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夏祭り〜ある少年達の成長の記録〜(エピローグ)
記事No.316 - 投稿者 : アロエ - 2023/09/03(日)19:45 - [編集]
土曜日の夕方。
朝から降り続いていた雨も、この時間にはすでに止んでいた。湿度もそれほど高くはない。 健史は夕食を前に、自宅を出てランニングに出発した。白いTシャツにダークグレーのハーフパンツという、動きやすいラフな格好だ。昼間の部活が雨で中止となったせいもあるが、今日に限らず昔から週末には、ランニングの時間を作るよう心掛けていた。別に努力をしているつもりはない。最初は体力作りを目的に始めたのだが、むしろそれが習慣になると、走る事自体に気分の爽快さや楽しみを感じる様になっていた。 集落を出て、田園の広がる農道を進んでいく。色づいた稲穂が風に揺れている。まだまだ日中は残暑が続いているものの、日暮れ近くに吹く風は冷たく、汗を滲ませた肌には心地がいい。秋がすぐそこまで来ている。 やがて道は山沿いとなり、地元の神社が見えてきた。いつもと走るコースが違っている。無意識だろうか。意図したものではない。 何事もなく通り過ぎればいいだけだった。それがなぜか、鳥居を横目に足が止まってしまう。周囲に人の気配はなかった。なぜ立ち止まったのか、健史自身もよく分からない。それでも今は、もう一度走り出そうという気持ちにはなれなかった。心の中で、何かが疼き始める。 (別に……急いで帰る必要もないし……) 何か悪い事を考えている訳ではない。ちょっとお参りをするだけだ。学校の試験がもうすぐある。早く頭角を現してサッカー部のレギュラーにもなりたい。これからを思っての祈願だ。健史は自分の不可解な行動を正当化し、鳥居をくぐった。 境内に一歩足を踏み入れると、記憶が次々と呼び覚まされる。ここで宵宮の夜、慎一と翔を待っていた自分に、陽平が声をかけてきたのだ。それが全ての始まりであった。 あれから一ヶ月になる。 特にここへ来る用がなかったため、と言えばそれまでだが、やはりどこかで自分はここを避けていたのだろうか。どうしても、陽平の存在を考えてしまう。森の中で遭遇した出来事。宝物庫の前で初めて知った快感。そしてここから、あの納屋へと自分は陽平に誘われたのだ。 祭りの後、陽平は大学の下宿先へと帰って行った。しょうがない事だとは分かっている。それでもあの一夜以来、彼がここへまた帰ってくるその日を、ひたすらに自分は待ちわびていた。陽平との戯れを想い起こすと、どうしても我慢出来なくなり自慰に耽ってしまう。ほぼ毎夜の行為であった。 『みんな悪い人じゃないんだけど、嫌ならキッパリと断ってもいいんだからね』 別れ際、陽平から受けた忠告を思い出す。 この土地で続く習わし。少年から大人になるための、年長者からなされる『指導』。陽平もまた、そういった風習にただ従っただけなのだろうか。 確かにあれから、そんな伝統の名の下に、自分へちょっかいをかけてくる人間が何人かいた。だが健史は、ことごとくそんな彼らを拒絶している。昔の村社会ならばいざ知らず、断ったところで何かあるという訳でもなかった。さすがにこの現代において、本気で嫌がる青少年へ無理矢理にとは、相手もリスクが大き過ぎる事を承知しているのであろう。特に祭りの無礼講という好機を、彼らは逃したのだ。 (俺が教えてもらうのは、東さんだけだ) 健史はそう心に決めていた。快楽に惑わされながら、他の男に抱かれるなどまっぴら御免だ。次に陽平と出会えるその時まで、この身に余計な上書きをされたくはなかった。 だがそれでも、たった一人の存在を待つだけの日々は辛い。あれほどの悦楽を知ってしまった後の身体は、自慰だけでとても満たされはしなかった。そのぶん、勉強や部活に打ち込んで発散するしかない。それはある意味、『指導』を拒む自身に課された試練の様なものだった。 (やっぱり、もう帰ろう) 余計に悶々とするだけだ。ここにいても意味はない。