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夏から始まるStory 4


記事No.298  -  投稿者 : 虎  -  2022/03/06(日)00:44  -  [編集]
駐車場からダッシュ!

なんとか間に合い、搭乗手続きを終えると、ホッとしながら2階へと上がる。

「はぁ。間に合うたな!」
「間に合った!」
「上に行こうか!」
「うん!」

お土産を買い、ホッとため息をつきながら昴が買ってきたコーヒーを飲みつつ、ロビーの椅子に座って人間観察。

観光帰りのイチャイチャしているカップル、お土産を物色し終わってジュースを飲んでる親子連れや、出張だろうか?スーツを着た人が多く、別れのハグをする雰囲気ではなかった。

「なぁ…ヨシアキ…」
「ん?ああっ来年ね!来年は…」
「違う…あんさ…逃げられちゃった。」
「ん?逃げられた?だれ…」
「妻に逃げられちゃった!」
「…に?………はぁ?逃げられただぁ?」
「で、ついでに離婚しちゃった!」
「はぁ?それを今言うか?」
「いやぁ…言い辛くてさ…」
「言い辛いって…もぅ!」

気まずい空気が流れる。

この空気…どうしよう?と考えて、昴の方を向き「あのさ…」と言いかけた瞬間だった。
いきなり「なぁ…ヨシアキ、愛してる…一緒に暮らさん?」と。

一瞬ビックリして聞き返す。

「え?愛し…てるって言った?えっ?一緒に…」
「な!俺んとこに来い!やっぱりワイのおらんば……。俺は……俺はお前と一緒に生きて行きたか!ワイと一緒に!」
「ちょ…えっと…か…考えと…く。」
「そうや…待っとっけん…」
「うん。じゃ…」

行こうとした瞬間、いきなり腕を掴んで俺を引き寄せると、ガバッと抱き締め、人目もはばからずキスをしてきた。

「…な、なに?スバル…」
「ヨシアキ…あんさ…結婚すうで!」
「は?ちょ…いきなり?」
「俺じゃ…ダメや?」
「そうじゃないけど…なんで帰る直前になって怒涛のごとく言うかな?」
「ずっとタイミングば待っとったっさ!」
「いや、わかるけど…」

周りから、「ヒューヒュー」と言う声や、「頑張れニイチャン」という声が。

「ヨシアキ…」
「…なに?」

昴が膝まずいたと思ったら、ポケットから小さな青い箱を取り出し、箱を開けて差し出した。

「ヨシアキ…結婚してください!」
「は?ちょっと…人目が…」
「人目は関係なか!」
「……スバル…」
「ヨシアキ…」
「…うん。」

昴は、周りから「おめでとう」という声をかけられ、同時に拍手がおこり、照れくさそうにしてた。

昴が指輪を薬指に入れると、サイズピッタリ!

「サイズピッタリ!」
「前にさ、ワイの寝とる間に紙ば巻いて測ったっさ!」
「いつの間に…」
「へへっ!ヨシアキ…待っとっけんな!」
「うん。またね!」
「おう!」

抱きあって濃厚なキスを交わし、俺は改札ゲートへ。
ガラス越しに手のひらを重ね、唇で"またな!愛してる!"と。

飛行機に乗り、窓から外を見ると屋上のデッキに昴がいて、手を振ってた。

「…ははは、スバル!やっぱり、あんだけ身長があると目立つな…それに、あのガタイは目立たないわけないよな!」

気付くかどうか判らないけど、手ふっとくか!

手を振っていると、ゆっくりと飛行機は動きだし、あっという間に離陸。
シートベルトを外して、改めて指輪をよく見ると俺が欲しがってたハワイにあるブランドのリング。

「ホワイトゴールドのやつだ!指輪の内側にはよくメッセージがあるよな?」と、外してみる。

指輪の内側を見ると
" I love you Yoshiaki From Subaru "
と彫られてあって、妻のいる昴とは…と、思っていたから、あまりの嬉しいサプライズに涙が溢れそうになる。

「ヤバい…涙が…」と、カバンの中からタオルを出そうとしたら、指輪の箱よりも一回り大きな箱が入れてあった。

「ん?なんだコレ?」

箱を開けて見ると、中にはピンクゴールドのブレスレットが入っていて、1センチ位の幅に小さな文字で" From Subaru to my beloved Yoshiaki who will never let go "と彫られてあった。

昴の野郎、『" 生涯放さない 愛しのヨシアキへ スバルより "』って、似合わないんだよ!と、心の中で思いながら、涙が溢れてきたのを天井を見るようにしてこらえ、鼻をグスグスさせながらカメラの電源を入れ、野母崎のあの海で撮した写真をディスプレイに出し、昴の顔をズーム機能でアップに。

カメラのディスプレイに写る昴の笑顔と、「お前と一緒に生きて行きたか!」のセリフを思い出し、俺の目からとうとう涙が流れ落ちてきて、俺はサングラスをかけて他人に見られないように窓の方に顔を向けた。

「スバルの野郎!イキなりすぎんだよ!」

心の中で、「これからは2人で人生を歩んで行こう!きっと大丈夫!」と、止まらない涙をタオルで押さえるようにして拭きながら、昴の笑った顔を思い出していた。


その頃、長崎空港から長崎市内に戻っている最中の昴。

「ふっ…ヨシアキ…九州男児ば、なむんなよ!」

そう言いながら、インターチェンジから高速へと乗り、車を走らせていった。

つづく

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