとく、秀平もそんな渉へと表情を引き締める。 渉へと、再び秀平が顔を近付けてきた。 もはや躊躇いなく、渉は秀平を受け入れる。 また、唇が触れ合った。 カメラや山岡の存在を、渉は忘れようと努める。今はただ、秀平の存在を感じる事だけに専念しようとした。 今度は、秀平がすぐにやめる事はなかった。息継ぎをしながら、何度も啄ばむ様に渉へと唇を押し当ててくる。それにともない、しだいに秀平の呼吸が荒くなっていく。股間へと触れていた手も、その動きを活発にさせていく。 そんな秀平を前にして、渉もまた苦しいまでに胸が高鳴ってきてしまう。 (今だけ……今だけだから……明日になれば、また秀平とは普通の友達に……何もかも全部、忘れるから……) 渉の中で、理性が急速に無力化していく。 しだいに秀平は、貪る様に荒々しく、渉の唇を求め始める。 「秀平君が一生懸命頑張ってるんだから、渉君ももっと積極的にならなきゃ」 すかさず、山岡が言ってきた。 渉は、口元を緩める。 その間隙へと、秀平が舌を差し込んできた。 渉は何ら抗う事なく、秀平のへと自らも舌を絡ませていく。 「んっ……んぅ……」 「はぁ……んんっ……」 二人の少年の荒い吐息と、唾液の摩擦し合う音が、密室の空間に響き渡る。 (秀平……俺、もう我慢出来ない……) 濃厚なディープキスを繰り返しながら、渉は心の中で親友へと訴えた。 秀平の手で弄られる股間が、急速に熱くなっていく。抑え難い衝動ともどかしさに、秀平の存在をいっそう求めてやまなくなってしまう。 そんな秀平もまた、己の中で剥き出しとなっていく欲望の息吹を、渉の掌へと鮮明に感じさせていた。 「さっきまであんな嫌々だったのに、なかなかいいムードになってきたじゃないか。君達、まるで本当の恋人同士みたいだね」 山岡が、そんな二人を眺めながら言ってくる。 だが渉も秀平も、山岡の茶化す様な言葉などもうどうでもよかった。舌を絡ませながら、互いの暴走する欲望をひたすら慰め合う。 渉と秀平の没頭する姿に、山岡は呆れた様に苦笑する。 「もうそんなイチャイチャする程度じゃ、物足りなくなってきただろ?」 その言葉に、二人の動きが止まった。 二人はようやく、唇を離す。そして渉と秀平は、カメラの後方で座す山岡へと、無言で眼差しを向ける。 「秀平君、ベッドに仰向けになって」 そう、山岡が指示してきた。 言われるがまま、秀平はベッドの上で仰向けになる。 ハーフパンツの布地が、すでに大きく盛り上がっていた。その部分に、渉の視線は自然と釘付けになってしまう。 「それじゃあ渉君は、秀平君のをカメラに見せてあげて」 山岡の言葉に、渉もベッドへと身を乗せる。 膝立ちの姿勢で、仰向けになった秀平の姿を見下ろす。そして秀平が穿くハーフパンツへと、手を伸ばす。 秀平の下半身へ、カメラがしっかりと向けられていた。 ウエストの両端を、渉が掴む。 渉の行動に応えるかのごとく、秀平がわずかに腰を浮かせてきた。 そのまま渉は、秀平が穿いているハーフパンツを一気に引き下ろす。 布地に押さえ付けられていた反動で、秀平の怒張したペニスが勢いよく跳ね上がり、その姿を露わにさせる。 親友の猛々しい存在に、渉の股間がそれだけで疼いてきてしまう。 「君に興奮して、秀平君もうこんなギンギンにさせちゃってるよ」 「………」 「こんなままじゃ、秀平君が可哀そうだね。渉君がもっと、気持ちいい事をしてあげないと」 山岡が、行動を促す。 そんな渉へと、秀平もまた切実な眼差しを向けてくる。 渉は、無言で右手を伸ばした。激しい心臓の鼓動が全身へと響くかの様に、腕が震えてきてしまう。 そそり立つ秀平の熱い幹へと、渉の指が絡められていく。 (すごい……これが、秀平の……) 力強い脈動が、手に感じさせられる。渉に軽く触れられただけで、すでに秀平の呼吸は荒くなり始めた。