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夏祭り〜ある少年達の成長の記録〜E
記事No.311 - 投稿者 : アロエ - 2023/06/09(金)00:04 - [編集]
「少し夜風にでも当たって、酔いを醒ましたらどうだ?」
朦朧としていた東陽平へ声を掛けてきたのは、同じ集落に住む男性の中岡であった。祭りの世話役でもあり、こんな状態となっている自分を心配してくれたのだろうか。 本祭の巡行と神事を終え、地区の集会所では男達による宴会で盛り上がっていた。フッと横を見ると、自分と同じく今年初めて祭りに参加した友人が、いつの間にか座ったまま寝入っている。どうやらすっかり酔い潰れてしまった様だ。他の幼馴染達は気付かぬ内に帰ったのか、周囲を見渡すも姿が見えない。 「ツレは別の奴が介抱してくれるだろう。お前も頭を一旦冷やした方がいい。悪酔いは明日に響くからな」 「は、はい……そうします……」 立ち上がろとする陽平であったが、本格的な酩酊で思わずふらついてしまう。 中岡がそんな陽平の身体をすかさず支えてくれた。 「すみません……」 頭がボーとして、上手く身体のバランスが取れない。動こうとすると、胃の中に溜まったものが込み上がりそうになる。今さらながら、己の不覚を後悔せずにはいられない。 巡行から戻り、陽平達は夕食も兼ねて宴会に同席した。だがこんな事になるのなら、さっさと帰ればよかったかもしれない。言われていた通り、昔からの習わしで未成年だろうと関係なく、祭りに参加した者には酒が振舞われた。むしろ今夜は無礼講だと、初めての宴席を経験する陽平達に対しても、大人達が積極的に酒を進めてきた程だ。 「少し辺りを散歩すれば、酒も抜けるだろ」 「はい……」 「それにしても、昨日はまだ青臭さがあったが、今日の神輿を担いでいる時のお前は、なかなかサマになってたぞ」 紺色を基調とした法被を纏い、純白の褌を締めた陽平の姿を、中岡がマジマジと眺めてくる。 「あっ……そ、そうですか……」 陽平は少しはにかむ。 暑い日差しの中を汗だくになりながらの巡行であったため、火照った身体を冷ますべく、集会所にやって来てからも陽平達はそのシンプルな出で立ちのままであった。その後すっかり飲酒で正体をなくし、着替える機会もないまま今に至る。初めて大人神輿に参加し、法被と褌のみの姿で人前に出るのは最初こそ恥ずかしかったものの、宵宮から続くこの二日の間で、今はすっかり違和感もなくなっていた。 「行こうか」 中岡に促され、陽平は宴席の部屋を後にする。 「今はすっかり廃れっちまったが、この辺りも昔は炭焼きや材木の切り出しなんかが盛んに行われていた。ここもそのうちの一つだ」 集落から奥へと進んだ山林の中に、その古い木造の小屋は建てられていた。風雨を防ぐ最低限の簡素な造りで、床板もなく地面が剥き出しのままである。さらに長い年月で建物はすでに朽ち始めてきており、屋根からは所々夜空が覗いていた。そんな小屋の中に鎮座する大きな釜と積み置かれた薪が、かつて行われていた炭焼きの名残を見る者へと伝えている。だが今はもう人の営みがなくなって久しく、廃墟として忘れられゆくその場所で、高宮はランタンを持って立っていた。 「そういう山の中に入っての仕事は、仲間と一緒に小屋で何日も寝泊まりしながらって場合も多かった。ここも集落には近いが、炭焼きは夜中もずっと火を焚いてなきゃならねぇから、出払う訳にはいかなかったんだ。俺も若い頃は、泊まり込みで伐採の仕事なんかを何度か手伝ったもんだ」 特別な思い入れでもあるのか、高宮は暗い空間へ灯りをかざしながら、懐かしそうな眼差しで辺りをじっくりと見渡す。 「昔は神輿を初めて担ぐっていうのは、今でいう成人式のようなものだったらしい。そんで祭りが終われば晴れて大人の一員として、村の仕事にも本格的に携わる事になる。年長者達と一緒に山に入って、小屋で寝食を共にしながら仕事を学んでいったんだ」 役目を終えた炭焼き窯の前に立ち、その上辺を指腹で軽く拭い取る。こびり付いた埃をジッと見つめつつ、高宮はさらに続きを語っていく。 「だが一日を終えて小屋に帰っても、山の中じゃ仲間と酒を飲むくらいしかやる事も楽しみもねぇ。もちろんそこにいるのは男だけだ。そんな中で、見習いでやって来た年若い奴が一人でも混じってりゃ……へへ、色々と可愛がられる事も珍しくなかったみたいだぜ?」 意味ありげな笑みを浮かべながら、高宮はゆっくり後ろへと振り返る。 ランタンの灯りに照らされて、二人の少年が並んで立っていた。祭りで纏っていた法被は脱ぎ捨てられ、小屋の中で純白の褌と黒い地下足袋だけの姿となっている。強張った表情で、落ち着きなく息を乱しながらも、少年達は高宮の動向をひたすらに注視し続けていた。 わざわざこんな場所へ二人を連れて来た張本人は、ようやくその真意を垣間見せていく。 