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夏祭り〜ある少年達の成長の記録〜@
記事No.281 - 投稿者 : アロエ - 2020/10/04(日)16:47 - [編集]
とある地方の集落、宵宮祭の夜。
土地の氏神を祭る社。普段は人気の少ない寂れた境内も、今宵は日が暮れてもなお地元の人々で賑わい、境内各所の石灯籠や設置された提灯に明かりが灯され、夜の社をどこか幻想的に照らしていた。現代では神輿が登場する本祭を控えての前夜祭程度に思われがちであるが、本来は祭神を神社の本殿に迎える重要な神事の夜である。 夕刻から始まった宵宮の巡行。土地の男衆達が威勢のいい掛け声を上げながら集落を練り歩き、やがて終着の地であるこの神社へと到着する。この土地に生まれた男子は、皆中学を卒業すると村の祭りに参加するのが習わしであった。紺色の法被に純白の足袋と六尺褌を締め、山車を引く者、祭礼幟を掲げる者、太鼓を叩く者など、各々の役割を担った行列が鳥居を潜って入ってくるのを、境内で女性や年寄り達が出迎える。現代では土地の若者も少なくなる一方ではあったのだが、それでもこの田舎の集落が一年で最も賑わい活気のある二日間であった。 巡行を終え、宮司が本殿へと入り祭神を迎える神事を執り行う。しばらくしてその宮司が本殿から出てきて、宵宮の一日はようやく終了となる。この後役員の中には寝ずの番で神社に残る者もいるが、大半は明日の本祭に備えて解散となり帰路に就く。 「さてと、終わったし俺らも帰ろうぜ」 皆が散会する中、そう言って中岡健史は両手を組んで腕を大きく天に伸ばし、身体の緊張を解す。 健史が呼び掛けた相手は、幼馴染みである北川慎一と下沢翔。同じ集落に生まれ幼い頃から一緒であるだけに、互いに気兼ねない仲である。この年高校生になった健史達は、宵宮に初めての参加であり、そして明日の本祭でも初めて大人神輿を担ぐ予定であった。 「子供の頃から見てきた巡行だけど、やっぱりただ見物するのと参加するのじゃ全然違うよね、掛け声ずっと出してて、喉痛くなっちゃったよ」 「これでも昔に比べたら、人も少なくなって規模は小さくなったらしいけどな。今年の初参加も俺ら三人だけだし」 慎一に続いて、横にいた翔が言う。 「これからどうなるんだろ。せっかく地元の祭りなんだし、廃れていくのは何か寂しいよね」 「その言葉、つい何時間か前の慎一に聞かせてやりたいよ」 そんな慎一の姿をマジマジと眺めながら、翔がからかう様に言ってくる。 健史もまた、慎一へと笑みを浮かべた。 「ホント、最初はあんな恥ずかしそうにしてたのに、もうすっかりその格好に馴染んでるみたいだな」 「べ、別に……それは二人も同じだろ!褌なんて初めてだったし……」 健史と翔の指摘に、慎一は慌てて反論する。 祭りに参加する男として、三人もまた法被に褌という出で立ち。 この土地の祭りに参加する若者にとって、最初の試練がこの姿であろう。法被といっても裾は腰の辺りまでしかなく、外見的に褌姿が丸見えの状態である。特に六尺褌であるため、布地で全体を覆う股間側はまだしも、割れ目以外は完全に露出せねばならない臀部はかなり羞恥を試されるものであった。しかもその姿で集落を練り歩かねばならないのである。見物人の中には同級生の女子などもおり、特に大人しめな性格の慎一など巡行の最初の頃は、顔を真っ赤にさせて俯きながら歩いていた。 「まぁ、ムキになるなって。それに慣れればこういうのも結構いいよな。まさに日本男児って感じだし」 今やすっかり身体に馴染んだ自分の褌を見ながら、健史が言う。 「初めての褌だったけど、まぁこう長い時間経つとさすがに自然とね」 最初の頃の自分を思い出してか、苦笑しながら慎一が言う。 確かに慣れない褌は最初こそ恥ずかしかったものの、威勢のいい掛け声を上げながらの巡行の中で、皆との連帯感や祭りの高揚もあり、いつしかすっかり違和感もなくなっていた。 「高宮達もさ、まんざらでもなさそうな感じで俺らを見てたよな。特に誰かさんみたいなイケメンのプリケツを堂々と拝めるんだから、あいつら今夜の祭りが待ち遠しかったんじゃね?」 