充血した亀頭が、その鈴口を潤ませる。 渉はゆっくりと、秀平のペニスを扱いていく。 「あぁっ……」 切ない喘ぎを洩らしながら、秀平は腰を震わせた。 あのビデオで見た秀平が、目の前にいる。サッカー部のエースであり、監督からも期待されてキャプテンに指名されたチームメイト。いつも自分の一歩先を進むこの親友に、時には嫉妬を抱いた事さえあった。だがその秀平が今、ペニスを弾けんばかりに勃起させながら、自分へと快楽を訴えてきている。 渉はそんな秀平を見つめながら、しだいに手の動きを大胆にさせていく。 快感に耽溺する秀平の表情と、その姿へと無言で向けられるビデオカメラ。あまりに残酷な光景。だが秀平のペニスは、渉の手によって先走りの滴を止めどなく溢れ出させる。 「どうだい、秀平君?」 やがて、秀平へと山岡が言葉を投げ掛ける。 「き、気持ちいいです……」 「手でされるだけで、満足かい?」 「………」 「渉君に、もっと色々してもらいたいだろ?」 「はい……」 もはや肥大化する欲求を抑えきれないとばかり、秀平はそう答えた。 山岡が、渉へと視線を向ける。 「秀平君は、そう言ってるよ?」 「………」 「どうすれば、いいと思う?」 「それは……」 「分かってるだろ?」 「………」 「口で、してあげて」 事もなげに、山岡が言ってきた。 だがその命令に、むしろ渉の中でいっそう感情が昂ぶっていく。山岡に促される形で、渉の中で倒錯の欲望がその暴走を正当化される。 渉は、秀平の股間へと身を屈めた。 顔を近付けると、それだけで秀平のペニスが勢いよく脈打つ。 眼前に、秀平の欲望が迫る。雄の匂いが漂う。汗とカウパーの混じったそれが嗅覚を刺激し、今はそれすらも渉の欲情をいっそう掻き立てていく。 もはや葛藤すらなく、渉は秀平の逞しい陰茎を大胆に咥え込んだ。 「はぁっ……んっ……!」 秀平の吐息と喘ぎが、より淫靡さを増していく。 先走りの苦い味が、口の中に広がる。溢れ出る唾液と共に、渉は躊躇いなく飲み込む。そしてさらに深々と、秀平のペニスを渉は受け入れていく。 熱い欲望が、口腔で何度も跳ねた。精力を漲らせたその存在を頬張りながら、渉のペニスもまた激しく脈動する。 やがて渉は、ゆっくりと頭を上下に揺らしていく。 「うぅっ……んぁぁ……あぁっ……」 秀平は悶え、何度も身を捩じらせた。 「ほら、もっと秀平君を悦ばせてあげないと。渉君のテクニック、そんなもんじゃないだろ?」 野次る様に、山岡が言ってくる。 渉は、一旦ペニスを口から離した。行為を止めた訳ではない。今度は舌を突き出しながら、反り返る秀平の裏筋へと這わせていく。 根元から、渉はゆっくりと舐め上げる。 「んんっ……!」 秀平が、渉の髪を掴んできた。 敏感に反応する秀平の姿に、渉の中で気持ちがいっそう高揚していく。山岡の要求など、もはやどうでもよかった。今はただ、秀平を悦ばせたい一心で、さらにペニスへと舌を繰り出していく。 裏筋だけでなく、睾丸や亀頭へと、渉の舌が濃厚に這わされる。 「あっ……んぅぅっ……んぁっ……」 秀平は喘ぎ、腰を上下に激しく揺らしてきた。もはやただ受動的でいるのは耐えられないとばかり、渉の顔面へ己のペニスを擦り付け様としてくる。 どうやら秀平の限界は、間近であった。 渉は再び、秀平のペニスを咥え込む。ラストスパートとばかり、渉は秀平のを口で激しく扱いていく。 「渉っ……!」 秀平は、背筋を大きく仰け反らせる。 (いいぞ……このまま、全部出せよ……) 迷いはなかった。ペニスを深々と咥えながら、親友の絶頂へと渉は誘っていく。 「い、イクッ……もう、出るっ……!」 やがて秀平が、涙声で叫んだ。 「渉君、ストップ」 だがその寸前で、山岡が声を上げる。 ハッと、二人は我に返った。 正気に戻った渉が、思わず動きを止めてしまう。 