「こんな事をいくら言ってても、お前らには余計な講釈でしかないみたいだな。さっさとおっ始めたいか?」 慎一と翔の下半身を見定めながら、高宮はそう意地悪っぽく問い掛ける。 無言の少年達であったが、どちらも怒張させた股間が全てを物語っていた。留め置かれた欲求は、前袋を突き破らんばかりの勢いである。すでに布地は汗や先走りで湿りを帯びており、恥部を覆いながらも勃起させた形がくっきりと浮かび上がっていた。 もはや逃げられる心配も拘束する必要もなく、高宮は余裕たっぷりに二人を見据える。それだけでよかった。 「今の説明は、ちょっとばかし言い方を間違えたかもな。つまり若い連中に仕事だけじゃなく、男として一人前の器量に磨いてやる事も、村の大人達の大切な役目だったんだ」 この日が来るのは必然だったとばかりに、高宮はそう言葉を締め括る。そして手に持つランタンが、地面へ静かに置かれた。 いよいよかと、慎一と翔の緊張は最高潮に達する。 「翔」 まずは幼馴染へと、高宮の言葉が向けられた。 「は、はい……」 「チンポを出せ」 「………」 狼狽えた表情で、翔は固まってしまう。だがこの無体な要求に対し、彼が抵抗しようとする気配はまるで感じられなかった。 そんな傍の友人を、慎一もただ見ている事しか出来ない。 「早くしろ」 容赦なく高宮は言い放つ。ここに来た以上、従う以外の選択肢など自分達にはなかった。今は躊躇う事すら許されない。 翔は唇を噛み締め、自らの褌へと手を掛ける。 堪らなくなり、慎一はその悲壮な姿から顔を逸らした。だがそれでも、なぜか鼓動が苦しいまでに高鳴ってきてしまう。今から恥辱に塗れようとする翔に対し、だめだと分かっていながらも、すぐにまた視線を戻さずにはいられない。 前袋の片端から、少年の肉茎が曝け出される。今にも泣きそうなその表情とは裏腹に、高宮の前でその若き一物は、天を仰がんばかりに逞しく屹立していた。 「見たいのなら、しっかりと見ろ」 横目で姑息に伺おうとするこちらの様子を、高宮は見逃さなかった。 「今さら慎一に見られるくらい、お前だって恥ずかしくはないだろ?」 ニヤリとしながら、男は翔にも問い掛ける。 無言で頷くも、彼の表情には苦渋が滲んでいた。 そんな胸中を推し量るも、幼馴染の姿から慎一は目が離せなくなってしまう。昨夜と違い、その剛直がハッキリと灯りに照らされている。 (すごい……翔のが、どんどん元気に……) 耐え難い羞恥の中にあって、翔のペニスは萎えてしまうどころか、むしろ二人からの視線を浴びて力強く脈打ち始める。無様な見世物にされながら、それでも彼の身体は快楽を欲していた。この歪な姿が、もはや後戻りの出来ない少年の哀れさを余計に際立たせる。 ゴクリと、慎一は唾を飲み込んだ。翔のそれを見ながら、こちらもまた燻っていた欲望が煽り立てられる。自分の渦巻く感情の意味すら把握出来ぬまま、十五歳の心と身体は激しく掻き立てられる一方であった。少し手を伸ばせば触れられるその存在に、慎一の中で堪らない衝動ともどかしさが募っていく。 「あの……中岡さん、ここに何かあるんですか……?」 連れて来られたのは、集会所からしばらく歩いた場所にある納屋の中であった。窓から差す月明かりが木造の空間を照らしている。農具などが仕舞われている他に、これといって目ぼしいものはなかった。人家からも離れており、祭礼の日とはいえ辺りは静まり返っている。 中岡の言う通り、外に出た事でようやく陽平も酔いが幾分かマシになっていた。だが頭が冴えると共に、男はなぜ自分をこんな所に誘ったのか、少年の中で次なる疑問が大きくなる。 するとこちらへ、背後から急に中岡がもたれ掛かってきた。 「え?」 「どうやら俺も、今夜は少しばかり飲み過ぎたみたいだ」 男から漂う酒の匂いに、また頭がクラクラしてきそうになる。彼も先程の宴会で相当飲んでいたのであろうか。そうなると今度は自分が大の大人を介抱せねばならず、陽平は困り果ててしまう。 「だったらこんなとこにいても……もう遅いですし、早く帰った方が……」 陽平はやんわりと促すも、中岡はなぜか答えず動こうともしない。 (もしかして、ホントに不味い状態なのか?) 納屋の中で酔い潰れられても面倒であった。だからといって、彼を見捨てて自分だけが去る訳にもいかない。最悪の場合、誰か他の大人を見つけて助けを求めるべきかと、陽平はうんざりしながらも思案を巡らす。小屋の奥に目をやると、作業や休憩のためなのか畳が二枚敷かれていた。自分にこのまま寄り掛かられていても迷惑なので、まずはそこに彼を寝かせるべきかとも考える。 「なぁ、陽平」 その時、急に中岡が口を開けてきた。 思わずドキッとさせられる。 気付くと男は、こちらをマジマジと眺めてきていた。酔っているはずだった中岡の瞳には、酩酊する人間の虚さがまるで感じられない。 「お前も成長したな」 続けてそんな言葉が投げ掛けられる。