だがせっかく境内に入ったのだから、とりあえず参拝だけはしておくかと、健史は思った。 祭礼などの特別な日以外、宮司も常駐してはおらず、神社は無人で今も静まり返っている。日が暮れれば、後は暗闇と静寂の世界だ。 鳥居から拝殿までは、石畳の道が続いている。 フッと健史は、そこから外れた地面に目が向く。 朝からの雨で水分をたっぷりと含んだ土に、靴の足跡が残されていた。並んで歩いていた様で、それは二人分だ。靴の大きさからして、子供ではない。よく見るとそれが、境内裏にまで続いている。 「………」 だが足跡は、一方向のものだけだった。何か用を終えて、こっちに戻ってきた形跡がない。つまり足跡の主達は、まだ境内の裏にいる。その奥は道なき山林が広がっており、裏手からさらにどこかへ突き進んで行ったとも考えづらい。 (足跡……二人……) 心音が高鳴っていく。人目を憚り何かを目論むのであれば、この先は格好の穴場である。どうしても想像は、特定の方向に膨らんでしまう。 ちょっとだけ、確認をするだけだ。誰もいないのに、思わず健史はそんな言い訳を心の中で呟いていた。そして静かな足取りで、その地面に残された足跡をたどっていく。 境内の裏手、森の中に足跡は続いていた。息が苦しくなっていく。心臓が、ランニングの時以上に鼓動を激しくさせていた。進む足が震えてきてしまう。 (やっぱり……この中に、二人で……) それでも好奇心が抑えられない。このままモヤモヤを残して、引き返す事が出来なかった。音を立てないようさらに心掛けて、健史は森の中へと入っていく。湿った地面をそっと踏みしめ、一歩一歩、木々の間をすり抜けて進む。 案の定、明らかな人の気配が、森の中で感じられた。 生唾をゴクリと呑み込む。口の中はすっかり乾ききっていた。 乱れた息遣い。懸命に堪えながら、それでも洩れ出てしまうかの様な呻き。それらが徐々に大きく、鮮明となっていく。ジュポッ、ジュポッ……と、水分を含んだ何かの音までもが聞こえてくる。正体を確認するよりも先に、それは極めて淫猥な奏でとして、健史の血潮を激しく掻き立てていく。 やがて視界に、その有り様が飛び込んでくる。 「っ……!」 思わず健史は、口を手で押さえた。身体が一気に硬直してしまう。どこぞのカップルの逢引きなどであったなら、健史は緊張から一転し、にやけ顔になっていたかもしれない。すでにそれくらいの心の余裕が、自分にはあった。だが健史は今、呆然と彼らの姿を眺めている。なぜこんな時に、自分は神社になど来てしまったのか。そしてなぜこのタイミングだったのか、後悔や驚愕が混ざり合う。 慎一と翔が、そこにいた。私服姿である事を除けば、あの時とまるで同じだ。 樹木の陰に隠れて、二人はまだこちらの存在に気づいていない。気づく様子はまるでなかった。完全に二人だけの世界に没頭している。 「あっ……あぁっ……」 木の幹に背中を押しつけ、今にも崩れ落ちそうなくらいに、慎一は脚をガクガクと震わせていた。 その足元に、翔が跪いている。慎一のズボンと下着は、すでに膝まで引き下ろされていた。そして露わとなる局部へ顔を埋めた翔が、彼のモノを積極的に咥え込んでいる。 彼ら以外、そこには誰もいない。あの宵宮の夜とは違い、二人は強いられてその様な行為をしているのではなかった。 (こいつら……やっぱり……) 平穏無事にあの祭りを過ごし終えて、もしこの光景を目撃したならば、きっと自分は衝撃と理解不能で思考が停止していたであろう。だがそれでも、予期せぬ形でこんな二人を目の当たりにした健史は、心を冷静に保てはしなかった。 「んんっ……あっ……んんぁっ……」 見られているとも知らず、慎一はその間も快感に身悶えながら喘ぎを発していた。それに応えて、翔も大胆に舌を繰り出していく。 あの祭りから今日まで、知ってしまった二人の秘密を胸の奥に秘め、健史は何事もなかったつもりで彼らと接していた。自分にはどうする事も出来ないのだ。慎一と翔も、あれからはそれをおくびにも出さず、表面上は今までと何ら変わりのない日常に戻っていた。もう忘れよう。自分だって、陽平との秘密を誰にも明かしてはいないのだ。