もう後少しというところで、爆発間際であった秀平の欲望は、その刺激を中断させられた。渉の口の中で、苦悶するかのごとくペニスが激しく脈打つ。 「せっかく、お互い乗ってきたんだ。今秀平君がスッキリして冷静になっちゃうと、渉君だって困るだろ?」 ここにきて射精を許されない秀平が、表情に苦渋を滲ませる。 だが、これが撮影である以上、全ては山岡の描くシナリオに従わねばならない。秀平の心情を理解しながらも、渉はやむなくペニスから顔を上げる。 「じゃあ、そろそろ渉君も脱ごうか」 山岡の言葉に、今度は渉へとカメラが向けられた。 もはや渉は、完全に山岡の指示されるがままとなってしまう。穿いていたハーフパンツを、あっさりと引き下ろす。カメラへと、その下半身をありありと曝け出す。 「ほら、秀平君にもちゃんと見せてあげて」 仰向けになったままでいる秀平へと、膝立ちの姿勢で渉はにじり寄る。 露わにされた渉のペニスは、秀平のに負けじとばかり勢いよく反り返っていた。溢れ出る先走りが、その若く逞しい陰茎を伝って垂れ落ちていく。 そんな渉を、秀平が無言で見上げる。 (俺のチンポ……秀平に見られてる……) 秀平の視線に、それだけで渉は身体が熱くなってきてしまう。ペニスが、何度となく跳ね上がった。 そんな渉の姿へと、秀平の瞳もギラギラと輝く。、 「君と違ってまだ何もされてないのに、渉君はもうあんなに我慢汁を垂らしちゃってるね。どうしてだと思う?」 秀平へ、山岡が問うてくる。 「その……興奮、してるから……」 「何で、そんなに興奮してるんだろ?」 「………」 山岡が、渉へと視線を向け直す。 「渉君、どうしてなのかを、秀平君に教えてあげて」 もはや、今の自分に何ら守るべき体面などなかった。渉はありのままを、山岡へと訴えずにはいられない。 「秀平の……チンポを、しゃぶってて……興奮しました……」 満足そうに、山岡が笑みを浮かべる。 「だって、秀平君」 「………」 「渉君は、君のオチンチンが大好きらしいよ」 「はい……」 「君は、どうなんだい?」 「お、俺……」 「正直に、言ってごらん」 「俺も……渉のチンポに……興奮します……」 山岡へと、秀平はそう答えた。 秀平の言葉に、渉の呼吸も荒くなっていく。 火照った身体と欲求を持て余す少年達を、山岡はしばし無言で眺める。 ベッドの上でペニスをそそり立たせながら、渉達は次なる山岡の指示を待つ。今や山岡の言葉を待ち望んでならない。 「次は、どんな事をしたい?」 やがて、渉達へと山岡は問うてきた。 指示されるがままに従っていた二人は、唐突な質問に困惑してしまう。 渉と秀平は、互いに顔を向け合った。秀平の表情には、もう嘆きも苦しみもない。その瞳は、渉にいっそうの快楽を切実に求めてきたいる。 「それじゃ、今から自由にさせてあげるよ。後は君らに任せるから、二人で思いっきり気持ちよくなりなさい」 ハッと、二人は息を呑む。 山岡は、それ以上何も言わなかった。 展開を丸投げする形に、撮影役の男達も不安を抱いたのであろうか。山岡へと、戸惑い気味に顔を向ける。 そんな仲間に対し、山岡は余裕の表情を浮かべていた。 沈黙の中、横になっていた秀平が身を起こす。 秀平と渉は、無言のまま見つめ合う。自分達へとカメラが向けられている。彼らの満足がいく作品でなければならないという義務もあった。だがそれ以外、もう今の自分達には何の制約もない。 やがて、渉へと秀平が身を迫らせてくる。 互いの身体が、触れ合う。 背中へと、秀平が両腕を回してきた。 「秀平……」 そんな秀平を、渉もまた腕で包み込む。 「今だけ……今だけだから……」 渉の耳元で、秀平がそう囁く。親友の中に残されていた最後の理性が、渉へと許しを乞うかの様であった。 だがそんな秀平へと、渉はいっそう強く身体を密着させる。 「分かってる……俺、お前を責めたりなんかしない……」 もはや、ここから先は山岡の強制ではない。