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夏祭り〜ある少年達の成長の記録〜B


記事No.291  -  投稿者 : アロエ  -  2022/01/24(月)21:43  -  [編集]
 本祭の朝は、爽やかな青空が広がっていた。
 自宅からやって来た慎一は、鳥居をくぐり神事が取り行われる社へと入る。すでに境内は人々で賑わっており、神輿を担ぐ男衆達は昨日と同じく法被に六尺褌の出で立ちで、慎一もその中の一人であった。
 年に一度の祭礼とあり、天気だけでなく社全体が晴れやかなムードに包まれている。そんな人々の中にあって、慎一の表情は曇っていた。あまり眠れずに朝を迎えたという事もあるが、今はとても祭りの高揚を共有出来る状態にはない。
(まだ始まるまで時間あるな……)
 手持ち無沙汰に周囲を見渡すと、屯している若者達の一団にフッと目が止まる。
 他の地区に住む友人達であった。ここの祭りを見にやって来たのだろう。そんな私服の彼らの中に、自分と同じく法被姿の少年が混じっていた。
(翔……)
 彼らはまだ、慎一がやって来た事に気付いていない。慎一はその場に留まり、遠目から翔を見つめる。
 翔は友人達と、明るく楽しそうにしゃべっていた。
 何事もなかったかの様な翔の姿に、昨夜の出来事は自分だけが見ていた幻想だったのではと、そんな気さえしてきてしまう。だが今の慎一には、どうしても彼らの輪へ歩みを進める気にはなれなかった。翔が自分に気付いた時、それでも彼はあの笑顔を保っていられるのか、どうしてもそんな事を考えてしまう。
(何を話せばいいんだ……)
 自分が見てしまった、そして翔に見せてしまった、お互いの本性。全てをなかった事として封印したくとも、今こうして彼を見ているだけで、脳裏には昨夜の出来事が否応にも蘇ってきてしまう。
 前袋の中で、自身のが徐々に火照りと膨張を始めてしまう。記憶は頭の中だけではなく、若い肉体にも克明に刻み込まれていた。
(だめだ……みんながいる、こんなとこで……!)
 慌てて慎一はその場を離れ、人気のない境内の隅へと身を隠す。こんな自分がとても恥ずかしくてならない。今は誰の目にも止まりたくはなかった。
(何なんだよ……何でこんな事に、僕は……)
 境内裏の方向へ、慎一は顔を向ける。朝の光を浴びて緑を湛える鎮守の森は、荘厳さと長閑さを織り交ぜた風景を作り出していた。幼い時から慣れ親しんだ場所でもある。本当にあれが悪い夢か何かであったならば、祭礼の賑わいを耳にしながら、慎一はそう思わずにはいられない。


 宵宮の夜が更けていく。
 枝葉の間から月明りがわずかに差し込むも、森の中全体を支配するのは深い闇であった。本来そこは本能的な恐怖を呼び起こす夜の聖域。だがそんな場所が今、それまでの日常から分断された者達の異質なる世界と化していた。
「あっ……んんぅっ……はぁっ……」
 立って向き合う二人の少年。
 脚腰をガクガクと震わせながら、翔はすがる様に慎一の身体を抱き締めている。発せられる喘ぎと吐息が、紛れもない快感に彼が耽溺している事を物語っていた。
 そんな幼馴染みの火照りと息遣いを鮮明に感じながら、慎一もまた言い知れぬ情動の昂りを覚える。あの理知的だった翔を、今自分が痴れ者のごとき姿へと変えてしまっているのだ。自分の手中にある彼のペニスからは、先走りの汁がダラダラと溢れ出て、濃厚な雄の匂いを漂わせていく。
 密着するそんな二人の少年を、高宮は満足そうに眺めていた。もはや慎一達を拘束せずとも、止めどない欲望の虜となった彼らがこの場から離れる事など出来はしない。