そう考え、ようやく気持ちにも整理がつき始めた、そんな矢先の出来事である。 「すげぇ我慢汁、もう限界か?」 ペニスから翔の口が離れ、今度は握った右手でじっくりと扱いていく。すでに勃起しきっているそれを、鼻先が触れそうな距離で彼は眺めていた。慎一のから溢れ出る先走りの液が、翔の手指にも伝っていく。だがそれを気にする様子はまるでなかった。むしろいよいよ欲情する幼馴染に、彼の瞳は爛々と輝いている。 「翔……僕、もう……」 「イキそう?」 慎一が乱れた呼吸で頷く。そしてもうこれ以上は耐えられないとばかりに、伸ばされている翔の手を制してきた。 今にも白濁が噴き出してしまいそうな中で、あえて刺激を中断させる。きっとこのまま、思いっきり精を迸らせたかったであろう。だがそんな衝動の一方で、安易な射精に走り、せっかくの高揚をここで削いでしまう事を、避けたかったのかもしれない。 「じゃあ、次は俺の番な」 立ち上がると逸る様子で、今度は翔が下衣から局部を露わにさせる。すでに彼のも怒張しており、行動を促す様に慎一へと見せつけていた。 これに慎一が、あられもない姿のままで跪く。眼前に迫る幼馴染のペニスを、まずは添わせた手でそっと慰める。やがて落ち着いた面持ちのまま、剥き出しの亀頭へ舌を這わせていく。慣れているだけでなく、その奉仕は愛おしさに溢れていた。 「んっ……」 これに翔の精力がいっそう漲っていく。やがて慎一はおもむろに、その男根を深々と咥え込む。今までのお返しとばかりに、頭を前後に揺らしながら、口へ含んだ彼のモノを繰り返し扱いていく。 そこにはもう、自分の知っている幼馴染達の姿はなかった。二人だけの背徳の戯れを盗み見ながら、健史の股間もまた熱くなってきてしまう。 (ヤバい……) 全身の血流が、まるで心臓に変わって股間へと注ぐかの様な感覚。これ以上はもう見てはならない。理性が懸命に訴えてくる。だが健史はその場から微動だに出来ず、視線すらも外せなかった。 「はぁっ……気持ちいい……あぁっ……」 翔が悦びを慎一に伝える。顎を空に向け、顔面はすっかり上気しているのが、遠目からでも分かる気がした。 そして慎一もまた、翔のモノを咥えながら荒い吐息を洩らす。いまだ火照り続ける己のを、いつしか握り締めていた。堪らないとばかりに腰をくねらせ、その手はすぐに快感を求めて動き始める。 (興奮してる……翔のチンポをしゃぶりながら、あいつも我慢出来なくなってる……) かつて陽平に奉仕していた、自分の姿と重なった。だからこそ健史には、その行為を滑稽だと笑う事など出来ない。 「慎一、今のお前、すげぇエロい」 そんな相手の姿を見下ろしながら、翔が言う。顔はすっかり紅く染まっている。 これに慎一の口淫も激しくなっていく。愛撫しているというよりも、口の中で翔の猛々しい欲望を感じながら、慎一はすっかり陶酔しているかの様であった。目を瞑るその表情には、恍惚の色が浮かび上がっている。 「だめ……慎一……イッちゃいそう……」 小刻みに身体を震わせながら、やがて翔が限界を知らせる。 これに慎一の動きが止まった。咥えていたペニスから、彼が口を離す。逆上せた様にとろんとした瞳で、今や天を衝かんばかりの男根を見つめていた。そして無言のまま、相手へと顔を上げる。言葉を発しはしていないが、慎一の切実な心の声が、離れて見ているこちらにまで伝わってくるかの様であった。 「する?」 翔もまたすぐにそれを悟り、慎一へと簡素に問う。 これに頷きが返される。何をするかなど、もはや余計な言葉は二人の間に必要なかった。慎一は立ち上がって、向き合っていた翔に背を向ける。さっきまでもたれていた木の幹へ、今度は上体を傾けながら両手をついた。 背後の翔へ、下衣を纏わぬ慎一のヒップが高々と突き出される。 (あいつ……) 慎一に何ら躊躇う様子はなかった。すでに彼らも、あらゆる経験を経た事を健史に確信させる。 そして翔もそれがごく当たり前とばかりに、自身の屹立する男根を握り、慎一のその部分へと狙いを定める。 露わとなる開口部に、亀頭が押し当てられた。