自分達の意思で、欲望に塗れた雄と化さねばならないのだ。行く着く果てに何があろうとも、己の中で始まった暴走をもう二人は止める事など出来なかった。 「ごめん……もう、我慢出来ない……」 秀平が、苦しげに呟く。 渉は、静かに頷いた。 (迷う必要なんかない……もう俺ら、堕ちるとこまで堕ちたんだから……) 何もかもを、少年達は捨て去る。 そんな二人の姿を、男達が無言で見守っていた。 やがて秀平が、渉の身体を押し倒す。 されるがままに、シーツの上へと渉は仰向けとなる。 秀平が、そんな渉へと覆い被さってきた。 肌だけでなく、互いの怒張したペニスが密着する。熱い息吹を感じ合いながら、再び先走りが溢れ出し、二つの幹を濡らしていく。 ごく自然に、渉と秀平は唇を重ねていた。 カメラも山岡達の視線も、そしてこの映像が商品となって、これから何人もの人間の手に渡るのだという事実も、今はどうでもよくなってしまう。秀平と舌を絡ませ合い、二人だけの世界へと没頭していく。 濃厚なディープキスに合わせて、秀平が腰を揺らしてきた。 それに合わせて、渉も腰を大きく突き上げる。 互いの口腔へと舌を繰り出しながら、二人は腰をリズミカルに動かしていく。それぞれのペニスが、腰の動きと共に強く擦れ合う。 (秀平……もっと……!) 快楽への衝動が、止めどなく渉の心を掻き立てる。 荒々しい吐息を洩らしながら、秀平はより激しく渉の身体を求めてきた。首筋や鎖骨の辺りへと、舌を大胆に這わせていく。 「んっ……あっ……んんぅ……」 痺れる様な性感が、渉の中を駆け巡る。 秀平が、さらに渉のシャツをたくし上げた。 露わとなる胸板や下腹部へと、秀平は顔を埋めてくる。引き締まったラインと張りのある素肌が、男の唾液によって濡らされていく。 その愛撫に、渉は何度も身を捩じらせた。 エスカレートしていく二人の行為に、最初はどこか嘲笑する様に眺めていた山岡達であったが、しだいにその表情は真剣なものへと変わっていく。いつしかこの密室の空気が、渉と秀平によって支配され始めていた。 秀平が、さらに後方へと身体をずらす。 目の前に、渉のペニスがそそり立つ。二人の先走りが混ざり合った粘液に、その逞しい陰茎がねっとりと潤んでいた。 秀平は手でゆっくりとその幹を扱きながら、躊躇いなく咥え込んでいく。 「あぁっ……秀平……!」 深々とペニスを含ませながら、秀平は頭を上下に揺らしてきた。 口の中で、唾液と体温がペニスを包み込む。舌と口蓋で、裏筋や亀頭が擦り付けられる。瞬く間に、熱い高まりが渉の中で込み上がってきてしまう。溜まりに溜まっていた絶頂への勢いが、渉の中で加速していく。 だが、そこで秀平の行為は中断されてしまう。 限界にまで膨張したペニスを残し、秀平が身体を起こす。 「渉……」 息を乱しながら、秀平が渉へと眼差しを向けてきた。渉の前で、秀平のペニスもまた力強く脈打っている。 秀平が何を求めているのか、もはや考えるまでもなかった。 無言のまま、渉は自らの両足を抱き上げると、秀平へ向けて大きく開脚させる。 収縮した蕾が、親友の眼前に晒された。 「俺……大丈夫だから……」 そう、渉は呟く。 渉の言葉に、秀平は即座に己のペニスを掴む。すでにその標的へと、視線は釘付けとなっている。 (秀平に……俺、今から犯されるんだ……) 後悔はなかった。それがどれ程おぞましい行為であったとしても、もはや渉に自制を呼び起こすものはない。むしろ、親友のその獰猛な欲望が自らの中で一体となるのだという事実に、肛門の奥がすでに熱く疼いてきてしまう。 秀平が、にじり寄る。 入口へと、濡れた亀頭が触れた。 その熱い感触に、渉の身体が震える。 渉へと、秀平は腰を勢いよく突き出す。 親友の逞しい一物に貫かれる、その瞬間を目の前にして、渉はいっそう両脚を広げた。 