同い年の女子達を引き合いに出して、健史は横に立つ翔の臀部を撫でる。 「おい、ふざけるなって」 「いやいや、俺がもし女だったら、今夜の勇ましい翔の姿にますます惚れ直すぜ?」 「気色悪い想像をさせるな」 呆れた表情で、健史の手を払い除ける。 中学までは一緒であったが、それぞれ別の高校に進学したため、こうして三人が顔を合わせて楽しく時間を過ごすのも久しぶりであった。 「君らも早く帰りなさい、明日も早いんだから」 そんな三人へ、村の大人がそう言い残して去っていく。 気が付けば先程までの賑わいはすっかり消え失せ、境内は閑散となっていた。 「ああ、そうだった。そろそろ帰ろうぜ」 健史が改めて言う。 「ごめん、その前にちょっとトイレ行ってきていい?」 すると翔がそう二人に求めてきた。 「おう、早くしろよ」 「鳥居のとこで待ってるね」 「すぐ戻ってくるから」 そう告げて、翔はトイレのある境内奥へと駆けていく。 健史と慎一は境内の出入り口である鳥居の前へと移動し、取り留めのない会話で翔が戻ってくるまでの時間を潰す。 だがしばらく時間が過ぎるも、翔はまるで戻ってくる気配はない。 「なぁ、翔遅くね?」 さすがにしびれを切らし、健史が言う。 「ホント、どうしたんだろ」 慎一も辺りを見渡す。境内にはまだ各所で屯って話している者達がいるものの、翔の姿は確認出来ない。 「たく、どこうろついてんだよ。もう遅いんだし、俺らだけで帰るか?」 「そんな事言わずに、ちょっと探しに行ってくるよ。僕らを残して勝手にどっか行くとも思えないし」 慎一はそう言って、翔を探しに境内の奥へと向かっていく。 「さっさと連れてきてくれよ、明日の本祭は朝一なんだし」 残された健史は、鳥居の台石に腰を下ろして彼らの帰りを待つ。巡行を終えて汗ばんだ肌へ、夜風が心地よく注ぐ。 何気に顔を上げると、夜空は雲一つなく星々が輝いていた。 (あれが北斗七星で……確かあっちはカシオペヤ座だったかな?) 普段は特に興味のない星座ではあったが、こうして特にする事もなく一人で澄み切った夜空を見上げていれば、大雑把な知識と重ね合わせながら自然と星々の観察に夢中になっていく。 「やぁ、健史君」 その時、自分の名を呼ぶ声にハッと注意は地上に戻される。健史はその声の方向へ反射的に顔を向けた。 境内のトイレには誰もいなかった。 (ホント、どこ行ったんだ) 翔を探して、慎一はさらに境内の裏まで足を進めていく。今宵は一晩中明かりが灯されてはいるものの、本殿の裏に回ると一気に暗さが増す。ここから先は社を取り囲む鎮守の森が広がるだけであった。 (まさかこんな夜に、この奥へ行ってる訳ないよな) 翔の身に何か起きたのではと、だんだん心配になってくる。だが慎一はこれ以上先に進むのを諦め、踵を返そうとした。 だがその時、暗い木々の中からくぐもった声らしくものを慎一は耳にする。 (え、誰かいる?) 夜の森ながらも、一度芽生えた不審と好奇心に、慎一は思い切って木々の中へと入っていく。何があるか分からないだけに、自然と忍び足になっていた。だが慎一が足を進めていくと、さらにガサゴソと蠢く様な音が聞こえてくる。明らかに何者かの気配を慎一は感じた。 (やっぱり誰かいる……何してんだろ……) 月明りは木々の枝葉に遮られ、森の中はさらに暗く不気味な世界が広がる。だがそれでも、相手の正体が気になって慎一は足を進めていく。緊張が増していく中、さらに足を忍ばせ接近してみると、慎一の目は密着している様な二つの人影を確認する。 (どうしよ……これ以上近付くと、向こうもこっちに気付いちゃうかも……) 不安ともどかしさの中、慎一はこれ以上の接近を躊躇ってしまう。だがここまで来ると、彼らの発する音や声もかなり明瞭になる。そして慎一が耳を澄まし目を凝らすと、二人が何やら取っ組み合って揉めているかの様に見えた。 「やめて……触らないでください……!」 片方の人影がジタバタする様に動き、かなり狼狽している様子の上擦った声が発せられる。そしてその声は、慎一に何者であるのかをすぐに悟らせた。 (もしかして、あれ翔か?) 探していた相手がすぐそこにいる。