グッと、慎一の身体が強張る。呼吸がまた乱れていく。だがそれは、これから始まる事への緊張などではない。翔の先端が触れただけで、すでに慎一の身体は感じてしまっているのだ。 一方で翔は、それでも性急に事を進めようとはしなかった。前に回した手で、慎一のシャツをたくし上げる。胸肌をゆっくりと撫でながら、うなじや耳へ濃厚な口づけを加えていく。 「んっ……あっ……翔……」 喘ぎを洩らしながら、慎一はその身を捩らせる。 丹念な愛撫で、慎一の心と身体をさらに昂らせ、『その行為』が最もスムーズに試みられるタイミングを、翔は見計らっているかの様であった。明らかに手練ている。あの夜からまだ一ヶ月ほどだというのに、まるで初心なぎこちなさはない。慎一もまた、その甘美な淫蕩にすっかり耽っている。 (俺の知らないとこで……こいつらは……) 下着の中で、自らのペニスも痛いくらいに勃起していた。自然と布地の上から、その硬く盛り上がった部分を揉みしだく。もう耐えられない。健史もまた、ハーフパンツと下着を引き下ろした。跳ね上がる様に、己の一物が現れる。あの二人に心狂わされるのが悔しくもあるが、それ以上に欲情は止めどなく増す一方であった。 (東さん……) その剛直を握ると、かつての夜が脳裏に甦り、切なさも込み上がる。彼らの知らない自分達の物語があった。そして自分の知らない、彼らの物語は今も続いている。 「いくぞ」 やがて翔は、慎一の唾液でたっぷりと濡れたその男根を、彼の肛門に挿入していく。 「あぁぁっ……!」 甲高い声とともに、慎一は背中を仰け反らせた。だが恐怖や苦痛の様子はまるでない。顔を歪ませながらも、打ち震えるその身体は、待ち焦がれた喜悦に満ちていた。 繋がり合う二人の姿に、熱いものが今にも噴き出しそうになってしまう。まだだめだと、健史は必死にそれを堪えた。 「慎一、こんな感じ、どう?」 「そのくらいなら……大丈夫……」 いくら興奮しているとはいえ、そこはデリケートな部分だ。相手の許容を確かめながら、翔は腰を慎重に動かし、慎一の中で抽挿を繰り返していく。 「あっ……はぁっ……んっ……」 いよいよ慎一の声は艶やかさを帯びる。すでに翔のペニスは、根元までしっかりと埋められていた。それにともない、彼の腰遣いも徐々に大胆なものとなっていく。だが決して己の快楽のみに心奪われるのではなく、慎一の身体をその最中もしっかりと愛でていた。 「んぁぁっ……!」 シャツから曝け出された乳首を、慎一は攻められる。翔は舌先で首筋をくすぐりつつ、さらにその小さな突起を、摘んだ指でこねまわしていく。後ろから犯されながら、同時に他の性感帯も絶えず昂らされていた。これに慎一のペニスが、弾けんばかりに脈打っている。辱めに耐えていた最初の夜からは、まるで想像もつかない姿だ。 「慎一、こっち向いて」 翔から求められた慎一が、額に汗を滲ませた顔を振り返らせる。 すかさず、唇が重ねられた。慎一がそれに拒絶を示す事はなかった。 (あっ……!) キスなどより、もっと過激な行為をしているはずなのに、瞼を閉じてそれぞれの唇を感じ合う二人の光景が、健史に今までとは違う高鳴りを呼び起こす。 「んっ……んんぅっ……」 「はぁっ……んっ……んんっ……」 舌と舌を絡ませながら、二人の悩ましげな息遣いも大きくなっていく。その間、翔の腰の動きがまた穏やかになる。単なる性欲の捌け口としての行為ではなく、互いに繋がり合っている今この瞬間を、少しでも長く堪能しているかの様であった。 (やめてくれよ!) そんな愉悦に満ちた彼らを覗き見しながら、一人でペニスを扱いている自分が、いよいよ惨めになってきてしまう。そしていつしか彼らに対し、好奇から羨望の眼差しへと変わっていく。陽平がいてくれれば、こんな事にはならなかった。今の自分には、この身体を慰めてくれる相手がそばに誰もいない。だからといって、今さら他の人間に尾っぽを振りたくもなかった。 「あぁっ……」 無情にも、さらに二人の耽溺は続く。 翔の手が下半身へと移り、また慎一のペニスを弄ぶ。今にも果てんばかりのそこに指が絡められ、先走りの粘りがヌチャヌチャと、音を立てている。 