こちらを見定め、口調もハッキリとしていた。 「は、はい……そうですか……」 間近で向けらる視線に加え、改まっていきなり何を言い出すのかと、陽平は困惑せずにはいられない。 「しかもいい面構えだ。これなら、女に不自由はしないだろ?」 中岡はそう問うてくると、なぜか腰の辺りにそっと右手を押し当ててきた。 さりげない行動ながら、予期せぬ部位を触れられた陽平は、反射的に身構えてしまう。だがさすがにそんな男の手を、即座に振り払う事は出来なかった。 「別に……そんな事は……」 気にせぬ素ぶりで答えるも、男から顔を逸らさずにはいられない。 だが中岡もまた、そんな陽平に対しまるで意に介す様子はなかった。 「告白くらい、された事はあるだろ?」 「………」 「謙遜なんかしなくてもいい。頭もよくてスポーツも万能なんだ。モテない訳がないよな?」 「ですから……大袈裟ですって……」 気まずさと戸惑いが増していく。 だがそんなやり取りの間にも、まるで腰回りのくびれを確かめる様に、男の手がゆっくりと動かされ始める。その際どく生々しい感触に、陽平はハッと息を呑んだ。精妙なタッチで身体のラインをなぞられる。これがもっと無遠慮な動作であるならば、ただただ不快なものでしかなかったであろう。だが今は男の意図がまるで分からず、その細やかな指遣いが逆に不気味さと緊張を抱かせてならない。 (何なんだよ……この人は……) それでも口にするのを躊躇ってしまい、陽平は中岡のされるがままに、ただ立ち尽くすのみとなってしまう。 「もう女と、経験はあるのか?」 男の質問は、そんな中でさらに露骨なものとなっていく。 心臓の鼓動が高鳴る。仲間内での下世話な軽口とは明らかに違うものであった。狼狽する自分の姿に、全てを見透かした上で相手は楽しんでいるとしか思えない。それだけに今さら虚勢を張っても通じるとは思えず、陽平は黙り込む以外に術がなかった。 「どうした?」 窮する少年に対して、中岡がわざとらしく言ってくる。 顔面が紅潮していくのが自分でも分かった。彼女との逢瀬を誇らしげに語るクラスメート達の会話を横目に、内心で抱かされた男としての劣等感や焦りを思い出す。 「あの……すみません……俺、もう帰らないと……」 堪らなくなり、陽平は強引に中岡から離れようとした。酔っていた自分を気遣ってくれた事には感謝するものの、これ以上彼の相手をしなければならない道理が自分にあるとは思えない。 だが振り解こうとする中岡の腕は、陽平の身体を逃がそうとはしなかった。 「おっさんと一緒にいるのが、そんなに嫌か?」 背中へといっそう男が密着してくる。明らかに酔っぱらいの戯れとは違う拘束の力と相まって、少年の中で一気に恐怖が芽生えた。 「嫌とかじゃなくて……とにかく、いったん離してください……」 平静さを装おうとするも、中岡に対して声が上擦ってしまう。 「女に自信がないのなら、俺が色々と教えてやってもいいぞ?」 「………」 陽平はもはやそれを、冗談として受け流す余裕がなかった。救いを求めたくとも周りには誰もいない。こんな場所へと連れ込まれた意味に、考えたくもないまさかという思いが、少年の脳裏を過ぎる。 (そんな事……あり得ない、俺は男なんだぞ!) 萎縮する心を、それでも何とか奮い立たせようとした。 だがそんな陽平を嘲笑うかのごとく、中岡の手はやがて腰から脚へと伝っていく。 「いざって時に、お前も恥なんか掻きたくはないだろ?」 さらに耳元で男は囁く。 肌へと被さる手指と吐息に、ゾクゾクと震えが全身を駆け巡る。 「結構です!」 耐えられなくなり、陽平は声を荒げた。一刻も早くここから逃げねばならない。エスカレートしていく男の行為に、本能が激しく警鐘を鳴らす。相手の明らかな悪意と自分に対する異常な執念を確信し、陽平は全力で男を押し退けここから走り出そうとした。 「っ……!」 だが寸前のところで、少年の身体は一気に硬直してしまう。 一転して顔面蒼白となる陽平の下半身へ、中岡の不敵な眼差しが注がれる。 「まだこいつは、自分で慰めるだけか?」 「中岡さん……ホントにもう……いい加減にしてください……」 こちらの動きを完全に読んでいたかのごとく、男の右手が前袋をしっかりと掴んでいた。下手な抵抗はするなとばかり、絡めた指を布地にグッと食い込ませてくる。 「そう焦るな、今夜は無礼講なんだ」 少年をなだめる中岡には、まるで悪びれる様子もない。 「勘弁してください……こういう冗談は俺、好きじゃないんです……」 「冗談だと、誰が言った?」 「………」 彼と二人きりになってしまった時点で、全ては遅すぎた事を陽平はここに至って悟らされる。だがそんな己の迂闊さを、もはや悔いてすらいられない。 やがてもう片方の手が、少年が纏う法被の帯へと掛けられる。 「悪く思うなよ。若い連中に対して、これも昔からの教育みたいなものなんだ」 あっさりと括りが解かれ、帯は地面へと落ちてしまう。 