だが慎一の足は止まったままだった。暗い木々の中で蠢く翔ともう一人の大柄な人影。考えるよりも先に異様な雰囲気を肌に感じた慎一は、その場に立ち尽くしてしまう。 「安心しろって、そんな酷い真似はしねぇから」 そんな翔へと語り掛ける、男の声。最初は取っ組み合っている様に見えたが、どうやらその男が翔の身体を背後から抱き締めて、逃げようとするのを拘束しているかの様であった。 「お願いです……やめてください……この事は、誰にも言いませんから……」 男へと翔が必死に訴える。いつものクールで理知的な翔が、今やすっかり怯えているのが慎一にも分かった。 そして密着する二人の影から聞こえてくる、布地や肌の擦れる音、 「さっさと帰らず一人でいたのが不運だったな。お前みてぇな色気のある小僧が、褌姿で目の前をうろつかれちゃ、ムラッときてしょうがねぇだろ?」 だんだんと目が慣れてくる。男の左右の腕が、翔の身体を撫で回す様に動いているのが分かった。そしてそんな腕の中で、翔はもがく様に何度も身を捩らせている。だが大柄な体格の相手は、翔の抵抗にまるで怯む様子はない。 「それにせっかく一人前の男として神輿を担ぐ歳になったんだ。青くせぇガキから一皮剥けるいい機会だ」 「あっ……んっ……む、無理です……ホントに俺……男同士でとか……出来ません……!」 そんな翔からの泣きそうな声に、慎一は徐々に男が彼に何をしようとしているのか、嫌でも理解させられていく。 (嘘だろ……そんな……翔が……) 端正な顔立ちである翔は、確かに昔から学校でも女子達の受けがよかった。同じ男として羨ましい限りではあったが、まさかそんな翔の身にこんな災難が起きるなど、慎一にとっても想像だにしていなかった事態である。 「ちょっ……あっ……やめっ……んんぅっ……!」 直後、翔は大きく腰をくの字に曲げた。 「おいおい、何が無理だって?こっちはしっかり反応してるじゃねぇか」 「だ、だって……高宮さんが……」 翔の声は、いよいよ焦燥の様子を色濃くさせていく。 そして高宮という言葉に、最初からどこかで聞いた声だとは思っていたが、これで相手が自分達と同じ地域の人間である事が判明する。それどころか、慎一には地元の人間の中でも特に衝撃を与える。 (まさか……あの人、真由のお父さん……!?) 同じ集落で暮らす馴染みの女子であり、今宵も友人達と巡行を見学していた高宮真由。その彼の父親が今、翔の身体を強引に求めている。確かに少々口の悪い人だとは思っていたが、自分が知っている真由の父親はとてもそんな非道な事をする人間には思えなかった。だが仮にもハンドボール部に所属しており決して非力ではない翔が嫌がっているにも関わらず、その抵抗が制されている事にこれで合点がいく。四十代ながら、地元の土建会社で働く真由の父親はかなり屈強な体格の人物であった。 (どうしよう……このままじゃ、翔が……) だが例え相手が誰であれ、翔を救わねばならない状況である事に変わりはない。それでも慎一は、それ以上足を進める事が出来なかった。だがその間の躊躇いで、翔と高宮の状況がいよいよ複雑で異様なものである事を慎一に突き付ける。 「はぁっ……やめて……いやだ……んぁっ……」 言葉と共に発せられる翔の喘ぎ。そして高宮の野卑な笑い声が続く。 「へへ、こんなギンギンにさせてよく言うぜ」 「違います……信じてください……ホントに、俺……そんなつもりじゃ……」 「んな事言ったって、こんなチンポおっ勃たせてちゃ、さすがにもう被害者ズラは無理があるよなぁ?」 高宮からのそんな言葉に、慎一はハッと息を呑んだ。 (えっ……どういう事だよ……) 新たな戸惑いが慎一を襲う。翔は高宮からの行為を明らかに嫌がっていた。それだけにこの状況が慎一にはまるで理解出来ない。だが自分以上に、翔もまた己に起こっている事実を受け入れらない様子であった。 だがそんな翔に対し、高宮からの辱めは容赦なく続く。 「こんな彼氏の姿、とてもじゃねぇが娘には見せられないよな?」 「んんぅ……許してください……真由の事は本気で好きで……はぁっ……ふざけた気持ちで、付き合ってなんかいません……」 「そう焦るなって。