このまま慎一から精が放たれ、翔もまたそんな幼馴染の中で……間近に迫っているであろう彼らの帰結を、健史は息を呑んで見守っていた。 「もうだめ……俺も、慎一のこれ……欲しいよ……」 翔が感嘆する様に呟く。 「まだ途中だけど……いいの……?」 「やっぱ俺、最後は慎一にヤラれながらイク方が、気持ちいい」 「いいよ、だったら……」 その言葉に、いまだ欲望を吐き出してはいない自身のペニスを、翔は慎一のアヌスから引き抜いた。 立ちバックの姿勢から、慎一が身体を起こす。 「次は向き合って、したい」 その申し出に、翔が頷く。 立ち位置が替わり、翔の背中が木の幹へと押しつけられる。靴を履いたまま、下衣から片足だけを引き抜く。そして正面から身を迫らせる慎一が、膝裏を抱き上げる様にして、翔の左脚を大きく広げた。 大胆な慎一の仕草を、呆然としながら健史は眺め続ける。 翔の秘部がその目に露わとなるや、慎一はそこへ鋭い眼光とともに、先走りで濡れそぼつ己の欲望を突き上げた。 「んんんっ!」 今度は慎一が、翔の肛門を犯していく。 片足立ちの状態で固く目を閉じ、翔はすがる様に慎一の肩を強く抱き締めていた。ペニスが深く押し込められていくにつれ、彼の身体は震えを著明にさせていく。 「はぁっ……翔……」 慎一が腰を上下に揺らしだす。先程まで、少女の様によがり泣いていた幼馴染が、今は勇ましいくらいの腰遣いで、結合した翔を攻め立てていく。あの大人しく控えめな少年が、紛れもない雄の姿となっていた。 「あっ……あっ……んっ……んぅぅっ……」 だんだんと翔の喘ぎが、快感を露わにさせていく。 これに対して慎一は、腰をリズミカルに動かしながら、密着する翔の身体にも丹念な愛撫をしている。きっとまだ異性と付き合った事もないであろう彼が、どうすれば相手を感じさせ、そしてより昂ぶらせられるのか、その術を十分に心得ていた。 (翔が……あんなに……) 乱れ狂う友人を凝視しながら、健史のペニスからも先走りが糸を引いて地面に垂れていく。もう限界だった。このまま思いっきり扱きたい。だがそれでも、今は何とか己を律しようとする。ここでただ彼らを見ている事しか出来ないが、せめて二人と一緒のタイミングで自分も果てたい。そんな気持ちが込み上がっていた。 「んんっ……し、慎一……もっと……はぁっ……俺を……」 肩で息をしながら、翔が訴える。 すぐにその言葉を理解した慎一が、より腰を激しく動かした。 「あぁっ……!」 翔の背筋が弓形に反る。 本能のままに、慎一は腰を振っていた。激しく翔が悶えるも、そそり立つ男根がこれに悦びを表していた。 「イクッ……んんぁっ……イクッ……!」 荒々しい突き上げの中で、ついに翔のペニスから白濁が噴き出す。その部分には、何ら直接的な刺激が加えられてはいなかった。だが慎一に後ろを犯され感極まった翔の身体が、ついに達するにまで至る。 「翔……僕も……出る……!」 直後に、慎一の動きが止まった。ビクッビクッと、痙攣する様に腰が震えている。きっと今、翔の中で次々と放出がなされているのであろう。すぐにそれは、推測から事実であると確認が出来た。結合部から白濁が漏れ出し、ボタボタと雫が落ちていく。 そんな二人の光景を目の当たりにしながら、健史もまた欲望を爆発させていた。全身が震える。止めどなく精液が迸る。家でする自慰とは明らかに違う、快感の戦慄きが健史を包む。 息を切らせ、二人は繋がったまましばらく放心状態の様子であった。それぞれの肌に、大粒の汗が伝っている。 「慎一……このまま……まだ、抜かないで……もっと……感じていたい……」 やがてそう、最初に翔が口を開く。快感の波が過ぎてもなお、二人は慈しみながら互いの存在を求め合っている。 「ごめん……最後の方、夢中になって……痛くなかった?」 「いや、むしろ、最高だった」 翔からの言葉に、慎一が照れくさそうに笑う。 「今度は僕も、翔に思いっきり中で注がれたいよ」 「じゃあ、もっかいする?」 軽い口調で翔が言う。 健史は自分の下半身に目を下ろす。