だが、ペニスはそのまま蕾の表面を大きく滑り上がる。 すかさず、秀平はまた腰を動かしてきた。 何度となく、秀平が腰を突き出す。そのたびに、先走りや渉の唾液に塗れたペニスは、肌の上を虚しく滑るだけであった。亀頭や裏筋で、渉の入口が擦り付けられる。秀平は蕾を刺激してくるも、なかなか内部へと押し込んでこようとはしてこない。 「は、早く……秀平のが、欲しい……!」 焦らす様な秀平の行為に、堪らなくなった渉が思わず叫ぶ。 秀平の動きが止まる。そして改めて、ペニスの先端をその蕾に狙い定めてきた。緊張しているのか、表情は引き攣っている。 大きく、秀平は深呼吸した。 「いくぞ」 亀頭を押し当てながら、今度は慎重にゆっくりと、渉へと身体を傾けていく。 圧し掛かる秀平の体重と共に、蕾へと圧力が増す。濡れた亀頭が、収縮したその入口を押し広げていく。 「あぁっ……!」 渉は甲高い声を上げた。 滑りを帯びたペニスが、ゆっくりと渉の中へ埋められていく。 内壁が、侵入してくるペニスを強く締め付ける。秀平の身体が、ガクガクと激しく震えた。だがそれでも、いっそう渉へと身を傾け、さらに深く己の欲望を捻じ込んでいく。 「渉の中……は、入ってく……」 秀平の背中へと、渉は両腕を回した。秀平の身体を、自らへ抱き寄せる。 「くっ……んぁっ……うぅぅ……」 熱い塊が、内部を容赦なく蹂躙していく。脳天へと突き上がる様な強烈な刺激。思わず涙も溢れ出してきてしまう。 (秀平と……俺、今一つになってるだ……) 苦悶に表情が歪むも、不思議な高揚感が渉の心を躍らせる。 大金の誘惑に負け、初めて山岡に己の肛門を差し出した日から、まだそんな月日は経っていない。苦痛と屈辱に涙を流し、それでも必死に耐えながら男に犯されたあの日。だが今は違った。本当に信じ合う存在にその肉体を捧げ、山岡によって何度も穢された身体が一気に浄化されていくかの様でさえあった。 やがて、秀平のペニスは渉の中へと完全に挿入される。 「う、動かすぞ……」 秀平は、腰をゆっくりと引き上げた。 埋められていたペニスが、半分近く外へと戻る。だが次の瞬間、秀平はまた勢いよく渉へと腰を突き出した。 内壁と強く摩擦しながら、渉の中へペニスが深々と押し込まれる。 「ひぁぁっ!」 渉は、大きく背筋を仰け反らせた。 そんな渉へと、さらに何度も秀平が腰を動かしていく。 「んぅっ……あぁっ……んぁぁっ……!」 悲鳴にも似た渉の喘ぎが、室内に響き渡る。 熱い痛みと痺れが混ざり合うかのごとき感覚が、秀平のピストン運動に合わせて渉の中で掻き立てられていく。だがそんな中で、渉のペニスは猛々しくそそり立つ。むしろ秀平に犯されながら、肛門の奥から股間へと性感の疼きが勢いよく駆け巡る。 いつしか渉は耐え切れず、己のペニスを掴み激しく扱き始めていた。 荒々しい雄と化した少年達が、快楽をただひたすらに求め合う。 そんな光景に、撮影役の男達はすっかり魅入っていた。 「すげぇ、こいつら本気で盛り合ってますよ」 二人の姿をライトで照らしていた田辺が、唖然とした表情で山岡へと呟く。 そんな田辺へ、山岡が視線を向ける。 「見てるだけじゃ、満足出来なくなってきたか?後でゆっくり楽しませてやるから、今はまだ理性を保って仕事に集中してくれよ」 「俺、あの渉って奴の相手させてもらっても、いいっすか?」 「いいぞ。俺はちょうど、秀平の身体が恋しくなってたところだからな」 山岡と田辺が、邪悪な笑みを浮かべる。 だがそんな男達のやり取りはおろか、その存在さえも、今の渉と秀平の意識からは完全に消え去っていた。 秀平はいっそう、腰の動きを激しくさせながら、渉の中を責め立てていく。 「イクッ……俺、イクッ……!」 肛門を犯され、己のペニスを一心不乱に扱きながら、渉は叫んだ。 「渉……俺も……もう、限界……!」 