何も俺は、真由と付き合ってるのを怒ってなんかいねぇよ。お前みたいな器量のよさそうな男を選んで、むしろホッとしてるところだ。だけど親として気にはなるだろ?こんな元気の有り余るモノを持ってちゃ、危なっかしくてしょうがねぇ」 「信じてください……俺達、まだ……そんな事はしてません……本当です……!」 必死になって翔は高宮へと訴える。 そんな二人のやり取りを、慎一は呆然としながら聞いていた。こんな状況の中で、翔と真由が密かに交際していた事実を知らされる。 (嘘だろ……翔と真由が……) 家も近所で、昔から明るく親しげに接してくれる彼女には、慎一もまた密かに想いを寄せていた。だがこんな異常事態の中では、友人に先を越されてしまったショックどころではない。 「ほぅ、なら女との経験はまだないのか?」 高宮が、そんな翔へと問い掛ける。 「は、はい……」 「ならなおさら、娘のためにもお前を一人前の男に磨いてやらねぇとな」 「あっ……あぁっ……!」 翔から発せられる甲高い声。だがそれは苦悶というよりも、いよいよ喘ぎに艶やかさが増していく。今まで聞いた事もなかった幼馴染みからの声。翔は一体何をされているのか、暗闇の中で繰り広げられる行為に、慎一はそれまでとはまるで違う鼓動の高鳴りを覚えた。 「おいおい、こんなおっさんが相手でも、チンポは全然嫌がってないみたいだな。さすが若いだけあって、活きがいいもんだ」 「そ、そんな……俺は……」 「前袋こんなパンパンにさせて、今さら何言ったって意味ねぇだろが」 「んぁっ……んんっ……あんぅっ……」 暗い中でも、翔が悩ましげに何度も身を捩っているのが分かる。必死に抗おうとしている様子ではあったが、高宮の言葉や聞こえてくる翔の喘ぎや吐息は、性感から生じている事は明らかであった。 (翔……興奮してる……相手が男なのに……) 心の中で、思わずそう呟いてしまう。いつもクールで落ち着いた面持ちの翔、ハンドボール部のエースでコートを颯爽と駆け巡る中学時代の光景、そんな彼へ憧れの眼差しを向ける女子生徒達。様々な輝かしい翔の姿がこの状況の中で慎一の脳裏に蘇っていく。 「やっ……んぁぁっ……はぁっ……んんぅっ……!」 「へへ、先走りの匂いがプンプンしてきてやがる、前袋もグショグショだ。明日の本祭までに洗うか代わり用意しとかねぇと、こんな褌で神輿担いだら罰が当たるぜ?」 あのカッコいい、少々の嫉妬も含んだ羨望を抱いていた翔が今、男によって与えられる快感に淫らな喘ぎを発しながら、ただただ翻弄されるばかりとなっている。自分の知っている彼の姿はもはや微塵もなくなっていた。 「あっ……!」 その時、さらに甲高い声と共に翔の影がビクッと震える。 「どうした?首筋がそんなに感じるのか?」 「はぁっ……んっ……んんぁっ……」 悶える翔の声とは別に、ピチャピチャとかすかに聞こえてくる湿った音。高宮の言葉もあり、翔が今首筋をしゃぶられているのだと、慎一は悟らされる。普通に考えれば、おぞましい光景でしかなかった。だが発せられる翔の声に、高宮の行為に対する嫌悪はまるで感じられない。 「女みてぇにアンアン喘ぎやがって、せっかくの男前な顔もこれじゃあ台無しだな」 そんな翔へと、嘲笑する様に高宮が言う。 だがそんな高宮に対し、翔からの反論はなかった。出来ないのであろう。暗闇の中でも慎一には、悔しさを滲ませ今にも泣きそうになっている翔の表情が、克明に見えるかの様であった。 「んっ……んぅぅっ……」 「どうしたんだ?そんな腰をモジモジさせて、ションベンでもしたいのか?」 「………」 「おいおい、黙ってちゃ分からないぜ?」 窮し切った翔の様子が、慎一にもひしひしと感じさせられる。そして荒々しい翔の吐息を耳にしながら、慎一もまたいつしか息苦しくなっていき、呼吸が乱れていく。この状況の中で、自分はどうすればいいのかといった思考すらもはやストップしていた。今はただ、翔が辱めを受け続けるこの現場を事の善悪すら考えられないまま見入ってしまう。 「あっ……や、やだっ……んぁぁっ……!」 再び、翔が激しく悶え始める。 「どうだ、チンコ弄るだけが男の快感じゃないって、今夜でよく分かっただろ?