目頭が熱くなる。泣きそうになっている自分がいた。初めて経験する事態に、聡明な少年も完全に気概を挫かれてしまう。羞恥を通り越して、様相はいよいよ怯えを色濃くさせていく。 「これが……そ、そんな……」 「まぁ確かに、今は理解出来ないだろ」 「………」 「だけどもこうしてみんな、大人になってきたんだ」 少年の着衣をはだけさせながら、中岡はどこか諭す様に言ってくる。まるで全てを受け入れるのがこちらの義務なのだと、覚悟を迫るかの様でもあった。 (嘘だろ……このまま……俺は、この人から……) 背筋が凍りつく。当然そんな主張に納得など出来る訳がない。仮に中岡の言っている事が事実であったとしても、大人によるこの様なおぞましい行為が、世間で許されるものとは到底思えなかった。 「待ってください……だからって、いきなりそんな……俺は……!」 必死になって陽平は訴えようとする。 だがそれ以上の明確な説明が、中岡からなされる事はなかった。 「お前も、すぐに分かるさ」 露わとなる胸肌へ、男の指が這わされる。 「ちょっ……中岡さん……!」 思わず陽平は、ビクッとその身を震わせた。 「なかなか、いい反応をするじゃないか」 さらに下腹部や脇腹にかけて、愛でる様に肌を滑っていく。同時に股間を掴んでいた右手もまた、布地の上からその部分を積極的に弄ってくる。 それは今まで他人から触られたどの感覚とも違うものであった。少年の中で脈動が活発になり、身体がジワジワと熱を帯びていく。 「あっ……んっ……はぁっ……」 男の腕の中で、陽平は何度も身体をくねらせた。だが抵抗しようにも、相手はまるで怯む気配すらない。有無を言わせぬ男の行為に、その間も身体は蹂躙されていく。我が身を穢されるという意味を、十六歳の少年はその体感の中でありありと思い知らされる。だがその一方で、単純な性的欲求を一人で満たす事しか知らなかった優等生は、男からの愛撫に新たな疼きと昂りを覚え始めていた。 (まさか……そんな……!) 混乱する理性をよそに、男の辱めに曝される前袋が、しだいにその布地を張り詰めさせていく。己の身に起きようとしている異変に、陽平自身が愕然とさせられる。 当然中岡にも、その事態はすぐに把握されてしまう。 「品のいい顔のわりに、こっちの方はどうも節操がなさそうだな」 男の言葉が、少年をさらに追い詰めていく。 「お願いです……もう、やめてください……」 「だけどもチンポの方は、全く嫌がってはいないみたいだぞ?」 「ち、違う……!」 涙声になりながら、それでも陽平はこの恥辱に屈する事など出来なかった。 「何がどう違うんだ?」 余裕の笑みで、中岡がすぐに問い返してくる。 だが反論の言葉が続かない。否定したくとも、股間はその間もいよいよ反応を露骨にさせていく。前袋の中で、硬くなった自身の存在が勢いよく脈打つ。加えられる刺激はいつしか止めどない性感となって、若い肉体を狂おしいまでに激らせていく。 (だめだ、これ以上は!) 心の中で陽平は叫んだ。だがそれがいかに虚しいものかも、自分自身が一番よく分かっていた。例え無理矢理に弄ばれているとはいえ、身体は明らかにそれを快感として認識してしまっているのだ。受け入れる事など出来ない事実。だがどれだけ嘆こうとも、現実は何ら変わりはしなかった。 「さすがの優等生も、これじゃあ台無しだな」 止めとばかりに中岡が言い放つ。 身も心を踏み躙られ、瞳からは今にも涙が溢れそうになる。だが陽平にはもはや泣き崩れる猶予すら、男から与えられはしなかった。 「やっ……んんぅっ……あぁっ……」 「こっちも、いい具合に感じるだろ?」 上半身に這わされていた指が、やがて少年の乳首を摘んでくる。 その小さな突起に、身体はより感覚を鋭くさせていく。男の指が動くたびに、少年の身体が跳ねる様に仰け反った。 「余計な事は考えないで、今は俺に何もかも身を委ねろ」 中岡のそんな言葉が、今は心の奥深くにまで浸透していく。もはや何ら抗う事が出来なくなっていた。悔しさすら抱けぬ敗北感に、陽平は打ちのめされる。それでも悶えさせられる身体は、少年の中でいっそうの欲求ともどかしさを募らせていくのだった。 「慎一」 唐突な呼び掛けに、ハッと我に返る。 声の主が、嘲笑う様な目でこちらを見ていた。翔に対する自分の有り様もまた、男の思惑通りであった事に慎一はようやく気付かされる。 「こいつのチンポに、随分と見惚れてるみたいだな」 「えっ……あっ、その……」 「今さら、誤魔化す事でもないだろが」 「………」 事実、慎一はそれ以上何も言えなかった。男の言う通り、今さら体裁を取り繕おうとしたところで、ただただ滑稽でしかない。ここへ来た時点で、もはや常識やモラルなどは捨てたに等しいのだ。例え事情はどうであれ、この異様な状況の中にいるのは、紛れもない自らの意思であった。 