「どうだ、翔。気持ちいいか?」
 やがて高宮がそう投げ掛けてきた。
「は、はい……」
 息を乱しながら、翔は言葉を引き絞る。
「慎一がこうして一生懸命頑張ってくれてんだ。どうなのかをちゃんと伝えてやらねぇと、こいつもやり甲斐ってもんがないだろ?」
 翔の状態は、すでに十分こちらにも伝わっていた。だがそれでもあえて、高宮は翔に答えさせようとする。
 そして今の翔には、言葉を選ぶ思考の余裕はすでになくなっていた。
「気持ちいい……慎一……た、堪んないよ……止めないで……このまま、最後まで……」
「大丈夫……分かってるから……」
 翔の耳元で、慎一は囁く。先程の自分がそうであった様に、今度は慎一が翔の求めに応じて、握ったペニスをいっそう活発に扱いていく。
「んぁぁっ……!」
 背筋を仰け反らせて翔が悶える。震える身体とその強張りに、いよいよ彼の限界が近づいている事を慎一にも悟らせた。
(僕が翔を気持ちよくさせている……僕の手で、こんなに夢中になって……)
 快感によがる翔の姿は、慎一に新たな羨望を抱かせてならない。
「溜まりに溜まってる事だろ、思いっきり絞り出してやれ」
 慎一へ高宮も言ってくる。焦らされ続けた翔が、ようやく解放される言葉であった。
 翔の背中へ回していた左腕に力が入る。そして右の掌は先走りと汗でベトベトになりながらも、慎一はその硬い幹を最後の瞬間まで攻め立てていく。
「い、イクッ……イクッ……あぁぁっ……!」
 感極まった声と共に、ビクンッと腰が大きく痙攣した。潤んだ鈴口から、翔は勢いよく若い精を迸らせる。
 正面に位置する慎一の身体にも、熱い液体が次々と噴きかかり塗れていく。だが今はそんな事でもまるで気にならない。翔を絶頂へ導いたという事実に、肉体的な快感とはまた違うえも言われぬ愉悦が慎一の中で広がっていく。
(すごいいっぱい……僕が翔を、射精させたんだ……)
 大量の精液を吐き出してもなお、翔の幹は硬さを失わない。清廉な相手だと思っていただけに、旺盛な精力は慎一を感嘆させるものであった。
 だがそれでも、絶頂を終えた彼の身体は急速に脱力していく。慎一が支えていなければ、その場に崩れ落ちそうになる。緊張による反動から、肩で息をしながらしばし翔は放心状態となっていた。
 彼にとってもこれが自慰以外による初めての射精だったのだと、改めて慎一は感じ取る。
 だが訪れた平穏は一時のものであった。
「さて、お前ら二人も済んだ事だし、今度は俺の番だな」
 高宮からの言葉に、慎一と翔は現実へと引き戻される。ここにいるのは自分達だけではないという事実。そして自分達の全てを見られていたという事実が、少年達の余韻を一気に吹き飛ばす。
「翔、こっちに来い」
 静かにそう、高宮が言ってきた。
 射精を終えたばかりの翔は、躊躇いながらも慎一を残し高宮の前へと進み出る。今はもう逆らう事など出来ない。
「あの……な、何を……?」
 上擦った声で問う翔へと、高宮は意味ありげな笑みを浮かべる。
 そんな二人を、慎一も固唾を呑んで見守っていた。
「ケツをこっちに向けろ」
 翔へと、事もなげに高宮が言う。
 その言葉を耳にして、慎一は凍り付く。そしてそれは翔とて同じであった。彼の背中は明らかな怯えを伝えるものとなる。
「それだけは……許してください……お願いです……」
 泣きそうな声になりながら、翔は高宮へ懇願していた。相手が自分に何をしようとしているのか、彼も分かってしまっただけに、今までの比ではない恐怖に襲われている事であろう。
 慎一とてそれは同じで、翔の身を案じるよりも、高宮の標的がいつ自分に変わりはしないかと、心はその恐れでいっぱいになっていた。