秀平は、大きく腰を突き上げた。 直後、秀平の腰が激しく痙攣する。 渉の中で、秀平の欲望が一気に爆発する。勢いよく吐き出された熱い液体が、内部に充満していく。 「あぁっ!」 そんな秀平を前にして、渉もまた大きく身を震わせた。そして扱き続けていたペニスから、大量の白濁が噴出する。山岡との撮影から溜まりに溜まった少年の欲望は、解き放たれるや渉の顔にまで飛び散った。 二人の少年は、一気に脱力していく。 全てが終わった。 解放感と疲労、そして射精を終えてもなお続く絶頂の余韻の中、二人は強く互いの身を抱きしめ合う。 そんな二人を、カメラが撮影し続けていた。 (秀平と……イったんだ……) 渉の思考が、しだいに冷静さを取り戻していく。自分と秀平が今何をしたのか、その事実を振り返るよりも先に、涙が流れていた。 秀平もまた、そんな渉へボロボロと涙を落す。 正気を取り戻すにつれ、残酷な現実へとまた二人は引き戻されていく。 やがて秀平が、ゆっくりと身体を起こす。 渉から、ペニスが引き抜かれる。 弛緩した蕾から、秀平の白濁がドロドロと溢れ出てきた。カメラが、その光景へしっかりとレンズを向けてくる。 「よかったよ。二人とも、最高だ」 椅子から立ち上がり、山岡が二人へと拍手をしながら言ってきた。 やがてライトの光が消される。カメラも、電源のランプが消えた。どうやらこれで、撮影は終了したらしい。 だが渉も秀平も、茫然自失のまましばらくベッドから動けなかった。 そんなベッドの端へと、山岡が腰を下ろしてくる。 「本当に御苦労様、文句なしの頑張りだったよ」 山岡はすっかり上機嫌だった、 最も、褒められたところで何の嬉しさも達成感もない。目の前の男に利用されるだけ利用され続けた渉と秀平は、無言のまま顔を俯ける。 だが山岡に、二人の心境を汲み取る様子はなかった。 「どうだい、秀平君。立派な男になれた感想は?」 憔悴しきった秀平へと、構わず山岡は問い掛ける。 「男……?」 その言葉に、思わず渉は怪訝に顔を上げた。 秀平は、顔を伏せたまま黙り込む。 そんな渉へと、どこか嘲笑う様な視線を、山岡は向けてくる。 「渉君は、知らなかったのかな?秀平君はね、ついさっきまで童貞だったんだよ」 「えっ……」 「君と違って、秀平君は女の子に奥手でね。好きな子がいるらしくて、昔からずっとその彼女の事を一途に想ってたんだって」 「………」 「俺が秀平君なら、こんなモテそうなルックスや部のエースというステータスもあるんだから、さっさと他の子に乗り換えて青春を楽しもうって気持ちになるんだけどね。だけど秀平君は、他の子には全く眼中になかったらしいよ。今時めずらしいよね、こんな純真な気持ちを持ち続けてるなんて」 秀平へと、渉は顔を向けた、 だが、秀平に反論する様子はない。居た堪れなさに表情を隠そうとしてか、いっそう顔を深く俯ける。 どうやら、山岡の言っている事は本当なのだろう。だが渉にとって、その話は初めて知るものであった。確かに今まで、秀平から浮いた話や噂を聞いた事はない。サッカーに打ち込み、恋愛には興味がないものだとばかり思っていた。 そんな秀平を余所に、山岡は言葉を続ける。 「確かその片想いの子は、同じ高校のクラスメートで……」 「やめろ!」 山岡の言葉を遮る様に、突然秀平が叫ぶ。 いきなりの豹変に、渉も驚かされた。 「沙希って子の名前を、渉君に聞かれちゃうのがそんなに嫌なのかい?」 「っ……!」 その名を耳にした瞬間、渉の表情が一気に引き攣る。 「小学生じゃないんだから、好きな子の名前を友達に知られちゃうくらい、別に何の問題もないだろ?」 飄々と言ってくる山岡に対し、渉も秀平も顔面蒼白となってしまう。 「おや、どうしたんだい?」 渉へと、山岡がわざとらしく問い掛けてくる。 「べ、別に……」 山岡から顔を背けるも、渉は動揺を隠せなかった。 