「でもまぁ確かに、なかなかこいつは立派なもんだ」 そんな慎一に代わって、高宮が改めて翔のペニスを注視する。 翔はその間も、直立不動のままであった。男の次なる行動を、無言でただ待つ事しか出来ない。 「けれども、だ」 高宮は言葉を続ける。そして自分からおもむろに、彼との距離を詰めてきた。 「俺も人の親として、そう呑気に言ってらんねぇとこがある。分かるよな?」 萎縮する様相とは対照的な剛直に、男は含みを持たせて語り掛ける。 無論、翔は何も答えられない。 だがそんな少年の返事を待つよりも先に、男の右手が彼の下半身を捉えていた。 「っ……!」 ペニスを握られ、翔は顔を引き攣らせる。 不敵な笑みを浮かべ、そのまま高宮が少年の欲望をゆっくりと扱き始めた。 身体をくの字に曲げながら、翔はしだいに吐息を荒くさせていく。 慎一は傍で、その様子を茫然と見ている事しか出来なかった。むしろ幼馴染の悩ましげな姿をありありと目にする内に、こちらもまた身体が熱く疼いてきてしまう。 「もう一度聞くが、真由にはまだ手を出しちゃいないんだな?」 そんな翔に対して、淡々とした口調で高宮が問うてきた。 これには翔も、新たな戸惑いを露わにさせる。 「信じてください……本当に、そんな事は……」 か細く、上擦った声であった。 だがその間にも男の手は、少年の一物をより大胆に弄っていく。 「んっ……あっ……はぁっ……」 堪らないとばかりに、翔は腰を捩らせた。 「だとしても付き合っていて、今まで指一本触れちゃいない訳でもないだろ?」 「それは……」 「もうキスはしたのか?」 容赦のない追求が続く。 これに翔は、涙目になりながら黙り込んでしまう。だが何も言えないでいるその窮した様子が、詰問に対する是非を結果的に示す形となっていた。 昨夜に続き、片想いの虚しさというものを、目の前の光景がいっそう慎一に突きつけてくる。おそらく高宮も、自身の悪意がこちらにまで及んでいる事には気付いていないであろう。だが心を抉られると同時に、この様な形で赤裸々な告白を強いられる幼馴染が、今はあまりに不憫でならなかった。しかも相手はそんな恋人の父親なのだ。少年のささやかな青春が、醜態と辱めの中で残酷に踏み躙られていく。 「どうなんだ?」 焦燥を色濃くさせる翔に対し、高宮は沈黙を許しはしなかった。伸ばされた手は、股間への刺激を加え続ける。 「あぁっ……」 男の妙を得た指遣いに、若い肉体が無常にも反応してしまう。亀頭からは先走りが止めどなく溢れ出ていた。だがその旺盛な精力が、今は少年の心をいよいよ苛ませている事であろう。 「す、すみませんでした……」 やがて責め苦に等しい仕打ちの中、肩で息をしながら翔は声を絞り出す。 「何を俺に、謝っているんだ?」 「………」 「娘に対して、真剣な気持ちでいるんだろ?」 「はい……」 「だったら男として、自分がした事にやましさなんかはないよな?」 「………」 高宮からの言葉に、翔は何も反論出来ない様子であった。完全に逃げ道を塞がれてしまう。この幼馴染が決して軽薄な行動を取る人間でない事は、慎一も十分に分かっていた。だがどんな気持ちであったにせよ、初めて恋人の唇を求めた時にまさかこんな代償が待っているなど、夢にも思わなかったであろう。 「自分の口で、ハッキリと答えろ」 もはや猶予はなかった。 「しました……真由と、その……キスを……でもまだ、それ以上は……」 ベソをかく様な声になりながら、翔はついにありのままを口にする。 居た堪れなさに、慎ーは顔を伏せた。すでに分かっていた事とはいえ、彼からの言葉で事実が決定的なものとなる。だが打ちひしがれる恋敵の姿を目の当たりにして、もはや妬みなどといった感情は起きる訳がなかった。 「娘以外と、他に経験はあるのか?」 「ありません……誰かと付き合うのは、これが初めてです……」 「つまりまだ、童貞なんだな?」 力なく翔は頷く。 女子達から羨望の眼差し向けられていた少年は、その輝かしさも満ち溢れていた自信も、今や微塵もなく剥ぎ取られてしまう。慎一の目にかつて映っていた幼馴染の姿は、もうどこにもなかった。 「まぁいいだろ」 そんな疲弊しきった翔へと、ようやく高宮が納得した様子となる。 「別に落ち込まなくたっていい。こっちからすりゃ、女の一人や二人を抱いてたところで、所詮は青臭い小僧に変わりはないんだ」 ねっとりと濡れた亀頭を、今度は指先にて繊細な愛撫がなされていく。 「んっ……んんぁっ……」 「それにまっさらでいてくれる方が、こっちも何かと教え甲斐もあるってもんだ」 さらにもう片方の手は、翔の内股へと這わされる。絶頂に突き進むそれとはまた違う終わりのない性感が、少年の身体に焚き付けられていく。 いつしかまた、その光景に心奪われ釘付けとなってしまう。 「慎一」 するとこちらへ、高宮が顔を向けてきた。 「は、はい……」 「もうお前も、隠してる必要なんかないだろ?」 