へへ、乳首もこんなビンビンだ」 「やめっ……んぅっ……やめてください……もう、我慢出来ません……」 「何が我慢出来ないんだ?」 高宮はそう問い詰めるも、明らかにとぼけて翔を焦らしている様にしか思えなかった。 そして翔もまた、いっそうもどかしそうに腰を捩らせている。それだけで、翔が何を求めているのかを明確に物語っていた。 「もう意地を張ったってしょうがねぇだろ?せっかくこんな気持ちいい体験が出来てるんだ。今夜はとことん楽しもうぜ」 一転、翔をなだめる様に高宮は言ってくる。 本来なら、とんでもない提案のはずであった。だが荒々しい吐息が聞こえてくるだけで、翔から拒絶の言葉はまるで発せられない。もはや先程までの様に抵抗する気配すら感じられなくなっていた。まさかという思いに、慎一の強張った身体が震えそうになっていく。 「お願いです……俺……もう……い、イキたいです……」 ベソを掻く様な、翔の咽び声が耳へと確かに届いた。 慎一はその時、自分はなぜこんな場所に来てしまったのかと、本気で後悔の念を抱く。それは翔が、高宮へ完全に屈服した瞬間であった。 (翔……ごめん……) 心の中でそう謝る事しか出来ない。 だが慎一は、ここにいる自分が本当の意味で邪魔者であった事を、次の瞬間に思い知らされる。 「へへ、最初からそう素直に……あっ!おい、待て!」 突然、それまでとは一転して、高宮の狼狽する声。 もはや翔に抵抗の様子がなかったため、高宮は油断して拘束を緩めていたのであろう。だが翔は一瞬の隙を突き、高宮の腕の中をすり抜けると、脱兎ごとく走り出す。この森の中から抜け出せれば、それで高宮の魔の手から逃れられるはずであった。 「えっ!?」 「うわっ!」 真正面から翔の身体がぶつかる。 走り出したその方向に、慎一が立っていた。お互い予想外な行動や存在であっただけに、避ける間もなくぶつかると、その衝撃でよろけて尻餅をついてしまう。 「し、慎一……!」 まるで幽霊が目の前に現れたかのごとく、翔は顔を引き攣らせる。 そんな翔を前にして慎一は何も言えず、ただ狼狽えるばかりであった。 「あらら、知らねぇ内に見物人がいたとはね」 危うく逃がしそうになった獲物が慎一の妨害で阻止され、高宮は余裕を取り戻してこちらへ近付いてくる。 だがそんな高宮よりも、慎一の存在にすっかり翔は固まったまま動けないでいた。 「おうおう、よく見ると北川さんちの慎一か。いつからそこで見てたんだ?」 そう言うと、今度は翔へと高宮は視線を向ける。 「本当に今夜は不運続きだな。チンポおっ勃たせてアンアン喘いでる姿を、まさか同級生にしっかりと見られちまうとはな」 「あっ……あっ……そんな……」 翔の震えた声は、絶望に満ちていた。 「ち、違う……僕は……」 何とか必死に声を引き絞るも、何を言っていいのか分からず、慎一は言葉を詰まらせてしまう。 その時、いつしか背後に回り込んでいた高宮が、尻餅をついたままだった慎一の両脇をグイッと抱き抱えると、半ば強引に身体を立ち上がらせる。 「まぁ、見ちまったものはしょうがねぇよな。だけどこのままじゃ、翔だけが恥かいて面目丸潰れだ。さすがにそんなのは可哀想だよな?」 耳元で、高宮がそう囁く。 何も出来ず、慎一はそんな高宮の屈強な腕の中で立ち尽くす。 そんな慎一と高宮を、翔は呆然と眺めていた。 高宮の右手が下半身へと伸ばされる。 「っ……!」 ハッと、慎一は息を呑んだ。 布地越しにその感触をじっくりと確かめながら、高宮はニヤリと口元をほころばせる。 「野郎同士とはいえ、お前にはちょっとばかし刺激が強過ぎたみたいだな」 張り詰めた前袋の上から、高宮は五本の指をしっかりと絡ませていく。 慎一はその時、自分が勃起していた事にようやく気付いた。 COPYRIGHT © 2020-2024 アロエ. 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作者 アロエ さんのコメント 季節はもう秋ですがw
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