「じゃあどうすれば、俺を満足させられる?」
 高宮はそう翔へと問うてくる。
 だが翔は答えられずに黙り込む。
 しばしの沈黙が流れる中、二人の様子に慎一もまた緊張が高まっていく。
「跪け」
 やがて高宮が、何も言えないでいる翔へと命じてきた。
「出来るのなら、ケツは勘弁してやる」
 そう言うと高宮は、締めていた褌の前袋から己の一物を引っ張り出す。落ち着いた口調とは裏腹に、少年達の前で露わとなるそれは、欲望を漲らせ屹立していた。
 もしあんな存在が自分の肛門へと、そんな想像をするだけで慎一は全身が総毛立つ。
 そしてより間近で目の当たりにする翔もまた、震えそうになるのを必死に堪える様に、グッと全身を力ませていた。
「本当に……それをすれば……お尻は……」
「お前の頑張りしだいだ」
「………」
 それ以上は何も言わず、翔は高宮の足元へと命じられた通りに跪く。もはや他に選択の余地はなかった。
 屈服した翔の眼前に、曝け出された一物が迫る。
「口を開けろ」
 新たにそう、高宮が命じてきた。
 覚悟を決めた翔が口を開ける。
 そんな翔の頭を乱暴に押さえ付け、開かれた口へ高宮は己の狙いを定めた。
 翔はギュッと瞼を閉じる。
「しっかりと咥えるんだ」
 口内へと、高宮の怒張した塊が押し込まれていく。
「んんっ……はぁっ……んぅぐっ……!」
 高宮からの容赦のない責めに、翔の表情が苦悶に歪む。口腔深くまで咥えさせられ、呼吸すらままならないといった様子であった。
 慎一はそんな悲痛な親友の姿を、ただ見ている事しか出来ない。
「さぁ、ケツを守れるかどうかはお前しだいだ。これでしっかりと俺を満足させてみろ」
 翔は決して根を上げる事が許されない。これに耐える事が出来なければ、待っているのはさらなる陵辱と苦痛であった。
 だが当然ながら、翔にとってこんな行為は初めてである。高宮のペニスを咥える事は出来ても、そこからこの獰猛な欲望を慰めるという、さらなるハードルが待ち構えていた。
「誠心誠意、尽くすんだ。テクニックだとか余計な事は考えなくていい。お前の思う様にやってみろ」
 翔へ残酷な要求を強いながらも、高宮は彼の力量にまずはその身を委ねる。
 強く瞼を閉じたまま、翔はやがてゆっくりと頭を前後へ揺らし始めた。
「はぁっ……んっ……んぅぅっ……」
 頭の動きに合わせて、咥えた高宮のペニスが扱かれていく。翔としても口いっぱいにペニスを含んだまま何もしないでいるよりも、口内で浅く深くの反復運動を加える方が空気も取り込みやすく、息苦しさは幾分か和らいでいる様子であった。
「いいぞ、その調子だ」
 懸命な翔の奉仕に、高宮がまずは満足気に言ってくる。
 翔も内心ホッとしている事であろう。だが一時の快感で高宮が満足してくれる訳でもなく、なおもひたすらペニスを咥え、翔は尽くし続けねばならなかった。
「うぅんっ……はぁっ……はぁっ……」
「そろそろ顎が疲れてきただろ?口を休めたいなら、その間は手で扱いて繋ぐんだ」
 しだいに険しくなっていく翔の顔色に、高宮がそう助言を与える。
 翔は一旦ペニスから口を離す事を許されると、言われた通り快感を継続させるため、今度は握った手でしっかりと扱いていく。唾液にべっとりと濡れた幹は、手の動きにグチュグチュと音を立てる。
 高宮はしばし、翔からの手淫を無言で見下ろす。
「よし……そのまま、先っぽを舐めてみろ」
 やがて新たに高宮が指示をしてきた。
 幹を扱き続けながら、翔は改めて顔を近づける。そして剥き出しの亀頭に、舌先を這わせていく。
 高宮はそれ以上何も言わず、翔の行為に身を任せていた。