立ち尽くす慎一の前袋に、男の言葉と眼差しが注がれる。純白の布地を破かんばかりに、自身のが突き上げていた。高宮に見られている。それだけで触れられてもいない身体が反応しまう。怒張したペニスが脈打ち、生地と擦れ合う。先走りで濡れていく。 男はそれ以上何も言ってはこない。だが慎一がやるべき事は一つであった。 そして翔もまた、虚ろな瞳でこちらを見ている。 羞恥を完全に捨てた訳ではない。それでも己が締める褌へ、慎一は自然と手を掛けていた。前袋の端から、怒張した男根が露わとなる。翔と同じ姿となって、慎一は彼らと向き合う。 幼馴染の眼光が、急速に輝きを増していく。 「へへ、こいつもお前に夢中のようだ」 高宮から指摘されても、翔はまるで視線を逸らす様子はない。 (翔が……僕のを見てる……) 身体が震えてきてしまう。それは先程の自分であった。屹立するペニスが、その真剣な瞳にいっそう熱く漲ってくる。真由の恋人が、今はこの姿に我を忘れんばかりの欲情を示しているのだ。その事実が、慎一の心を激しく躍らせた。 高宮はそんな翔を、今度は背後から抱き寄せる。 「あっ……んぅあっ……んんっ……」 日頃から鍛えられたしなやかな体躯を、男は堪能する様に左右の手で弄っていく。 肌を滑るそのリズミカルな動きに、ビクンッと翔は大きく身体を震わせていた。発せられる吐息と喘ぎは、涙声にも似ていながら一方で底知れぬ艶やかさを纏わせていく。 それを慎一は、ただ見ている事しか出来なかった。幼馴染の乱れゆく姿にペニスが猛々しく跳ね、先走りが糸を引いて垂れ落ちていく。 「興奮するか?」 ようやく高宮が問うてきた時、救いを求める様な目を彼に向けていた。 「はい……」 「自分でやってみろ」 素っ気なく、男が言う。 だがその言葉を耳にするや、慎一の右手は張り詰めた幹を握り締めていた。考えるよりも先に、溜まり続けていた欲求が心を突き動かす。 (ごめん……翔……) 幼馴染はなおも焦らされていた。その前で、慎一は己のペニスを一気に扱き立てていく。それまで傍観するだけだった少年の織りなす荒々しい摩擦と呼吸が、廃墟の空間を支配する。 翔がこちらを凝視していた。彼の目には今の自分がどう映っているだろうか。そんな思いが過ぎると共に、高まりは出口へと上り詰めていく。 「はぁっ……んっ……はぁっ……!」 ギュッと、慎一は強く瞼を閉じた。 白濁が勢いよく噴出する。それはこれまで経験してきた自慰とは明らかに違っていた。絶頂へと達するその瞬間、頭の中が真っ白になる。ガクガクと引き攣った身体が激しく震え、その場に崩れ落ちそうになりながらも、鈴口からなお間歇的に精が放出されていく。 慎一の悦楽と全てを吐き出すまでを、高宮と翔がしっかりと見届ける。 (こんな事を……見られながら、僕は……) 激情から一転して、心身を虚脱が襲う。 「跪け」 そこに高宮が言ってきた。 従うというよりも、その言葉でわずかに残っていた力が抜けてしまう。慎一は息を切らせながら地面に膝をつく。だが高宮が与えたのは休息ではなかった。 自分へと迫る影に、慎一は顔を上げる。 いつしか高宮の手を離れ、翔がこちらへと進み出ていた。今にも弾けんばかりの男根が、眼前で反り返っている。突き刺す様な雄の香りが鼻腔に流れ込む。果てたばかりの朦朧とする意識が、再び覚醒させられる。 (そうだ……まだ終わりじゃない……) 慎一がそう思った時、翔は自身のペニスを扱き始めていた。彼と目が合う。潤んだ瞳が獰猛な光を宿している。 「口を開けろ」 直後に高宮が指示してきた。自分が跪く意味に気付かされる。 幼馴染を見上げたまま、慎一は大きく口を開けた。命令されたからではない。彼がそれを待ち望んでいるからだ。 次の瞬間、翔が腰を突き出してきた。限界寸前の肉茎を、半ば強引に口内へと押し込んでくる。 「うぅくっ……!」 こちらを気遣う余裕など、すでに残されてはいなかった。切迫した呼吸を洩らしながら、喉の奥深くまで翔はペニスを抽挿してくる。 苦しさに顔を歪めるも、慎一はそんな彼のを懸命に咥えようと努めた。辛いのはほんの一時だと、自身に言い聞かせる。そしてその忍従は同時に、翔から犯されているのだという感覚を、慎一にありありと抱かせるものとなった。 (翔……このまま、僕が……最後まで……) 相手の両腰をしっかりと掴み、決意を示す。 やがて翔の脚が震えを著明にさせていく。膨隆する亀頭が口の中でより迫り上がる。 「だめ……あっ……で、出る……!」 翔が大きく背筋を仰け反らせた。咥えていた欲望がついに爆発する。 濃厚で大量の精液が、次々と吐き出されていく。咽せ返りそうな匂いと味が充満するも、なお噴出は止まる気配がない。慎一は必死になって、溢れそうになる白濁を喉へと流し込む。高宮に言われた訳ではないが、今はこの雄の証を一滴たりとも無駄にしてはいけない、そんな気がしてならなかった。 (翔が射精してる……昨日よりも、いっぱい出てる……ずっと我慢して……今、僕が飲んでるんだ……) 不浄に耐えているはずが、不思議と少年の心は高揚に満ちていく。そして昨夜以来、自分が何を求めていたのかを、慎一はここでようやく思い知る。 最後の迸りまで健気に飲み干す慎一と、感極まり放心状態となる翔の光景を、高宮は満足そうに眺めていた。 「はぁっ……んっ……あぁっ……」 暗い納屋の中で、少年の悩ましげな吐息と喘ぎが発せられる。 敷かれていた畳の上に、陽平は仰向けに組み伏せられていた。中岡の身体がその上から覆い被さる。纏っていた法被はすでに剥ぎ取られ、少年の瑞々しい素肌は男によって貪られていく。かろうじて残されていた褌も、自らが溢れさせる先走りに布地はぐっしょりと濡れてしまっている。その硬く盛り上がらせた部分を、中岡の手が丹念に弄ってくるも、少年の欲望が果てる事は未だに許されずにいた。 「あっ……あぁぁっ……」 荒々しくも的確な愛撫に、火照った身体は敏感に震え、拒みたくとも淫猥に満ちた声を上げてしまう。何もかもが陽平にとって初めての経験であった。そして男は容赦なく、少年の何もかもを奪っていく。 「なかなか、いい声になってきたじゃないか」 「中岡さん……」 「もうこんな程度じゃ、お前も物足りなくなってきてるだろ?」 「そんな……お、俺は……」 「素直になれ」 充血した乳首を、指腹で擦る様に圧迫される。 「んんぁっ……!」 軽い刺激のはずであった。だが電流の様な感覚に、陽平はその身を大きく捩らせる。もはや自分ですら、この身体の有り様が分からなくなってしまう。 「強がってたところで、もう自分じゃどうにも出来ないんだろ?」 間髪を入れず、もう一方の乳首へと中岡の舌が触れてくる。 「あっ……やっ……んぅあっ……んんっ……」 その小さくも張り詰めた突起を、舌先で執拗に転がしながら、腰や内股へと指が這わされていく。股間への刺激は留め置かれるも、掻き立てられる性感に反応して、前袋の中ではペニスが勢いよく跳ねていた。そのたびに鋭敏な亀頭と生地が擦れ合い、少年の欲望をいっそう疼かせていく。 「どうした、腰をそんなやらしく動かして?」 悶える少年の姿に、中岡がせせら笑う。 「も、もう……許してください……」 息を荒げながら、陽平は切実な瞳を中岡へと向けていた。性感は昂り続けるも、男から与えられるその刺激は、決して捌け口へと誘うものではない。満たされぬ欲求と切なさに、少年の身体がもがき苦しんでいた。 「やめて欲しいのか?」 わざとらしく、中岡は問うてくる。 「いやだ……ち、違う……」 もはや駆け引きなどの余裕はなく、陽平はそう言葉を洩らしていた。 「それなら、どうして欲しい?」 「………」 プライドから返答を躊躇っている訳ではない。自分でも何を求めていいのか分からなくなっていた。内に溜まるこの鬱屈とした情動から、射精をしたところで本当に解放されるのか、今の陽平には疑わしくさえ思えてしまう。 「これは大人になるための儀式なんだ。何も恥ずかしがる事じゃない」 そんな陽平へと、中岡が改めてこの行為の意味を諭してくる。 さっきまでの自分なら、それは無茶苦茶な理屈だとしか思えなかった。だが呼び覚まされた欲望とそれを制御する術を失った今、男の言葉が少年の心を大きく揺さぶってくる。 (儀式……俺が、大人になるための……) 心の中で反芻する。自分だけが異常なのではない。これは己が経なければならない試練なのだと、陽平の中で何かが囁いてくる。この惨めさに耐えてこそ、大人として生まれ変わるのだ。例えそれが都合のいい正当化であったとしても、陽平にはもはや中岡に救いを求める以外の選択はなかった。 「教えてください……俺は、どうすれば……」 ありのままを、少年は口にする。 男の表情が緩んだ。今までの冷笑などとは明らかに違う目で、こちらを見ていた。 「学ぶ姿勢が、ようやく出てきたみたいだな」 「………」 やがて中岡の右手が、褌へと掛けられる。 陽平にもはや抵抗の意思はなかった。陵辱に対する諦めや屈服ではない。少年は全て受け入れる事を覚悟する。 締められていた六尺を、男が解く。 恥部を覆っていた布地から、少年の堂々たる一物が曝け出された。精力を漲らせて屹立する男根からは、蒸れた雄の匂いが二人の間に漂い広がる。まさに弾けんばかりの姿であった。己の一部ながら、その勃起の逞しさに陽平は目を見張る。部活の合宿などで何日か自慰を我慢していた時ですら、これ程までにペニスを張り詰めさせていた記憶はない。外気と中岡の眼差しに触れながら、それだけでまたいっそうの疼きが湧き立ち、男の前で何度となく脈打ち出す。 「宝の持ち腐れだぞ。早くこいつで、女をヒィヒィ言わせてやれ」 青筋を浮き上がらせた隆々たる幹を、中岡はしっかりと握ってきた。 「あぁっ……」 直接の感覚と締め付けに、陽平は自然と腰を突き上げ、強張った身体を小刻みに震わせていく。