二人の様子を眺めながら、山岡が残酷な笑みを浮かべる。 「そういえば秀平君、その片想いの子は結局別の男の子と付き合っちゃったとか、以前のインタビューで言ってたね。しかも相手は、同じサッカー部の友達で、一時は殺したい程そいつの事が憎かったとか、答えてなかったけ?」 その言葉が、渉の心をいっそう抉っていく。 「違います、あれは本気で言った訳じゃありません!」 だが秀平は、山岡の言葉に必死になって反論してきた。 「何を、そんなムキになってるんだい?」 「………」 「まるで目の前に、その張本人がいるみたいな反応だね」 山岡はそう言いながら、顔を青ざめさせる渉へと視線を向ける。 「安心しなって。こんな男同士の雄臭いビデオを、そんな彼女とラブラブな恋敵が見る訳ないじゃないか。ねぇ、渉君」 「………」 何も答えられず、渉は秀平へ顔を向ける事も出来なかった。 「まぁ何はともあれ、渉君のお尻の穴で無事に童貞を卒業出来たんだ。これでようやく君も、男としての自信が付いただろ?」 耐え切れなくなった秀平の瞳から、涙が止めどなく溢れ出る。咽び泣く声が、静まり帰った室内に響く。 「おやおや、感動して泣いてるのかい?」 そんな秀平へと、山岡が嘲笑う様に言ってくる。 「もうやめろ!」 渉は叫んだ。 苦笑しながら、山岡はベッドから立ち上がった。 「あんな激しいセックスをした後だってのに、若いだけあってホントに元気がいいね」 そう言い残して、山岡は二人を置いてベッドから離れていく。 「よし、撮影は終了だ。今撮った映像のチェックをしよう」 山岡はそのまま、テレビの置かれた向かいの隅へと移動する。 仲間の男達も、ビデオカメラを持って続く。 ベッドには、渉と秀平だけとなる。 しばらく、渉は何も言えなかった。互いにあられもない姿のままであったが、その場から動く事も出来ない。 (あんな男に……思い知らされるなんて……) 山岡によって、秀平との絆はボロボロに切り裂かれた。だがその怒りよりも、親友だと思っていた相手の気持ちを、自分は何も知らないでいた。その悔しさと恥ずかしさが、渉の中で渦巻いていく。自分の恋人だと思っていた相手と仲良くしている姿を、秀平はどんな気持ちで見ていたのか。それを考えると、渉はもう秀平をフォローする言葉すら見つからない。 「ごめん……」 その時、秀平が掠れた声を洩らす。 恐る恐る、渉は秀平へと顔を向けた。 「秀平……その……」 「俺……最低だよな……あの時、あいつに誰か紹介しろって言われて……渉の顔が、一番に浮かんで……」 「………」 「諦めようって……必死に思ってたのに……やっぱ、俺……お前に嫉妬してたんだ……」 肩を震わし、涙声で秀平は言ってくる。 山岡からの辱めではなく、自分の中にあった醜い心と愚かさに、秀平は涙しているかの様であった。だがそんな姿を目の前にして、渉はもう事の真相などどうでもよくなってしまう。 無言で、渉は秀平を抱き締めた。 「もういいんだ」 秀平へと、渉は優しく囁く。 「渉……」 「これで、終わったんだ。もう何もかも、全部忘れようぜ」 その言葉に、秀平は渉の肩へと顔を埋めた。 瞼を閉じ、渉も秀平の肩へと顔を埋める。親友の体温と鼓動を感じながら、その身を包み込む腕にいっそう力を入れていく。 (そうだ……もう、終わったんだ……明日から……また、やり直せばいいんだ……) ただ前だけを見よう、渉はそう決意するのだった。 COPYRIGHT © 2015-2024 アロエ. 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作者 アロエ さんのコメント 遅くなりました。もう少しで終わると思います。
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