白濁を吐き出した直後であるが、ペニスはまだ硬さを保っている。きっと彼らの精力も、このくらいで尽きてはいないであろう。 「だけどもう時間が……終わらないと」 名残惜しそうに、慎一が返す。日暮れが迫っている。 「これでまた、慎一とは、しばらくお預けか」 翔も寂しそうに呟く。 「明日は真由とデートなんだろ?いいじゃないか」 「デートって、ただあいつの買い物に、付き合うだけだよ」 気まずさが彼の表情に浮かぶ。慎一のモノをまだ体内で感じながら、真面目に考えられる事ではないであろう。 そんな翔を見ながら、慎一がどこか意地悪っぽい笑みを浮かべている様な気がした。 「翔」 囁く様に呼びかけながら、慎一はまた彼と唇を重ねる。 「んっ……んんぅっ……」 舌が入れられ、翔がくぐもった声を洩らす。事後とはいえ、かなり情熱的に舌と舌を絡ませ合う。貪る様なディープキスだ。 やがて慎一が、ゆっくりと顔を離す。 虚ろな瞳で、翔がまだ物足りないとばかりに見つめている。 「あれから真由とは……まだこういう事、してないの?」 翔へと、静かに問う。 「高宮さんと約束したし……ちゃんと男として責任を取れるまでは、健全に交際するって……」 「ならそれまではもう少し、僕が必要みたいだね」 「そ、そうだな……」 慎一から目を伏せ、翔はどこか言葉を濁す。 (健全……か) 脳裏に真由の姿が思い浮かぶ。おそらく彼女にとっても翔が、交際する最初の異性であろう。あの清純な少女に、果たしてこれほどの背徳や痴態を想像出来るのだろうか。他人事ながら、健史も心配になってきてしまう。 「あぁっ……んっ……慎一……」 そんな事を考えていると、翔がまた喘ぎ始めていた。慎一が腰を動かしている。 「翔……ごめん……挿れっぱなしにしてたら、僕……また……」 翔がそれを拒む理由などない。 「後でまた交代しろよ……さっきのお望み通り、今度は俺も……お前の中にぶっ放してやるから……」 「分かってる」 もう終わりだと言っていながら、まだ冷めぬ劣情がそれに勝ってしまった様だ。二人がまた盛り合う。きっと二回目が終わる頃には、どっぷりと日が暮れているであろう。 「んっ……んぁぁっ……あっ……んんっ……」 歓喜にも似た翔の声を耳にしながら、健史は勃起した己のを何とか下着に納め直した。後は家に帰ってからだ。出来る事ならこのまま二人の前に飛び出し、仲間に入れて欲しいくらいだ。だがそれは野暮な事だと、自分に言い聞かせる。邪魔者はそろそろ去らねばならない。 (今日は、お前らで好きなだけ楽しめばいいよ。今日は、な……) 幼馴染達がこれほどの悦びを享受しながら、なぜ自分だけが我慢しなければならないのか。こんな現場を見てしまった以上、健史はそう思わずにはいられない。次に陽平と会えるまで、少しくらいはこの身を悦ばせてやりたかった。無論、相手はこの土地の大人ではない。 (翔は真由との付き合いもあるし、きっと慎一にも寂しい時があるだろう) そこが狙い目だ。上手くいくかは分からないが、彼を口説いてみる価値は十分にある。これもある意味、将来に向けてのいい練習になるだろう。 あるいは翔でもいいかもしれない。真由との健全な付き合いがどこまで続くかは知らないが、これほどの悦楽を彼女が担うにはかなり難があるであろう。それに慎一と会えない時もある。翔にここの習いである、『指導』を頼んでみようか。同い年とはいえ、少々彼らとは差がついてしまった。だからこそ教えを乞うて、自分も早く追いつかねばならない。 (次会う時までに、俺もっと立派な男になりますよ。東さん) 二人の少年の戯れを背に、健史は静かにまた元来た道を戻っていくのだった。 COPYRIGHT © 2023-2024 アロエ. 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作者 アロエ さんのコメント 今回で完結です。読んで頂いた方は、長い間お付き合いありがとうございました。
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