 鋭敏な部分を舌でじっくりと刺激した後、翔はまた大きく口を開けて、ペニスを根元まで深々と咥え込んだ。最初の悲壮さとは違い、だんだんと翔は積極的に高宮の欲望を攻め始めていた。
 そんな翔に対し、高宮は彼の頭を今度は優しく撫でる。
「へへ、やるじゃねぇか。これならお前のケツを掘る必要はなさそうだ」
 喜ぶ高宮に対して、翔は含んだペニスをいっそう大胆に扱いていく。もはやそれは、命令にただ怯えながら従っているというものではなかった。本気で奉仕に徹しなければこの窮地を脱する事は出来ないと、翔も腹を括ったのだろう。
 慎一はそんな翔の姿に圧倒されていく。
「んんぅっ……んんっ……」
 今度は裏筋へ舌を這わせ、翔はくぐもった声と吐息を洩らす。苦痛に耐える最初の様子とは明らかに違い、どこか艶やかさを帯びたものとなっていた。そんな翔に、先程とはまた違う緊張が慎一の胸を高鳴らせ、ジワジワと身体が疼いてきてしまう。
「こいつはなかなかのもんだぞ、慎一」
 すかさず向けられてきた高宮の言葉に、慎一はハッとさせられた。自身の股間もまた熱を蘇らせている事に気付く。
「後でこの気持ちよさ、慎一にもたっぷりと味わわせてやれ。まだまだ一回出した程度じゃ、お前らだって物足りないだろ?」
 二人を見比べながら高宮が続ける。
(あんな事を……僕にも、翔が……)
 屈辱的な仕打ちである事に変わりはなかった。だがそれでも、ペニスを咥え高宮へと快感を与える翔に、いつしか慎一はすっかり魅入ってしまう。
「慎一も、この要領をちゃんと見とくんだぞ?こんなに頑張ってる翔を、後でまたお前が労ってやらないとな」
「………」
 あの熱く硬い翔のペニスを、今度は口の中へと受け入れる自分を想像する。そしてさっきの様な快感に耽る翔の姿も。
(気持ちいいなら……僕だって、いくらでも翔に……だから翔も……今している事を、僕にも……)
 張り詰めた欲望を脈打たせながら、慎一は心の中でそう翔へと訴え掛けていた。


「慎一」
 背後からの声が、記憶の世界から一気に慎一を呼び戻す。
 慌てて振り向くと、そこには昨夜鳥居で別れて以来となっていた、もう一人の幼馴染みが立っていた。境内の隅でポツンと佇んでいた自分へと、怪訝な表情を向けている。
「あっ……健史……」
「こんなとこで、何してんの?」
「何でもないよ……ちょっと、ブラブラしてただけ……」
 記憶がまだ身体を火照らせていた。健史に気付かれまいと、身体は不自然に前屈みの姿勢となってしまう。
(マズい……健史にバレる……)
 本祭用に新しく用意した褌であったが、前袋の布地がいつしかまた湿り始めていた。今さらながら、自分が情けなくなってきてしまう。
「そろそろ神輿が出発する時間だぞ。担ぎ手はみんなもう集まってる」
 幸いにも、健史からの言葉は恐れていたものではなかった。
 焦燥する慎一は、今日がどういう日なのかを改めて思い出す。初めて神輿を担ぎ、大人の一員として認められる晴れの舞台なのだ。
「ご、ごめん……そうだね……じゃあ行こうか……」
 慎一は何とか取り繕い、健史の横を素早くすり抜けた。これ以上話が続けば、昨夜の事を詮索されかねない。わざわざ来てくれた相手に申し訳ないと思いつつも、逃げる様に皆が集まる広場へと駆けていく。
(健史に知られる訳にはいかない)
 あんな事は、健史にとっても知らずにいる方がいいに決まっている。慎一は今から始まる神輿の担ぎ手として、何とか気持ちを切り替えようと努めた。考えていてもどうなるものではない。
 だが慎一は気付いていなかった。そんな彼の後ろ姿へ、健史が極めて複雑な眼差しを向けていた事に。