膨張しきった亀頭からは、すでに新たな先走りが次々と溢れ出してくる。 「そのためにも、相手を夢中にするにはどうすればいいのか、しっかり学ばないとな」 そして中岡の右手が上下に動き始め、少年の若き剛直をじっくりと扱いていく。最初は慎重に、だが徐々にその速度は活発で大胆なものとなる。 それまで焦らし続けられた欲望は、急速に熱い滾りを込み上がらせていく。 「んっ……あっ….…んぁぁっ……!」 甲高い声を発して、陽平は全身を引き攣らせながら仰け反った。血潮が沸騰するかの様に、胸の鼓動も激しく躍る。自らで行う手淫では決して経験した事のない悦楽と高揚に、陽平は包まれていく。 (もうだめだ……俺……イクッ……!) 白濁が一気に噴き上がる。 身体の芯が突き抜けてしまうかの様な絶頂に、意識がそのまま遠のきそうになってしまう。その瞬間に何が起きたのかさえ、陽平は理解が追いつかない程であった。自分の知っている射精ではない。何もかもが己の内から吐き出され、全てが空っぽになってしまいそうな感覚に茫然自失となる。 「さすが若いだけあって、勢いもかなりのものだ」 中岡が感嘆する様に呟く。 脈動に押し上げられるかのごとく、股間の奥からさらに熱い精が何度となく迸る。気付くと降り注いだ白濁の一部が、自分の頬にまで付着していた。 (俺……こんなに、出るんだ……) 自分でも驚く程の量である。普段であれば一瞬の快楽で終わるはずが、陽平の身体は精を吐き出してもなお、蕩けそうな愉悦が余韻となって続く。 「それにしても、盛大にぶち撒けたな」 少年の胸や腹部に撒き散らされた白濁へと、中岡は事もなげに自らの口をつけてくる。それは単に戯れからの行動ではなく、若く濃厚なエキスを堪能するかのごとく、丹念に舌を這わせて白濁をすくい取っていく。 ぐったりと放心していた陽平は、その新たな感触にハッとなる。肌へと密着し伝っていく男の舌遣いに、残滓に塗れたペニスがまたビクッビクッと反応を大きくさせていく。 「はぁっ……んんっ……」 この上ない快感を味わったばかりの身体は、火照りの冷めやらぬまま次なる欲求を激らせてしまう。終わりなき性感に身悶えながら、今はただ中岡へとひたすら求める事しか出来ない自分がいた。理性や思考はもはや完全に無力化されてしまう。それは同時に、この先に何が待っているのlという恐怖すらも、陽平から消し去っていた。 「まだまだ、萎えるには程遠いみたいだな。初めてのくせして、もう男だろうが関係なく飢えているのか?」 「な、中岡さん……」 「そんな甘えた目で見られると、こっちもどうかなりそうだ」 「………」 陽平の右手を、中岡は自身の下半身へと誘う。 「ほら、陽平」 促す様な男の言葉に、熱い感触がその指先からも伝わる。 「あっ……」 思わず声を洩らす。 「お前も俺を満足させてみろ。ただ寝っ転がってるだけじゃ、勉強にはならないからな」 中岡の前袋からも、いつしか男根が引き出されていた。正視出来てはいないものの、その猛々しい雄の息吹が、手からも十分過ぎる程に感じさせられる。腕を引っ込める事が出来なかった。男が自分に求められている事は、すでに明白である。 (これが中岡さんの……女を抱いた、男のチンポ……) 男の硬い幹へ、少年の指が絡められていく。この納屋に来るまでの自分であれば、考えられない行為であった。だが今はその脈動を確かめながら、苦しいまでに胸が高鳴ってきてしまう。 (今度は……俺が、この人のを……) 彼の息子の顔が、陽平の脳裏に過ぎる。自分と同じくサッカーに打ち込んでおり、つい数日前も請われて練習のアドバイスに付き合ったばかりだ。無邪気で屈託のない少年の笑顔が思い起こされる。この一物からあの子が誕生したのだ。当たり前の事ながらも、それをこの瞬間に戦慄きながら陽平は実感させられる。こんな父親とそして今の自分の姿を、少年はきっと知る由もないであろう。 「そんな雑に、いつも自分のを扱いているのか?」 ぎこちなく手を動かす陽平に対し、すかさず中岡は言ってきた。そして男もまた少年のペニスを巧みに扱き立てながら、身体中へとさらなる愛撫を繰り広げていく。 「あっ……はぁっ……んぅぅっ……」 「もっとしっかりと、気合と愛情を込めてやるんだ。そんなんで女を抱いたって、何も喜んじゃくれないぞ」 耽溺と同時に、未熟さへの叱咤がなされる。男にただ身を委ねているという段階は、もはや過ぎ去った事を陽平に教えるものであった。夜はいっそう更けていく。だが少年が男へと成長するための指導は、まだ始まったばかりであった。 COPYRIGHT © 2023-2024 アロエ. 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作者 アロエ さんのコメント 筆が遅くてすみません。
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