「ここにいても、俺達は邪魔者でしかないみたいだね」
 傍に立つ陽平が、静かにそう語り掛けてきた。
 なぜそんな落ち着いていられるのか、健史にはまるで分からない。闇の向こうで繰り広げられる親友達の惑乱。光景は見えずとも、聞こえてくる言葉や喘ぎはあまりに衝撃的なものであり、健史は呆然と立ち尽くす事しか出来ない。
「そ、それでも……こんなの……」
 震える声で、健史は何とかそう言葉を返す。
「どうする事も出来ないだろ?」
「………」
 いなくなった二人を探しに、陽平と共にこの境内の裏にまでやって来た。そんな鎮守の森で行われていたのは、幼馴染みの父親による非道な仕打ちの数々。だが強いられ、辱めを受けながらも、それはやがて背徳の快感となって慎一と翔を狂わせていく。
「このまま……口の中に出すぞ、全部飲み込むんだ……」
 やがて闇の向こうから、息を荒げた男のそんな言葉が聞こえてきた。
「んんっ……うっ……んんぅっ……!」
 続いて聞こえてきたのは、くぐもって呻く様な翔の声。
 闇に隠された彼らの姿と光景は、見えなくて幸いなのかもしれない。そしてそれは、自分達の存在に気付いていない彼らにとっても。
「よく頑張ったな、翔。まさか本当にイカされるとは思っていなかったぞ」
 事を終え、上機嫌な高宮の様子が伝わってきた。
「見てみろ、慎一がまたビンビンになってやがる。お前のテクニック、こいつにも教えてやれ」
 高宮が続けて言ってくる。
 その言葉を聞きながら、健史もまた苦しいまでに胸が高鳴っていた。
(翔……慎一……)
 心の中で、彼らの名を呟く。
 しばしの間を置いて、蠢く影と緊迫する気配。やがてピチャピチャと、水気を帯びた音が聞こえてくる。
「あっ……んんぁっ……!」
 発せられた甲高い喘ぎ。悶え泣く様なそれは、確かに慎一の声であった。だが今まで知る由もなかった幼馴染みの、淫靡さをより色濃く含んだその声は、耳にする健史の呼吸をも乱していく。
(気持ちいいんだ……男同士でも……さっきの翔だって、あんな声を……)
 それは本来、大人に弄ばれる哀れな少年達の姿であるはずだった。だがいつしか健史の中では、彼らの声や気配を感じているだけの自分に対し、堪らないもどかしさを覚え始める。
「慎一……お願い、俺にもして……もう我慢出来ない……」
 快感の喘ぎは、やがて翔の切実な声によって中断された。
「さっきからずっと咥えっぱなしだからな。慎一、今度はお前が口でしてやれ。十分勉強出来ただろ?」
 高宮もそう促す。
 しゃがむ者と、立ち上がる者の影が入れ替わる。
「はぁっ……慎一……あぁっ……」
 今度は翔の喘ぎと、湿った摩擦音がだんだんと大きくなっていく。求めに応じた慎一が、翔の欲望を慰めているのであろう。何ら躊躇う様子は感じられなかった。もはや高宮からの命令ではなく、慎一と翔は夢中で快楽を求め合っている様にしか思えない。
「二人が羨ましい?」
 静かにそう、陽平が言ってきた。
 陽平からの予期せぬ問いに、健史はハッとさせられる。だが返答するよりも先に、さらなる衝撃が健史を襲う。
「っ……!」
 極めて冷静に、陽平は健史の状態を確認する。
「こんなままじゃ、君も帰れないよね」
「東さん……」
 伸ばされた陽平の右手が、褌の前袋を捉えていた。布地の中で張り詰めていた少年の欲望が、ビクッビクッと大きく脈打つ。
「どこか別の場所に行こうか」
 硬直する健史へと、陽平はそう誘うのだった。

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作者  アロエ  さんのコメント
続きが遅くなってすみませんでした。